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お悩み解決!就活探偵団2017すでに内定4つ!
就活「100日戦争」は
始まっている

authored by 就活探偵団'17
お悩み解決!就活探偵団2017 すでに内定4つ!就活「100日戦争」は始まっている

 今春入社の新卒採用活動のピークが過ぎたのもつかの間。春の足音に合わせるように動き出した2017年卒の学生の動向をキャッチするため、「就活探偵団」の連載も再開します。今シーズン最初の質問は「もう内定が取れている人はいるんですか?」

 速足だが調子がいいウサギがサボっているうちに、遅速でも地道にコツコツ進むカメが先にゴールにたどり着く。これは寓話(ぐうわ)の話だが、17年卒の新卒採用活動の世界では事情はちょっと違う。有能なカメはすでに猛烈なスピードで走り始めているのだ。

「すべての選考をやめて」

 ある有名私大に通う男子学生はすでに内定を4つ持っている。

 1つは就活人気ランキングで上位常連の大手企業。今月、内定承諾書をもらった。中身を読んでみると内定を出す条件に「全ての選考をやめること」と書かれている。男子学生は会社に「ハンコを押すのは少し待ってほしい」と伝えた。すると「迷っているなら、待つ」と応じてくれた。ただ、聞くところによると、ほかの内定者は全員ハンコを押したようだ。

 この男子学生はこちらも著名な大手IT(情報技術)企業からも内定を獲得した。しかも内定者の中でも、早い段階に内定が出る「早期内定」をもらっている。これは同社の目玉となる新規事業にすぐ関わらせてくれる、優秀な学生に与えられるお墨付きの「内定」だという。このほか有名企業を含む2社からも内定をもぎ取った。

 早くも安堵の表情を浮かべる男子学生。茶髪にパーマ。就活には私服で望んだという。誰にでも好印象を与える黒や紺のスーツでビシっと決めるのが就活生のスタンダード。一見、内定にはほど遠いようにも感じるが、一体どうやって「勝ち組」になれたのか。

 動き出したのは昨夏。どちらかと言えば一発勝負は苦手というタイプだという。「じっくりと(人事担当者に)見てもらった方が自分の良さが伝わるはず」との思いから、本当に行きたいと思える会社を選んで6社ほどのインターンに参加した。

内定を4つ獲得したという男子学生の手帳はスケジュールでぎっしり

 インターンでは全てで「リーダー」をやった。全体の状況をみて、メンバーに仕事をバランスよく割り振った。人事担当者からは「芯がある」「物事をきちんと考えて話している」と評価された。「結局、就活は見た目なんて関係ないんですよ」。学生からは余裕の笑みがこぼれる。

「内定断るのが面倒」

 慶応大3年の男子学生は内定こそ獲得してはいないが、ITベンチャーを中心に、すでに6社ほどで最終面接の直前まで進んでいる。だが、そこで意図的に止めている。それにはワケがある。確かに最終面接を受け、うまくいけば内定が出る可能性が高い。しかし「内定をもらった後に断るのが面倒」。だから各社には「最終的な志望動機が固まっていないので、最終面接を受けるのは待ってほしい」とお茶を濁して、待ってもらっているのだ。

 「大手企業の採用活動が本格化する前に、優秀な学生を確保しておきたい」(ITベンチャー)。「就活探偵団」が、各企業や学生に聞き取り調査をしたところ、外資系企業やヤフーなどの大手IT企業、ベンチャー企業がこの時点で、すでに内定を出していることがわかった。

 ここ数年は空前の売り手市場が続いている。文部科学省などの調査によると、今春卒業予定の大学生の昨年12月1日時点の就職内定率は80.4%。前年同時期に比べて0.1ポイント上昇した。5年連続の上昇で、リーマン・ショックの影響が出る前の08年同時期(80.5%)と同じ水準。文科省は卒業時の内定率も前年(96.7%)並みか、さらに上回るとみている。

まだリクルートスーツはまばらだが、すでに1月から就職説明会は盛況だ(都内で)

 企業業績の回復も追い風になり、学生の就活環境は今年も良好──。と思いきや、水を差したのがこの一件だ。

就活期間、過去最短の3カ月

 「学生、企業、大学の3方が全部損をした」(経団連の榊原定征会長)

 昨年繰り広げられた今春卒業予定の学生の就活では、経団連が指針で選考解禁を4月から8月へ「後ろ倒し」した。しかし外資系など経団連非加盟の企業を中心にルールに従わない企業が相次ぎ、結果的に学生の就活も長引いた。これを受け方針がまたも変わり、17年卒の解禁時期は6月に「前倒し」する形で落ち着いた。

 通常、「リクナビ」「マイナビ」などのナビサイトのグランドオープンする広報解禁日から企業の選考解禁日までが就活生の勝負時だ。今年の場合、その広報解禁が3月1日となり、選考解禁の6月1日まではわずか3カ月、日数にすると約100日。「就活期間としてはここ数年で最短になる」(採用コンサルタントの谷出正直さん)。4月半ばからは大手や人気企業へのエントリーシート(ES)提出の締め切りやテスト受験がスタートする。学生が業界や企業研究の時間にかけられるのは実質1カ月半しかない。

 「先輩の例が参考にならなくて困る」。女子大3年の学生はこう嘆く。いつ動き出して、いつごろ内定が出始めるのか──。これまでの就活生は先輩の動きを目安にして動いてきた。それが2年連続で日程変更になったことで、またも就活生たちは未知の領域に踏み入れることになる。就活における「技能伝承」は、完全に途絶えてしまった。

