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デジタル社会の光と影(14)鈴木大地スポーツ庁長官に聞く
東京五輪とテクノロジー

デジタル社会の光と影(14) 鈴木大地スポーツ庁長官に聞く東京五輪とテクノロジー
authored by 小川和也アントレプレナー、フューチャリスト

 2020年、東京で開催されるオリンピック・パラリンピックは、テクノロジーの進化を背景に、科学技術の万博の要素を持つ大会になるとも言われている。その強化活動、スポーツの振興に関する施策を担うべく新設されたスポーツ庁の初代長官に就任した鈴木大地氏。ソウルオリンピック競泳背泳ぎの金メダリストでもある鈴木氏に、2020年に向けた、テクノロジーとスポーツ、健康促進のあり方についてのお話を伺った。

日本のテクノロジーを世界にお披露目

小川 テクノロジーの進化は、社会における様々な事象の進化を加速させると考えていますが、2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、テクノロジーはどのような影響を与えることになるだろうとイメージしていますか。あっという間にその日はやって来ると思います。

鈴木 恐らく、2020年には、いまの時点ではまだ想像できないようなことも起こっているでしょう。東京オリンピック・パラリンピックは科学技術の万博の要素を持つ大会になっている可能性も高いわけで、日本のテクノロジーを世界にお披露目するような機会になるでしょうし、そうしたいと考えています。

小川 オリンピック・パラリンピックにはその時代を映し出す側面がありますが、その点でも、2020年は新しいテクノロジーが競技を彩る大会になっているのだろうなと想像します。

鈴木 スポーツ界だけのメガイベントということではなく、日本全体、国民のみなさんが恩恵を受けられるものにしなければと思いますね。

国民の健康増進のきっかけに

小川 一方で、スポーツの発展、国民への浸透、それを健康増進、予防医療にまでつなげていくためには、オリンピック・パラリンピックは大きなトピックとはいえ、ひとつの通過点であるわけです。むしろ、オリンピック・パラリンピックが終わった後に、それらが持続的にドライブし続けることが大事ではないでしょうか。

鈴木 その通りですね。我々が国際競技力と言っているのは、ただ単に日本のプレゼンスをそこで発揮するだけではなく、それによって国民が感動して、インスパイアされて、自分も運動してみたいという気持ちを喚起するためだという側面もあります。運動することが国民の健康へとつながり、大きな命題である医療費を抑制することにも寄与できるのではないかと。

小川 選手の活躍は、結果的に予防医療にも波状するという見方ですね。

鈴木 そうですね。いままで運動したことがない、運動が嫌いだというみなさんが、どのようにしたら行動変容を起こして運動をしてもらえるかということは大きな課題です。オリンピック・パラリンピックはその行動変容のひとつのきっかけかにしたいと思います。

小川 インスパイアされて、人々が運動するにあたり、さらにその運動を楽しめ、サポートしてくれるようなものがテクノロジーの進化とアイデアによって生まれると良いですよね。

鈴木 たとえば特定の運動が苦手であるとして、どこの動きがどう足りないとかをアドバイスしてくれるようなツールなどがあったら良いなと思います。

鈴木大地長官(左)と筆者

子供にスポーツ体験を

小川 スポーツ人口を増やすための壁があるとすれば何なのでしょうね。

鈴木 意識もそうですし、子供の頃の体験、家族環境の影響等、色々とありますね。特に子供の頃の体験というものは重要で、そこで苦手意識を持ってしまうのは良くありません。したがって、適切な指導法の開発、徹底もしなければいけませんし、課題は多いですね。

小川 加えて、いまの子供達の周りには、身近に電子機器がたくさんあって、それらに引き寄せられやすい環境があり、運動よりもゲームの方が楽しいからと、タブレット端末やスマートフォンをいじっている時間が総じて長くなっている背景も見逃せませんね。

鈴木 実際、それは大きな影響を与えていると思いますね。むしろそれらの電子機器を使って、身体を動かすことに活かせばよいのではないかと。昔の子供がよくやっていた鬼ごっこだとか、かくれんぼなんかもテクノロジーを使って新しい鬼ごっこ、かくれんぼの楽しみ方を見出したりと。

小川 いっそうのこと、テクノロジーを活かした高度な次世代型鬼ごっこやかくれんぼを作ってしまうというのはありですよね。テクノロジーを無理に遠ざけて蓋をするよりも、その方が建設的かもしれません。

鈴木 もう、やみくもに禁止しても得策ではないのではないと思うのですよね。抑制しすぎて良くない方向に行くより、前向きにテクノロジーと付き合っていくという考え方も大事ではないでしょうか。

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