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卒業の季節に学生へ贈る言葉(中)今までなかった仕事を見つけられるか?

斎藤ウィリアム浩幸 authored by 斎藤ウィリアム浩幸インテカー社長
卒業の季節に学生へ贈る言葉(中) 今までなかった仕事を見つけられるか?

 コンサルタントで内閣府参与の齋藤ウィリアム浩幸さん(インテカー社長)が2015年5月、母校の米ダミアン高校で卒業式に招かれ、祝辞スピーチに登壇しました。この時の発言趣旨を和訳し、3回に分けて、日経カレッジカフェでお届けしています。本日は、その2回目です。どうぞご覧ください。

◇    ◇

高校時代に学ぶのは「人生」である

 幸運だったのは、ダミアンが「卒業生の人生に成功への道標を示してくれる学校」だったことです。成功と言っても、何もビリオネア(数十億万長者)になる方法を教えてくれるわけではありません。人生を意味あるものにするために手を貸してくれるという意味です。

 高校時代の経験の中で、将来のために役立つことなどあるだろうか。皆さんも学校の授業を受けたり研修に連れ出されたりするたびに、そう疑ったり、鼻で笑ったりしていたかもしれません。私もそうです。中には、高校生活は大学に進学するためのウォームアップ期間に過ぎない、と思っていた人もいるかもしれません。しかし、現実はそうではありません。大学時代はあっという間に過ぎ去って、皆さんはある日、突然に実社会に放り出されます。その時、気づくはずです。大事な知識の多くは、大学時代ではなく、高校時代に学んでいたのだということに。

 さぁ、ここで、ようやく今日の本題である質問に入りましょう。このダミアン高校で、皆さんが受けた教育の中で、もっとも重要なことは何でしょうか? 実を言うと、先生方には恐縮ですが、一番大切な部分はペーパーテストのための勉強とは関係ありません。私自身も、一刻も早く高校を卒業するハッキングに夢中になっていた時は気づいていなかったことです。ダミアン高校が生徒たちに与えている最大の、そして一番大切な価値は「人生」について教えてくれることにあります。

 ダミアン高校にはボランティアの精神が根付いています。言うまでもなく、学生時代の私は必修科目だったボランティア実習を重たい負担に感じていました。無理やりやらされて意味があるのかと思ったわけです。ところが、社会人になって私はすぐに気づくことになります。ボランティア精神を教えられたことが、私という人間を形成するためにどれだけの重要な変化であったのかを。世の中では、たくさんの人が他人のためにと考えボランティア活動へと参加します。時には苦しいこと嫌なこともあるでしょう。それでも人々がボランティア活動を続け、我が子を積極的にボランティアに参加させるのは、少しでも世界を良く変えたいと願い、その変化の時に我と我が子とで居合わせたいと願うからです。

成功者にボランティア精神が欠けた例はない

 今日のボランティアが、明日の世界をどれくらい変えるのか。それはわかりません。しかし、自信を持って言えるのは、ボランティアに費やした100時間は、確実にあなたを変えたということです。人のために何かをしたいという欲求は、現実社会に貢献する際のもっとも重要な動機のひとつです。ビル・ゲイツやアンジェリーナ・ジョリーといった皆さんにとってのヒーローといえる成功者たちにボランティア精神が欠けた例はありません。正しい行いは、一生にわたって、皆さんの成功の一部になるのです。しかし残念ながら大学ではボランティア精神は教えられません。高校時代に教えられた皆さんは非常に幸運なのです。

 他人を助ける活動にたくさんの時間を費やす経験には、もう1つ利点があります。人生につまづきもう一度立ち上がろうとする時には、誰もが誰かの助けを必要とすることを理解することです。ボランティア活動に参加することで、皆さんは自分自身が必要になった時に誰かの助けを求めても良いのだと学ぶことができます。現実社会では、どんな天才や秀才にも、「もう自分だけの力では頑張れません、誰かの助けが必要です」というような危機が訪れるものです。皆さんは他人を助けるという行為を通じて、他人に助けてもらうための準備も整えることができるのです。

 時に、誰かに助けを請う勇気は、誰かを助ける勇気よりも大切です。皆さんは高校時代に、公平であることについても学ばれたかと思います。人生を公平にすることではありません。人生は、生まれや容姿や能力を見れば明らかなように、公平なものではないからです。人生は公平ではない。だからこそ、人を公平に扱うことは大切なのです。

 ボランティア活動をすると、このことをひしひしと肌で感じるようになります。公平であることは、ダミアン高校が皆さんに教えようとしている姿勢のひとつでもあります。それは大人が子どもたちに教える聞こえの良い決まり文句ではありません。公平であることは一つの生き方であり、他の人々を尊重する方法の一つであり、あなたの性格をつくる重要な特性のひとつとなるものです。

 公平である、という特性は、あなたを他の人々から際立たせ、差別化する要素になります。皆さんがこの特性を自分の人生にどう生かしていくか。それが、この高校の教育から得た重要な人生の指針のひとつになるでしょう。

未だかつて存在しなかった「仕事」を見つけなければならない

 高校時代に経験した多くのことは、これから先、大学や仕事現場といった「人生学校」での生活では学べないことです。なぜだと思いますか? それは高校が学ぶ方法を教えるための場だからです。本を読むこと、インターネットを検索すること、知識を吸収して統合し、整理し、大切な試験に合格することなどを教えてくれるのが高校です。実は試験とは、学生にとって有利な制度でした。あらかじめ学習すべき範囲が決まっていて、しっかり内容を理解していれば、想定していた通りの評価・報酬を正しく与えられるシステムだからです。

 けれども、高校を卒業した今日からは違います。大学の教授も、職場の上司も、あなたに試験範囲を教える役目は果たしてくれません。今日から、何をどう学ぶか。皆さんが自分の責任で決めなければならなくなるのです。皆さんが必要な試験に合格できるように責任を負ってくれる人は、誰もいなくなります。このことは、今皆さんが来ているガウンを脱いだ瞬間に現れる最も大きな変化のひとつになるはずです。このことに気づいて理解するのが早ければ早いほど、皆さんが人生で成功する確率は高くなるでしょう。

 もちろん、大学の教授は皆さんを導いてくれますし、上司はどこに行けば必要な知識が手に入るかを教えてくれるでしょう。ただし、示すべき成果は、模範解答ではありません。与えてもらった素材は新しい調理法によって従来と違う新しい味わいに変化させなければ、それを評価してくれる人は誰もいないのです。

 コンピューター領域を専門とする私が今、かなりの自信を持って言い切れるのは、情報を扱うあらゆる職業が、皆さんが大学を卒業する頃には存在しなくなるということです。数値化しデータベース化が可能な情報は、すべてコンピューターが処理するようになるでしょう。

 皆さんは授業やインターネットのニュースを通じて、「シンギュラリティー(特異点)」という言葉を耳にされたことがあるかもしれません。この言葉には様々な意味がありますが、先進技術の世界では人工知能、すなわちコンピューターが、そう遠くない未来に人間以上の知能を持つようになる極致点のことを言います。今日の平均的なパソコンは、私が子どもの頃に遊んだコンピューターのはるか遠くを行っています。最新のマイクロプロセッサはネズミの知能を上回るそうです。

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