日本経済新聞 関連サイト

OK
career-働き方

欧州のインターンシップ、理想的?
低賃金で不安定な側面も

欧州のインターンシップ、理想的?低賃金で不安定な側面も
authored by 海老原嗣生

 そもそも、なぜ欧州ではインターンシップ(IS)が社会に定着しているのか。夢や幻想を抱いている人が多いので、現実を話しておく。

 まず、欧州は原則、ある職業でしっかり仕事がこなせるというお墨付き(職業資格)を持っている人しかその職業につけない。

 建前上は、こうした職業教育を公的訓練機関や学校が行うことになっているが、現実は異なる。対人折衝が主体となる営業や、調整がつきものの管理・企画職務、クライアントの要望に左右されるクリエイティブ職、熟練がものをいうエンジニア職。どの仕事をとっても、学校の教科書では教えられない仕事のノウハウが重要になる。

 だから、欧州の学校では、授業の中で企業に学生を送り、実務をさせる期間が設けられている。これを交互教育やコオプというが、その期間がかなり長い。半年から1年もあるのだ。

 ただ、それでもそのくらいの期間では熟練にはほど遠い。だからそのままでは卒業時に雇ってはもらえないのだ。そこで、夏や冬、春の休みに自主的にISに行く。さらに、卒業後にまたISで腕を磨く。こうまでしてようやく職にありつける。こんな現実があるから、ISをせざるを得ない。

 一方、企業はなぜISを活用するのか。これにも一筋縄ではいかない事情がある。欧州諸国では、有期雇用の人を雇うには厳しい制限があるうえ、正当な理由もなく無期雇用の人より待遇を低くするのは難しい。企業としては、非常に窮屈な思いをしている。

 ところがISであれば、いつでも自由に辞めさせることができる。そのうえ、少し前までは「労働ではなく教育の一環」ということで、最低賃金の対象外でもあった。だから、安く使い、いらなくなったらサヨナラできる、企業にとってとても都合のよい代物だったのだ。

 こんな感じだったから、ISに関するデモがフランスやドイツで頻発し、法律も厳しくなってきた。その結果どうなったか?

 フランスなどでは、国が管轄する見習い労働制度により、企業へ派遣する仕組み(CFA)が新たに浸透した。卒業後に就職できず、CFAにて実習する若者は多い。さてその賃金だが、なんと最低時給の53パーセントしかもらえない。日本円に換算すると700円にもならず、年収は90万円程度が基準となる。それを2年経てようやく正社員となる。

 日本の新卒採用慣行を首肯はできないが、欧州に夢を見るのも危険だろう。

(雇用ジャーナリスト)[日経電子版2016年1月25日付]

【関連記事】
「就活生座談会2017(1) インターン参加者には近道が用意されている!?」
「もう暮らせない『ただ働き』に不満、米インターン事情」

「日経College Cafe」のお勧め記事はこちら>>