大手企業で「特別優遇枠」

 優秀な人材を逃すな──。解禁時期が前倒しになったことで焦っているのは学生だけではない。

 慶応大3年の女子学生は昨年10月頃、今年4月に電通に入社予定の大学の先輩から「電通に興味ありますか」と連絡があった。「興味があると言えばあります」と返答すると後日再びその先輩から連絡があった。「大学のキャンパスに電通の社員を呼ぶから、来てほしい」。実際に出向くといろんな世間話をしたり、学生生活のことについて根掘り葉掘り聞かれたりした。

 それから数日後、こんどは「OB訪問しに会社にこないか」と連絡が。出向くと、そこには人事部の社員も含めた3人が座っていた。志望動機や学生時代やってきたことなどを聞かれた。「人事がメモを取っていたので、OB訪問という立て付けの面接だと感じました」

 真相を探るために、今春入社する別の学生に直撃したところ「これは『特別採用枠』と呼ばれる採用活動の一環です」と解説してくれた。内定者が自分の大学の後輩の中から優秀な学生を紹介して、通常の採用ルートとは別に学生にアプローチするというものだという。この「枠」ではいち早く「内定」を出すほか、配属先まで「通常ルート」をへた学生に先んじて決められるという。

 電通の根橋敬採用部長は、この時期のOB・OG訪問について「社員が個別で後輩などから頼まれて行うことはあるようだが、その内容や学生の情報などに関しては人事は把握していない」と話す。「社員は報告する必要もない。たまに『こんな優秀な学生がいたんですよ』とちらっと話してくる社員もいるが、受け答えするのみで、特にその学生にマークはつけていない」

内定者主催という形をとった「座談会」はSNSなどで参加者を集めている

 今春、東海旅客鉄道(JR東海)に入社予定の有名私大の4年生は、同社の人事部から頼まれて、大学内で学生対象の「内定者座談会」を開いた。1月に計4回。内定者主催という体裁で、表向き「選考に直接つながるわけではない」としているが、ここで集めたデータを基に会社が各学生にOB・OGを紹介するという。もっとも、JR東海は「内定者たちが自主的に座談会を開いていることは認識している」と説明するが、何らかの形で選考に関わってくるのは間違いなさそうだ。

 「最大手総合商社インターンシップを受けませんか」。慶応大3年生の男子学生にこんなメールが届いた。この学生は「レクミー」という就活サイトの「プレミアム会員」に入っている。レクミーの担当者と面談や、電話面接をし、優秀と評価された人だけが入れる。メールには社名こそ書かれていなかったが、添付されているURLをクリックすると、三井物産のインターンサイトに飛んだ。

 「三井物産なら志望する学生をいくらでも採れるが、欲しいのは外資系金融など、商社以外を志望する優秀な学生」(関係者)。レクミーはクライアント企業を代行して、こうした学生を募集し、評価する。メールには、「確実に受かるわけではありません」とただし書きがあったものの、男子学生は「面接で優遇があると思う」と信じて疑わない。
意欲ある学生を集めようと新たな試みに乗り出す会社も。丸紅は3月1日に同社にOB・OGのいない大学向けに「社員紹介ダイヤル」と称した窓口を設ける。学生に生の声を聞いてもらい、業界や社員に対する関心を深めてもらうのが狙いだという。

ウサギはずっとサボっている?

 学生が登録したプロフィルを見て企業がオファーを出す逆求人サイト「オファーボックス」を運営するアイプラグ(大阪市)は1月中旬、都内で学生約80人を集めたイベントを開いた。参加した企業はタイトー(東京・新宿)や医療機器開発の川澄化学工業など7社。学生は名前と学校名の書かれた「名刺」に電話番号やメールアドレスなどを書き込んで各社の人事担当者に配布。熱心に話を聞いていた。法政大の女子学生は「普段なかなか見ようと思わない企業も知りたくて参加しました」。独協大の男子学生は「すでに就活が終盤にさしかかっているという人もいた。今からなんとか追いつきたい」と鼻息が荒い。

 「今、就活のために日程を埋めつくす必要はない」

 一方で動きが鈍い学生もいる。マスコミやメーカー志望の早稲田大3年の男子学生は、先輩から聞いた話を真に受けている。16年卒でみずほ銀行に内定した先輩は「3月に学内説明会があることさえ知らなかったけど、結局内定はもらえた。だからそんなに焦る必要はない」と豪語していた。今は春休み中。3月から広報解禁で企業の学内説明会が始まるし、4月からは授業もある。「遊ぶのは今のうち。3月から動いても十分に間に合うだろう」と危機感のかけらもない。

 海運業界志望の大学4年の男子学生も「今の就活は売り手市場。海運業界には入れなくてもきっとどこかには入れるはず」と楽観的だ。

 今年の学生の間では「二極化」が例年にも増して顕著だ。冒頭のようにすでに複数の内定を獲得している学生がいる半面、年が明けてもまだピンと来ず「何とかなるだろう」と高をくくっている学生も相当数いるのも事実だ。

 マイナビの吉本隆男編集長によると「講演会や説明会の集まり具合や自己PRの不足を見る限り、学内説明会で会う学生の『のんびり』がひどい」とバッサリ。ある大学では、説明会とインターンシップ経験者は3分の1、SPIテキストの勉強を済ませているのは10%程度にとどまっていたという。吉本編集長のもとには大学関係者から「のんびりしているので学生の尻をたたいてほしい」という依頼が多いという。

 経団連に加盟する大手企業の採用活動が本格化するのは3月以降になる。就活生たちの100日間戦争の開戦目前。最後に笑うのはウサギなのかカメなのか。

(鈴木洋介、松本千恵、塚田光、雨宮百子、高尾泰朗、中山美里)[日経電子版2016年2月18日付]

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