日本経済新聞 関連サイト

OK
[ career-働き方 ]

お悩み解決!就活探偵団2017選考前にぐったり
本気のインターンシップの狙いは

authored by 就活探偵団'17
お悩み解決!就活探偵団2017 選考前にぐったり本気のインターンシップの狙いは

 初めての就職活動は分からないことだらけ。直接企業に質問しづらいことも多いし、口コミ情報がどこまで信用できるかも不安だ。そんな悩みを解決する「就活探偵団」。就活生の様々な疑問に答えるべく、あなたに代わって日経記者が企業に突撃取材します。

 今回の質問は「企業からインターンシップ(就業体験)のお知らせがたくさん来ました。実際のところ、インターンは選考に関係あるのでしょうか」

 いよいよ3月1日に本格化した2017年卒の学生の採用活動。しかし、企業は広報解禁前から水面下で学生に接触していた。その最たる例がインターンだ。泊まり込みの合宿や、ビジネスコンペの形式を取るものなど、学生も企業も選考以上に死力を尽くして取り組むものもある。企業のねらいはどこにあったのだろうか。

倍率は60倍、丸紅の「泊まり込み合宿」

 「記者が取材に来るといったら、現場の担当者が難色を示しまして。1人だけならなんとか」。就活探偵団が、インターンへの"潜入"取材を複数企業に申し込んだ結果、大手総合商社の丸紅が参加を受け入れてくれた。

 丸紅は2011年まで人事部による2泊3日のインターンを実施していたが一度やめた。昨年、インターンを復活させたが、現場社員との交流に重点を置いたものだった。今年はさらに強化し、5日間泊まり込みの合宿方式だ。

 「採用とは関係ないが、今回のインターンで商社のビジネスを知ってもらうことがねらいだ」(野村容人事部採用課長)

 2月下旬、本社近くのホテルの1室に約3000名の応募の中から選ばれた50名の精鋭が集まった。輝くシャンデリアの下でリクルートスーツに身を包んだ学生たちは、「サッカーのインターハイで優勝しました」「大学に通いながら会社経営しています」などと誇らしげに自己紹介をした。まさにスーパーエリートたちだ。

 学生たちは5人ずつの10チームに分かれ、丸紅の事業分野である「生活産業」「エネルギー・金属」「電力・プラント」「輸送機」「素材」のどれかで新しいビジネスプランを考える。ハイライトは5日目、最終日のプラン発表だ。現場の各営業グループの部長クラスが学生の発表を聞き、上位3チームを選ぶ。選ばれた3チームはさらに役員にプレゼンテーションする権利がもらえる。朝から晩まで学生のスケジュールはびっしりだ。

ホテルの一室に集まったエリート学生(東京・大手町)

 探偵は、その中の「素材グループB」に密着した。宿泊先である同社の多摩センター研修所(東京都八王子市)から約1時間半、通勤ラッシュにもまれ大手町の本社に通う。「素材グループB」の課題は、実際に丸紅が扱っている肥料の新規ビジネス展開だ。5つの国の中から1国を選び、事業の参画形態を考える。

 3日目にもなると、学生の疲労の色も濃くなっていた。「学生たちは夜中の2時くらいまで作業をしていました。朝は6時おきです」という、人事部の安田洋介さんも疲れを隠せない。初日はヘアワックスで整えられていた髪も乱れていた。学生も、初日にはなかったシワをスーツにつけながら、額を寄せ合って何やら議論をしている。

社長以下100人動員

 この日は、1日で社内の6部門をまわった。課題に対する仮説を裏付けるために、各部署に質問をしてまわるのだ。訪問先の一つ、本社付属の経済研究所では、ハリウッドスターのような金髪の外国人社員が登場した。質疑応答は英語だ。続く財務部でも学生に試練が待っていた。「IRR(内部収益率)」や「PL(損益計算書)」といった専門用語が飛び交う。学生は耳慣れない言葉にメモをとる手も鈍くなり、最後の部門を訪問し終えた後には全員ぐったりとしていた。

 最終日のグループ発表では、わが「素材グループB」は残念ながら、上位3チームには入れず、肥料の散布にドローンを使うプロジェクトなどが選ばれた。途中、丸紅の国分文也社長も訪れ「世界で通用する人材をめざし、ノウハウではなく日本や世界の動きを学ぶ厚みのある人間になってほしい」と学生を激励した。

 丸紅はこの5日のためだけに社長以下役員を含め、約100名を動員していた。ここまでするのだから、採用に直結することを学生は期待しそうだが、実際にはそこまで頭が回らないほどのハードさだった。

 「泊まりだから覚悟はしていたが、知らないことや考えることが多く、大変だった」「勉強することが多すぎて、そこまで考える余裕はありませんでした。チーム内でも就活の話題はでていません」と、疲れきった様子。一方で「参加してよかった。志望度も高まった」と達成感を口にしていた。

あくまで「採用とは別物」

 今年は三菱商事、三井物産など総合商社の多くがインターンを導入した。丸紅に至っては、あれほどよりすぐりの学生を集めながら、「内定につなげない」というのはもったいない気もするが、人事部のコメントはキッパリしている。

