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日中韓の架け橋に(上)なぜ私たちは分かり合えないのか?

日中韓の架け橋に(上) なぜ私たちは分かり合えないのか?
authored by OVAL実行委員会

 「OVAL(オーバル)」を聞いたことがありますか? OVALとは、日中韓の3カ国に支部を持つ学生団体で、「東アジア発のグローバルリーダーの輩出」をミッションとしています。具体的には、日中韓の参加者が1週間共に過ごし、3人1組のグループごとにビジネスプランを立案するという過程を通して"Our Vision for Asian Leadership"を探求していきます。この連載では、参加者とスタッフの声を通して、OVALの活動を知ってほしいと思っています。

 みなさん、こんにちは。東京大学1年の新家雅士と申します。私の参加経験を通してOVALの活動を紹介します。

 日本人、中国人、韓国人。私たちの外見は似ています。地理的にも近接しています。それにもかかわらず我々はなかなか分かり合うことができない国民です。どうにかして、この3カ国の距離を近づけ互恵関係を築き上げること、これが私の目的です。

 実は私は高校1年生の時に、「日韓高校生交流キャンプ(JKCAMP)」というOVALと似たような活動に参加したことがあります。この活動こそが私が東アジアに関心を持つきっかけとなったのです。まずはこの時の経験について述べたいと思います。

 JKCAMPはOVALと違い、参加国が日本と韓国だけではあったものの、プログラムや目指しているものは似ていました。内容についての言及は特にしませんが、私がJKCAMPで得たものと胸を張って言うことができるのは人間関係です。とりわけルームメイトの韓国人とは国の違いなどを全く意識しないほど仲良くなりました。今でもFacebookで時折連絡を取り合うなど、関係は続いています。

我々は国が違うのだ

 しかしながら、このキャンプのあたりの時期から日韓関係は悪化し始めました。当時の李明博大統領の「天皇は謝罪すべき」発言がマスコミで大きく取り上げられたのもこの頃です。私も感情的になり、その韓国人の友達に、「なぜ李明博大統領は、韓国人はそのような言動をとるのか」といったことを聞いたりしました。そしてそのような質問をしている私を客観的に眺めた時、私はやっと気付いたのです。我々は国が違うのだ、と。私は日本人で、彼は韓国人なのだと。

 その時に私を悩ませたのは次のような問いです。我々は個人レベルではかなりの程度まで仲良くなって解りあえるのに、国家という概念が介在してくるとなぜこんなにもお互いを理解するのが難しいのだろうか? 個人の集合体が国家ならば、その構成員たる個人が解り合うことができれば国家の対立もなくなっていくのではないか、という想いを胸に抱いたのです。

 それから私は勉強をしました。歴史を学びました。宗教を学びました。政治を学びました。そして大学生になり、OVALに参加しました。JKCAMPとプログラムは似ていますが、そこに参加する私は高校1年生の私とは別人でした。私は日中韓の間にどういった問題があるのかや、お互いの国が抱えている特殊な事情及びその背景などをすでに知り、明確に意識した状態でOVALに臨みました。私は日本人ですが、彼、彼女は韓国人、中国人であり、我々には違いがあるという前提がすでに共有されていたように思えます。

違いを認識した上でどう付き合っていくのか

 ここにOVALの価値があると思います。すなわち、3カ国で協力してビジネスプランを立案する、というOVALのプログラムを通じて、違いを認識した上で実世界でどう付き合っていくのかを実践的に学ぶことができるのです。もちろんOVAL期間中、私はグループのメンバーと政治や文化に関わる話もしました。韓国の兵役、中国の少数民族独立問題に関する議論をしました。アメリカに対する捉え方も話しました。

 書籍や報道で知るのではなく、当事者の生の声を聞き議論をするというこの経験だけでも大変重要なことでした。しかし、それだけでは終わらせませんでした。相手のバックグラウンドを知った上で、互恵関係に直結するビジネスという分野で協働作業をする、これは非常に貴重で実践的な経験でした。

OVALスケジュール
・Day1はチームメイトと出会ってから初めてのプランニングが始まり、知り合ったばかりの適度な緊張感の中、様々な資料にあたりながら活発な議論が展開されました。

・Day2はプランニングに加えて、様々な現場で働いている社会人から実際にフィードバックをしていただけるコンサルティングタイムが実施されました。自分たちのチームに何が足りないのかを直接指南していただくことは今後のビジネスプラン作成の大きな指針となりました。

・Day3は1日かけて東京でフィールドワークが行われました。アンケートやインタビューを通して、プランニングにおける仮定を検証するため、実地でデータを収集しました。当日は炎天下だったため効率良く調査を行いつつ、浮いた時間で東京観光を通じて日本の魅力を探るとともにチーム仲の深化も図りました。

・Day4はDay2同様午後にコンサルティングタイムが設けられました。グローバル企業、経営大学院、ベンチャー企業などに勤務される社会人の方から頂いたアドバイスをもとにプランの緻密化と発展に取り組みました。そして夜のリフレッシュパーティーでは韓国スタッフの方々が用意した様々な演出を楽しみ、気分転換にとても役立ちました。

・Day5は最後のプランニングの日でしたので、一日中プランについての最終的な議論や作業を行い、大詰めに取り掛かりました。そして企画書と発表のスライドの最終提出を済ませてからもプレゼンに向けての打ち合わせには余念がありませんでした。

・Day6ではプランの発表です。そしてこのPre Presentationで優秀と認められた6チームが Final Presentationに進出し、そこで総勢200人を超す参加者・スタッフ・審査員の前で再度プレゼンを行いました。そして、その発表をもとに1位から3位が発表され、記念撮影などを経てコンテストは閉幕しました。

・Day7は参加者全員でコンテストを振り返るPost OVAL。インタビューを通してスタッフにコンテストで感じたことや得たことなどの熱い想いを伝えました。そして午後、各国スタッフ・参加者と別れの時間が訪れ、再会を約束してそれぞれの目的地へと向かって行きました。

できるだけ発言し、主張していく

 私はOVAL期間中、一つ強く意識したことがあります。それは、できるだけ発言し、主張していくということです。中韓の人からしたら私が日本人の代表のように思えるのだろうから、私が黙っていてはいけないと考えたためです。拙い英語ではあるものの、「沈黙は金、雄弁は銀」などと考えていてはいけない世界であるし、それは社会に出ても同じなのではなかろうかと思います。
以上のように私はOVALにより、実社会でどのように東アジアの国々と付き合っていくべきかを実践的に学ぶことができました。繋がりを持った上で違いを認識したJKCAMP、違いを認識した上でどう付き合っていくのかの術を学んだOVAL、両者とも私を大きく成長させてくれる存在でした。このような機会を頂けたことに感謝し、またそのような経験を持てた者の責務として、今後の東アジアの関係改善に貢献できるような存在になるという想いを強くしました。