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格安スーツに異変
 「2着目1000円」はもう来ない?

格安スーツに異変 「2着目1000円」はもう来ない?

 スーツの価格が上昇している。業界首位の青山商事やAOKIの販売する2015年度のスーツ1着あたりの平均価格はいずれも、08年のリーマン・ショックから最高額となる。過度の安売りセールの廃止や高価格帯のラインアップを充実させているのがその理由だ。

セールの内容が変わった

 「1着目は値札の価格から40%割引いたします。2着目は1万円引きです」――。1月中旬の東京・新橋。JR新橋駅を出てすぐの「ニュー新橋ビル」1階にある「洋服の青山 新橋烏森口店」では、男性店員が店を訪れた若い男性に、スーツを熱心に売り込んでいた。ただ、そのセールストークと裏腹にスーツ価格は一貫して上昇している。

 紳士服業界首位の青山商事の15年3月期のスーツの平均販売価格は2万6337円と前期から4%の上昇。15年度もこの傾向は続き、15年4月~12月の累計で2万7700円となった。ここ4年の上昇率は15%に達する。業界2位のAOKIが販売するスーツも14年度に2万6600円と、前年度から8%上昇。3年間で13%上昇した。

AOKIの店舗ではオーダーメードの商品が売れている(横浜港北総本店)

 販売価格を引き上げている理由の一つが、夏季や春季、年末年始に実施するセール内容の見直しだ。

 例えば、青山商事はこれまでスーツを1着購入した顧客が2着目のスーツを1000円で購入できる「2着目1000円」セールを定期的に実施していた。「2着目を格安で提供することで、『青山』の固定客になってもらう。競合店でスーツを購入する必要もなくなり、シェア拡大にもつながる」(岡田希之青山商事広報室長)のが狙いだった。

 ところが、このセールは14年10月以降、停止しているという。代わりに14年度下期以降、実施したのは「2着目が半額になる」「1万円値引き」などのセールだ。15年度は「2着目1000円」セールを通期で実施しない。これは08年のリーマン・ショック以降で初めてだ。

 背景にあるのは、製造地である中国や東南アジアの人件費の上昇だ。

 青山は店舗で販売するスーツの約5割を中国で製造して輸入する。このため、現地の人件費上昇の影響は大きいが、最近の円安傾向によっていっそうあらわになった。同時に、景気が上向いてきたことで「市況が若干の回復を見せており、セールを見直しても販売数にそこまで影響がない」(岡田氏)との判断も働いた。

 AOKIも同様の理由で「14年10月以降は『2着目1000円』のような格安での提供を大半の店舗でやめている」(免田操佳広報室副主任)。

5万円以上の高価格帯が伸びる

 販売価格が上昇するもう1つの理由が製品の見直しだ。消費者の嗜好の変化に対応し、高価格帯のラインアップを充実させていることが価格上昇に寄与している。「10年前に比べてお客様のスーツの『使い方』が変化している。大事なときに着る確かな品質のスーツを1、2着持っていたいという人が増えている。一昔前のように低価格帯のスーツを多数買う人をあまり見なくなった」(太田耕一郎AOKI横浜港北総本店総店長)

 実際、AOKIでは5万円以上の高価格帯のスーツの売れ行きが伸びている。15年度の同価格帯のスーツが全体の売上高に占める割合は3ポイント上昇し、40%程度になる見込み。「オーダーメードなど10万円近くする商品の売れ行きもいい。いいものにはお金を惜しまない傾向がある」(太田氏)。青山の店舗でも、6万円以上の価格帯のスーツの販売数が15年度には14年度比で2割程度上昇する見込みだ。

 スーツ価格が上昇し、販売数も維持できれば収益の改善につながると各社の期待は高い。ただし、5万円以上の価格帯には外資系の高級ブランドがひしめき、販売競争はこれまで以上に激しい。製造・小売りを一貫して担い、格安路線で業績を上げてきた青山とAOKIが外資に伍(ご)していける信頼と品質を提供できるかが今後の鍵になりそうだ。

(飯島圭太郎)[日経電子版2016年1月23日付]

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