日本経済新聞 関連サイト

OK
career-働き方

シューカツ都市伝説を斬る!エントリーシートに
書いてはいけないエピソード

シューカツ都市伝説を斬る! エントリーシートに書いてはいけないエピソード
authored by 曽和利光

 リクルート、ライフネット生命などの人事責任者として20年以上、累計で2万人を超える就活生を面接してきた「プロ人事」、曽和利光さん。「学生は、根拠のない思い込みで失敗している」という曽和さんが、面接官の本音を語ります。第4回は「エントリーシートに書いてはいけないエピソード」です。

人事がうんざり 激変系エピソード

「学生時代のエピソード」という質問に対し、やたら目立つエピソードのパターンがあります。

 1つ目は「激変系」。例をあげましょう。「所属する野球サークルでとても大きな試合があったのですが、僕のエラーで負けてしまいました。その帰り、先輩から『......』と言われました。私は、この先輩の一言から○○と感じて、△△が大切だと学び、その時から変わりました。」

 この学生の返答で激変系と言われるキーワード。それは「その時私は」。つまり、自分の価値観や人格に起きた変化をある一瞬の出来事によって説明しようとしているのです。私はこれを「激変系エピソード」と読んでいます。

曽和利光(そわ・としみつ) 1971年生まれ。 京都大学教育学部卒。リクルート人事部ゼネラルマネージャー、ライフネット生命総務部長などを経て2011年、主に新卒採用を対象にしたコンサルタント事業の人材研究所を設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新報社)、「『できる人事』と『ダメ人事』の習慣」(明日香出版社)などがある。

 激変系は2つの理由からNGです。1つ目の理由は、「人はそんなに突然変わらない」。今回のエピソードでいえば、おそらく「先輩の一言」はきっかけにすぎないはずです。就活生はその価値観になった理由を一瞬の出来事で説明しようとしているけれど、実際は過去に様々な経験があったから今があると考えるのが普通です。つまり、選ぶべきエピソードを間違えている可能性が高いです。

 さらに、この「激変」が本当に正しかったとしたら、余計に問題です。つまり、他人の言葉や環境を受けて、やたら「激変する人」なんてなかなか信頼できません。言い方を変えると、その人の行動を予測できにくい人で、仕事を頼みづらい人、ということになります。どこかの就活本に書かれているのだろうか? と疑いたくなるほどよく見かけます。人事部から見ると、「自己分析が足りない人」という印象になります。

 次に、よく登場するのが「一体感醸成系」エピソード。

「所属するテニスサークルにすごくやる気がある人とやる気のない人がいました。私は間に立ち、丁寧にそれぞれと話をしました。結果、時間はかかりましたがみんなで一体感を持てるようになり、関東大会という目標に向かって努力できました」。

 「一体感醸成系エピソード」は、「激変系」と比べればそれほど悪いエピソードでもありません。ただ20年の人生の中で、他にも良いエピソードがあるはずなのに、なぜこれを選んだのだろう、と人事担当者として疑問に思っていました。なぜか非常に多いのです。しかも、上記のように、仲を取り持つ役柄で話す人が圧倒的に多いので、「ああまたか」と感じていたのは否めません。

地味でも、長くやってきたこと

 では、自分を表すのに最も説得力のあるエピソードとは何でしょう。これにも例があります。1番目は「長い間やってきたこと」です。人間の価値観は、長い時間のなかで繰り返されるなかで作られるものです。それを人事は知りたいと思っています。

 履歴書に書かれた功績がただのラッキーではなく、本当に根付いた能力や価値観に基づいた成功なのかどうか、そして入社してからも再現できるものなのかを見極めようとします。

 ところが、就活生は「ある試合」や「1カ月の留学」など、特別なイベントや、期間の短い話をとりあげがちです。自分を表現するエピソードを探すときは、まず初めに「一番長くやってきたこと」「長く過ごしてきた環境で起きたこと」からまず考えましょう。地味でもいいのです。

 今の時代にただ、1カ月インドにバックパック行ったエピソードを聞いても、「ああ苦しいのも含めて楽しかっただろうね」と感じるだけです。それよりも「4年間2つのサークルを掛け持ちして、それぞれ週3日、ほとんど休まず行った」ということの方がすごく根性があるな、と感じます。

 また、「普通は嫌だな」と思うことを頑張れたエピソードも刺さります。しかし、「好きなものを頑張った」エピソードを話す人の方が多いのです。これは、あまり良くありません。

 典型的なのは恋愛の体験です。「学生時代に一番頑張ったこと、は恋愛です。4回振られましたが、5回目で彼女ができました」のようなことを"ドヤ顔"で言う人がいます。しかし、恋愛を頑張るのはある意味当然ですし、恋愛を頑張れることと仕事を頑張れることは、別ものです。基本的に仕事は、8~9割は辛いか、面白くないことです。それをいかに面白がり、好きになれるか、ということがビジネスの上で大切なのです。

 その視点でいくと勉強も「長く続けた嫌なこと」かもしれません。しかし、実は「1人でやった話」もウケはあまり良くありません。具体的には受験、語学、資格の勉強などです。よくあるエピソードだと、個別指導塾のアルバイトの話。「個別指導塾の英語の講師として、中学生を受け持ちました。英語が苦手な学生でしたが、決まった教材だけではなく映画のセリフなどを活用したことで興味を持ってもらえるようになり、英語の順位が上がりました」

 このエピソードでは、誰か同僚などと協力して成し遂げた話が出てきません。

 しかし、会社の業務は大抵、チームでやります。チームワークを求められる現場で能力が発揮できるか、ということも重要なチェックポイントです。

 この「1人で成し遂げた」エピソードは、それ自体は悪くはないですが、情報量が足りない典型例です。エピソードを紹介するときに一工夫して周りの協力を得た内容を書くか、新しく「集団のなかでやったエピソード」を書いた方が面接官の求める情報を提供できる可能性が高くなります。選考を受ける会社が設定する「求める人物像」に対し、返答できるエピソードを探しましょう。
[日経電子版2016年3月2日付]

◆「就活」関連記事はこちら>>

【関連記事】
「採用担当者が落としたくなるエントリーシート 」
「君の志望動機は、なぜダメ出しされるのか?」

「日経College Cafe」のお勧め記事はこちら>>