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お悩み解決!就活探偵団2017学生を不安にするリクルーター結局なんだったの?

authored by 就活探偵団'17
お悩み解決!就活探偵団2017 学生を不安にするリクルーター結局なんだったの?

 初めての就職活動は分からないことだらけ。直接企業に質問しづらいことも多いし、口コミ情報がどこまで信用できるかも不安だ。そんな悩みを解決する「就活探偵団」。就活生の様々な疑問に答えるべく、あなたに代わって日経記者が企業に突撃取材します。

「非通知」の電話を待つ

 今回の質問は「リクルーターらしき人から同級生に電話がかかってきました。かかってこないと、選考に乗れないのでしょうか」。 かかってくる人もいれば、こない人もいる。自分の電話番号を知らせない「非通知」で突然電話が来て、知らないうちに選考になっていた......。必然的に受け身になる学生にとっては、不安な気持ちになるのも仕方ない。

 早稲田大学4年の男子学生は、今年4月に大手食品メーカーに入社予定だ。だが就活の過程では、大手商社の豊田通商、三井住友銀、JR東海の3社のリクルーターから声がかかった。

 「ちょっとお話しませんか」。最初は昨年5月、豊田通商の男性社員から、自分の電話番号を伝えない「非通知」電話がかかってきた。男子学生は、大手ナビサイトに自分の基本情報を登録して、同社の企業情報を見るために、「プレエントリー」していた。これが契機で同社の座談会形式のセミナーに参加していた。

 面談当日は東京・品川駅近くの本社で待ち合わせ、駅近辺の小洒落(こじゃれ)た居酒屋で夕食をとった。相手は入社2~3年目くらいの男性社員。カウンターでお酒を注文し、サラダや空揚げなどをつまみながら、「就活で困ったことはないか」など、さまざまな相談に乗ってくれた。「うちのことどう思う?」と聞かれた程度で、面接らしさはまったくなかった。

 豊田通商のエントリーシート(ES)の締め切り1週間前の7月のある日、再び、同じ社員から連絡があり、一緒に昼食を取った。その場で「ESは出すつもりなのか」と確認され、会話のなかで食料関係に興味があると伝えたところ、関係する部署の先輩を紹介された。2週間後、食料関係で働く入社7~8年目くらいの男性社員と面談。ESの提出後だったため、書類選考の合否を尋ねたが「判断は全部人事に任せている」との返答。

 選考初日の8月1日、彼は本来あるはずの集団面接が免除され、初めから人事との面接となった。「商社が第1志望だったので、緊張しすぎたようです」。選考通過の知らせはなかった。2人のリクルーターからの連絡も途絶えた。

 「非通知の連絡をワクワクしながら待っていたが、どの会社も相手の連絡先は教えてくれない。完全に待ちの状態」とこぼす。周りにもリクルーターらしき社員からラブコールを受ける友人は多くいたが、回数や出てくる人はまちまち。この学生は他2社についても複数回、リクルーターとの面談をこなしたが、最終的に内定をもらえた企業はなかった。

リクルーターは3種類

 「リクルーター」は、バブル世代にはなじみが深い。最近復活してきているのは、就活が売り手市場に転じていることに加え、就活スケジュールが変更になったことが背景にありそうだ。就活支援サイト「ワンキャリア」を運営する宮下尚之氏は、「今年の就活は、3月に企業広報解禁、6月に選考解禁と、就活史上最短の3カ月。短期決戦にそなえ、リクルーターの人数は増えている」という。その分、現場の混乱も目立つ。

 採用コンサルタントの谷出正直氏によると、リクルーターには大きくわけて3種類ある。1つ目は、「学生への企業広報、認知」。いわばPR係だ。採用選考時期より前に非通知電話でかかってくるものの、多くはこのケースが多い。第2は、選考中の学生サポートだ。主に、面接と面接の間に学生に接触する。彼らのミッションも、1つ目と大きな違いはなく、自社の理解を深めてもらうことだが、何度もコンタクトを取り学生とのつながりを深め、自社への志望度をあげることも大切な役割だ。最後が、「入社を決めてもらう」ためのリクルーター。内々定を出す前後に学生に会い、実際に入社してもらえるよう、本音を聞き出しフォローする役割だ。

 冒頭の早大生の場合、第3までは到達したものの、最終的にふるいにかからなかったケースといえそうだ。

 リクルーターに対する学生の受け止め方は様々だ。昨年就活した慶応大4年の男子学生は、「リクルーターとして会った大手自動車メーカーの社員はひどかった。ねちっこく質問してくる上、こちらの発言を頭ごなしに否定された。広報活動、と連絡してきたが、あれは明らかに選考」と不快感を隠さない。

 一方、総合商社に勤める3年目の男性はリクルーター面接を切り抜け、当時大手自動車メーカーから内定をもらった時のことを振り返る。「早い段階でセミナーにいき、そのセミナーで多く質問することが、リクルーターのつくコツだと思う。セミナーに行った人のなかでも、つく人とつかない人がいたようだ」という。