 野村課長は、「会社によっては内定につなげるところもあるので、学生も期待してしまうと思います。うちのインターンでも、過去、期待する学生はいましたが、そこは区切っています」と潔白を主張する。ただ、インターンがきっかけとなって、志望につながった学生はやはりいる。丸紅の場合、「昨年のインターン参加者60名のうち、50名は選考に進んでくれました」(野村氏)。

英語で質疑応答をする学生(東京・大手町)

 他の業界はどうなのか。「インターンの応募人数は、今年はおよそ2倍になりましたが、採用には一切つなげていません」と、三菱UFJモルガン・スタンレー証券の嶺有佑人事部長代理もいう。

 同社では、分野別に3部門のインターンを行う。中でも、約200名と、最も多数の学生を受け入れるのが国内営業部だ。半日コースで計5日間のプログラムを4回開催している。各回の参加人数は50名で、それぞれ20名近く社員を導入する力のいれようだ。学生は金融や投資に関する講義を最初に受けた上で、「誰にどういう金融商品をなぜ提案するか」をグループで考え、発表する。ここでも、参加した全15チームのなかから上位3チームが選ばれるしくみだ。

 上位3チームに選ばれるため、学生たちはインターン終了後も本社周辺のカフェで集まって熱心に議論していた。

 経団連加盟企業の選考解禁はあくまでも6月1日。「採用には関係ない」と言わざるを得ない立場は分かるが、あまりに素っ気ないインターンだと、学生のほうが敬遠していくケースもある。

 慶応大文学部3年の女子学生は、大塚商会が昨年9月に開いたインターンに参加した。参加者は人材の採用方法を考えて、1位を競った。「もしもあなたが企画するなら」「もしもこんな経営課題があったら」と、仮説の上議論する方式だが、女子学生は、「やりがいがあって楽しかったが、ただ楽しいだけで終わってしまった。それよりも社員の普段の地味な業務を見られた方がよかった」と話す。本当の職場で何をしているのか分からないままで、同社を志望するきっかけにはならず、結局、留学をすることを決心したという。

人手不足を解消?

 "粗製乱造"のインターンには学生からの厳しい視線もそそがれる。

 東京大学大学院1年の男子学生は、1月に参加した主に情報サイトを運営する企業のインターンで、指導役となった社員に幻滅したという。「1人が5分遅刻しただけで、2~3時間説教されました。グループワークにも頻繁に介入してくるので、自分たちが決めた計画が狂ってしまった」と憤る。期待していただけに、志望度は下がったようだ。

 もっとひどいのは、「キャリア教育」という名目を隠れみのに、人手不足を解消しようというケースだ。明治学院大4年の女子学生は、あるモバイルゲーム開発の会社で2カ月間、平均して週3回のインターンに参加した。業務内容は、グラフや資料の作成などだ。基本は11時から19時までの勤務だが、21時ごろまで働くこともあったという。しかし、日給はたったの5000円。当然残業代はなく、8時間勤務の時給は625円で、10時間勤務だと500円になってしまう。きわめつきはインターンの最終日だ。スマートフォン(スマホ)ゲームの会社に勤める社員ら約100人が集まるパーティーの受付を無給で頼まれ、5時間立ちっぱなしで終わった。「やめちゃうんなら最後に使えるだけ使ってやろうという(企業側の)意図を感じた」

 経団連規定にしばられず、大手を振って選考にインターンを導入している企業は、その利点を享受している。スマホ向けゲームを手がけるドリコム総務人事部の長崎美香さんは、「お互いに嘘をついているような面接に疑問を抱いていたので、互いに本音が出るインターン参加者だけで採用することを決めました。始めたばかりだが、とても手応えを感じています」という。

 「社員さんとたくさん交流し、同じデスクで仕事ができたことで、入社後のイメージが湧き志望度が高まった」と語るのは、早稲田大学4年の男子学生だ。昨年、インターン終了後に選考を通過し、入社を決めた。キャリア教育が結果的に会社への志望度を高めるのであれば、これだけ力を入れるのは当然かもしれない。

 リクルートキャリアが2月16日に発表した「就職白書2016」では、インターンに参加した業種に入社した学生は45.3%と半分近くにのぼる。

 採用コンサルタントの谷出正直氏は、「直接選考に関係はなくても、エントリーシートや面接の場面で、会社への理解度が高まったインターン参加者が、参加していない学生に比べ圧倒的に有利なことは間違いない」という。学生、企業ともに負荷は大きくなるが、相互納得のいく入社につながることは間違いなさそうだ。
(雨宮百子、松本千恵、中山美里)[日経電子版2016年03月03日付]

◆「就活」関連記事はこちら>>

【関連記事】
「就活生座談会2017(1) インターン参加者には近道が用意されている!?」
「就活生座談会2017(2)  学内セミナーで『特急券』をもらう!」

「日経College Cafe」のお勧め記事はこちら>>