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打倒フェイスブック
日本発ビジネスSNSの威力

打倒フェイスブック日本発ビジネスSNSの威力

 交流サイト(SNS)の王者「フェイスブック」打倒を目指し、国内のベンチャー企業が動き出した。SNSが日常生活の一部として定着する一方で、「リア充」競争に疲れフェイスブック断ちを考える人も増えてきている。だが、便利なSNSをビジネスで活用できないのはもったいない。そこで、やりとりの気軽さなどSNSの利便性をうまく生かしながら、日本のビジネスユーザーの定番サービスとして定着することを狙うサービスが登場してきている。

 商談で初めて会った取引先の人と「今後はメッセンジャーでやりとりしましょうか」と、その場でフェイスブック上の友達としてつながった。それから、2人は仕事上の連絡をフェイスブックのメッセージでやりとりするようになった。情報技術(IT)やクリエーター業界などに勤める若いビジネスパーソンを中心に、最近のビジネスシーンでよく見かける風景だ。

会ったばかりの人と「友達」?

 しかし「一度会っただけなのに『友達』ってどうなのか」「プライベートの生活をビジネスのつきあいだけの人に知られたくない」など、こうしたフェイスブックの使い方に違和感を抱く人は意外に多い。投稿した自分のプライベート写真や「いいね」を押した記事、あるいは友人なども仕事相手に知られてしまうことに、ついつい抵抗を感じてしまうからだ。

 欧米では用途に応じて複数のSNSを使い分けるのが当たり前だ。例えば、フェイスブックはプライベートの友達だけに使い、ビジネス向けの付き合いには自分の職歴やスキルを登録できる「LinkedIn(リンクトイン)」などを利用する。だが、日本では何でもかんでもフェイスブックでつながる傾向が強く、結果的に公私混同になってしまい使いづらい。

ウォンテッドリーの仲暁子社長は「スマホのチャットに慣れたユーザーにも使いやすいように工夫した」と話す

 とはいえ、便利なSNSの機能はビジネスでも使いたいところだ。例えばフェイスブックのメッセンジャーなら、スマートフォン(スマホ)で短いチャット形式で気軽に会話しながら、いつでもどこでも商談を進められる。メッセージが届いたらスマホの通知機能が知らせてくれるので、見逃さずにすぐメッセージを確認できる。

 SNSなら間違った相手にうっかりメッセージを送ってしまう誤送信も防げる。電子メールで、相手のメールアドレスを打ち間違えて、まったく違う人に送ってしまった経験は誰しもあるだろう。もし重要な機密文書を誤って送ってしまったら一大事だ。SNSならば、あらかじめ友達としてつながっている相手を優先的に選べるので、そうしたトラブルは起こりづらい。

会話のように気軽にやり取り

 こうした使い勝手の良さを取り入れたビジネス向けSNSを狙った国内サービスが続々と登場している。その一つはウォンテッドリー(東京・港)が5日から正式に始めた「Sync(シンク)メッセンジャー」というサービスだ。

「@」の後に名前を入力することで、送りたい相手に確実に送信できる。1人あたりの利用料金はファイル共有の容量などで異なり、10ギガ(ギガは10億)バイトまでの場合は無料、50ギガまでは1カ月あたり648円、100ギガまでは1296円

 スマホ用アプリで、送りたい相手の名前の前に「@」を付けて送信すれば、メッセージが相手に届く。打ち合わせの場で出会ったビジネス上のつながりの人ともURLやQRコードで手軽にシンクに招待でき、簡単にグループチャットを始められる。確実に本人にメッセージを送ることができ送信ミスはまず起こらない。

 シンクを利用するにはSNS「ウォンテッドリー」への登録が必要となる。ウォンテッドリーでは、新たにシンクのサービスを提供することで、従来のような求職者や転職希望者だけでなく、一般のビジネスパーソン向けの情報交流サービスとしてユーザーを拡大していきたい考えだ。