 「名目上は社員との交流だが、実際は評価の対象になっている」とキッパリ。この男性社員は5回のリクルーター面談を通過したのち、簡単なグループディスカッションと30分程度の面接のみで内々定を得た。

 今年大手電力会社に就職する早稲田大4年の男性は、リクルーター通過組が実際の選考で優先されていた当時を振り返る。「自分には声がかかりませんでしたが、内定をもらいました。しかし、リクルーター面談を経た同期は、8月1日早々に面接を受けて早々に内定をもらっていた。自分は、1日に面接を予約できなくて結局8月中旬に最初の面接。焦っていた」という。

大学1校ごとに20人のチーム

 「リクルーター」と書いてきたものの、3月広報解禁、6月選考解禁のルールを表向き順守する企業には、そんな存在はいないことになっている。それだけにリクルーターに任命された現場社員からの困惑の声も聞こえる。

 ある大手銀行では、2月下旬に行内でリクルーターの説明会が開催された。参加した入行4年目になる男性は「対外的にはリクルーターはやっていないことになっているが、本音はやっている。リクルーターに選ばれる経緯や理由は行員内でもわからない」という。

 この銀行では、狙いを定めた大学ごとに各20人程度のチームを組む。各チームのトップは入社7~8年目の社員。チーム員は1年目や2年目が比較的多く、学生に会い優秀で志望度が高いと判断した情報をチームのトップに報告する。報告を受けた中でさらにふるいにかけて人事に報告する。この行員は「基本的にこの仕組みにのっていないと内定への道はない」とバッサリ。

 学生の評価が高ければ、面接開始日の当日に面接して内定。そうでない場合は複数の面接もしくは、面接時期を遅らせるなどの措置をとる。判断理由として最も重要なポイントは「志望度の高さ」。優秀であっても、志望度が低ければ人事に上げづらい、と現場社員は判断するらしい。

 学生の数にノルマはあるのか。「チーム員には何人採用しなければならないなどの責任はなく、評価には関係ない。ただ、リーダーはある程度の人数枠を与えられているので責任はあるかもしれない」。本業への影響はどうなのか。「採用時期が、4月から6月にずれたことはありがたい。4月のままだったら、年度末が重なり、業務に影響する可能性もあった」。リクルーター業務の負荷の大きさがうかがえる。

「効果が見えない」廃止した会社も

 企業の広報代行を手がけるベクトルは、2017年卒からリクルーター制度の導入を決めた。きっかけは、採用の広報期間が3カ月と短くなったことで学生が企業研究を十分できないのでは、という危惧からだ。リクルーター業務に関わる社員は全社員の10%程度。経営戦略本部人材課の臼田大輔マネージャーは、「優秀な社員を採ることができるのは、優秀な社員。それを伝え、社員みんなで採用活動に関わることが必要」と話す。

 一方、ある大手通信会社は、500人近い社員が関わっていたリクルーター制度を4年ほど前に廃止した。10年以上も続いたシステムをやめた理由を採用担当者が打ち明けてくれた。「現場社員の休日や業務を犠牲にしてまで、採用活動に動員しても、そこまで数字的な効果が見いだせなかった」という。

 この会社も、やはり大学ごとに20から30ほどのチームを構成。1つの大学から30人の学生を推薦をするノルマが与えられるケースもあり、その場合、現場リクルーターは500人から600人もの就活生に会わなければならなかったという。チームによっては、部活動のような上下関係も生まれていた。「大学ごとに、やり方に違いが出てきたことも問題でした。就活生にとってみれば不透明に感じていたのでは」と振り返る。

トラブルも絶えない

リクルーターは突然現れて、興味がなくなれば去って行く。それでも電話には出るしかない

 現場社員が関わるリクルーター制度には、トラブルもつきない。谷出氏によると、例年耳にするのがセクハラ問題。数年前、大手銀行でリクルーターを装った行員が就活中の女子大生にわいせつ行為をした事件もあった。ある中堅私大のキャリアセンターには、「リクルーターから内々定をほのめかされたと勘違いした学生がおり、小さなトラブルになった」という声も届いた。

 企業はトラブルを避けるために研修を実施し、対策を講じている。一般的には、「2人きりでは食事にいかない」「お酒は飲まない」「選考中に会う場合は社内の会議室で会う」などが多い。

 リクルーター面談が学生にとっても、企業にとっても、選考や説明会では見えづらい互いの「本音」を聞き、理解を深める手段として有効なものであることは違いない。しかし、構えすぎる必要はないが、社会人が採用時期の前後に連絡する以上、選考にはなんらか関わっている可能性があると見るのが妥当。谷出氏は、「社会人に会うときは、選考されていてもおかしくないと思え」と警告する。

 2017年の新卒採用に向け、リクルーターたちが動き始めるのはちょうど今ごろから。冒頭の早大生はこう言う。「リクルーターからの電話は楽しみでしたが、どうせ他の人にもかけているんだろうなと思っていました」。『告白』は一方通行。言い寄られたのに、興味がなくなれば去って行く。だが、電話は取るしかない。選ばれた優先切符の可能性もあるのだから。
(松本千恵、塚田光、中山美里、雨宮百子)[日経電子版2016年2月25日付]

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