 あくまで仕事に関する情報を基にしたコミュニケーションなのでフェイスブックのようにプライベート情報がむやみにさらされることはない。仲暁子社長は「プライベートのメッセンジャーと切り分けて、スマホの慣れたチャットのままでビジネス上でのメッセージのやりとりができるグループチャットツールだ」と強調する。

 そのほかにシンクではビジネスの現場で使いやすい様々な工夫をしている。例えばPDFファイルや米マイクロソフトのワードなどファイルのやり取りができる。LINEでファイルを送信すると、閲覧できる期限が切れたり、ファイルの表示が崩れてしまったりすることがある。シンクではそうした制約がなくシームレスに閲覧できる。さらに過去のファイルを検索することも可能だ。

 フェイスブックのように新たなつながりを探せる工夫もしている。ウォンテッドリー利用者の大半は実名で登録しており、プロフィルページに職歴や持っている資格などを詳細に書き込んでいる人が多い。このため、シンクで「エンジニア」「東京大学」「会社名」といった仕事に関連するキーワードを入力して、適切な人物を探してメッセージを送ることが可能だ。「シンクを通じて『仕事』という切り口で新しい人脈をつくることができる」と仲社長は期待を込める。

スマホで「超名刺」サービス

 名刺情報をクラウドで管理するSansan(東京・渋谷)の「Eight(エイト)」も、ビジネスSNSの分野を狙ってサービスを強化してきた。「早く言ってよ~」というフレーズのテレビCMで大々的に宣伝しており、最新の登録者数ですでに100万人に達している。

エイトのプロフィル画面例。名刺には書ききれない経歴や現在の担当などを詳しく入力し公開できる

 エイトはスマホのカメラで名刺を撮影すると、専門のオペレーターが画像を基に手入力でデータ化して登録してくれるサービスだ。名刺交換した相手がエイトで自分の名刺を登録した場合は、自動的につながり自分の名刺一覧に相手の名刺が加わる。昨年12月に始めた新機能では、フェイスブックのようにプロフィルページを作れるようになった。

 これにより、会社名や部署、メールアドレス、電話番号、住所といったこれまでの名刺情報に加えて、新たに仕事内容や経歴の要約、職歴、生年月日、性別、フェイスブックへのリンクを登録できるようにした。そのため、名刺交換した相手のプロフィルページから相手のより詳しい情報が得られるようになる。まさに、紙という制約を取っ払った「超名刺」サービスだ。

 さらに15年7月にスマホアプリで先行導入している「フィード」機能をパソコン向けサイトにも実装。投稿やコメントが見やすくなり、エイト上でつながっている人同士で近況を共有し合うことができるようにした。この画面などは、まさにフェイスブックのようだ。

 エイトが処理する名刺の数は年間1億枚と、年間10億回といわれる国内の名刺交換回数の約1割に達している。将来は、さらにプロフィルページにスキルなどの項目を追加するという。そうすることで、必要なスキルをエイト内で検索してビジネスパートナーを探したり仕事を受注したりと「エイトに名刺を登録することが、ビジネスを広げる入り口となるようにしたい」(同社広報)と語る。

ソーシャルハラスメントも解決

 ビジネス向けSNSサービスは欧米が先行している。米国では最近プロジェクトごとに関係者が参加するページを作って情報や書類をやり取りできる「Slack(スラック)」と呼ぶサービスが人気を集めている。

 社内SNSサービスの日本国内市場は、17年には44億円と15年の1.4倍に達すると予想している(調査会社のデジタルインファクト調べ)。欧米発のサービスが国内で広まらないうちに、日本で定番のビジネスSNSに育てたい考えだ。

 ウォンテッドリーが15年10月に約400人を対象に実施したアンケートによると、仕事上のつながりがある人と、LINEやフェイスブックでつながることに抵抗があると答えた人は43.4%に達した。特に上司が部下に友達承認を強要したり、投稿した記事に過剰に反応するなどSNSに関する職場でのトラブルは「ソーシャルハラスメント」と呼ばれ問題になっている。ベンチャーの挑戦は日本のビジネス現場におけるSNSのトラブルを解決することができるのか注目が集まる。

(電子編集部 鈴木洋介) [日経電子版2016年1月6日付]

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