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日本経済新聞「未来面」
ヤマトホールディングス社長からの課題
ライフスタイルを豊かにする物流とは?

日本経済新聞「未来面」 ヤマトホールディングス社長からの課題 ライフスタイルを豊かにする物流とは?

 日本経済新聞の未来面は、読者や企業トップの皆さんと課題を議論し、ともに作っていく紙面です。共通テーマは「革新力」です。今回はヤマトホールディングス社長・山内雅喜さんからの「ライフスタイルを豊かにする物流とは?」という課題について、学生の皆さんからの多数のご投稿をいただきました。 

 ここで紹介したのはほんの一部です。掲載できなかったアイデアを日経電子版の未来面サイトで紹介しています。

【課題編】「ライフスタイルを豊かにする物流とは?」

ヤマトホールディングス・山内雅喜社長「生活を変え、生活の変化に追いつく熱意」

 物流という言葉を聞いて、読者の皆さんはどのようなことを思い浮かべるでしょうか。私たちはこう考えています。物流には生活者のライフスタイルやビジネスを変える力があり、逆にライフスタイルの変化に物流が追いついていく必要がある。真逆のことのようですが、「豊かな社会の実現に貢献したい」という熱い気持ちが根底にあります。

 例えば、重いスキー板を担いで苦労している姿を見た宅急便のドライバーの気づきから「スキー宅急便」、「お願いした時間に荷物を持ってきてほしい」というお客様の声から「時間帯お届けサービス」が生まれました。「クール宅急便」は短時間の産地直送を実現し、農業や水産業の振興の一助となり、食文化の発展にも貢献できました。私たちは届けるモノがあれば、どこでも伺います。一部の自治体では「見守り、買い物サポート」が高齢者宅などの安否確認に活用されています。

 世の中がどんどん変化するなか、物流に求められる機能も高度化する必要があります。そこでIT(情報技術)、LT(ロジスティクス・テクノロジー)、FT(ファイナンシャル・テクノロジー)を融合し、さらに利便性の高いサービスへと進化させていきます。

ヤマトホールディングス・山内雅喜社長

 労働集約的な産業である物流業は、現場で働く人たちの「お客様の役に立ちたい」という感性を磨き続けないとイノベーションは生まれません。インターネット通販の急速な普及は現場の高い意識が支えています。「人の暮らしを幸せにする物流とは何か」「ライフスタイルを豊かにする物流とは何か」を絶えず考えて仕事に取り組んでいます。

 「宅急便」が生まれて40年になります。少子高齢化、地域創生といった社会的課題への対応や、労働力不足、再配達といった課題も存在します。一方で、まだ生活者が気がついていない潜在的なニーズをどのように掘り起こしていくべきなのか、宿題はたくさんあります。

 そこで読者の皆さんにお願いです。

 「物流」に期待する新しいサービスのアイデアを考えていただけないでしょうか。私たちが見落としているニーズはまだまだあるはずです。「物流」と「何」が融合すると、新たな価値を生み出すのでしょうか。社会的課題、利便性、環境問題などの宿題をいっしょに考えていきたいと思います。

(日本経済新聞2016年4月4日付)

◇    ◇

【アイデア編】

アイデア001 地域医療の要に
野口 裕太(上越教育大学大学院学校教育研究科2年、32歳)

 私には高齢の祖父母がいる。祖父は週に1度は通院しているが、祖母はそのたびに車に乗せ、病院まで連れ添っている。祖母もいつまで運転ができるか不安そうだが、病院で受診しなければ薬をもらうこともできない。祖母はやむなく耕作を放棄し、家事も後回しだ。地方の高齢化は深刻で、介護される人と介護する人がともに高齢者となる「老老介護」は悲惨な状態をもたらしている。この現状を「物流」と「IT(情報技術)」「FT(金融技術)」の融合で打開できないだろうか。患者の容体を医師に伝える機器や患者へのオンラインでの説明、必要な薬を宅配し料金を支払う仕組みなどが整えば、祖父は病院で4時間も待たなくて済む。

アイデア002 「ミステリー便」が来た
吉住 穂高(青山学院大学法学部3年、23歳)

 きょう、僕の家に楽しみにしていた荷物が来る。今回は何が届くのだろうか。宅急便の新サービス「日本全国ミステリー便」に期待が膨らむ。ユーザーは年間契約し月2回程度、荷物を受け取る。中身は全国47都道府県のどこかの特産の食材、菓子、加工品などのグルメ詰め合わせだ。どの都道府県の品物が届くかは不明。当然、毎回違う地域の物が来る。地方の名産品を取り寄せる人は増えているが、品物を自分で選ぶため未知のものを知る機会は少ない。「ミステリー便」でユーザーが未知の物を経験し、リピーターになってもらうことで、地域産業の発展にも結びつくだろう。当然、送り主は他の地域に負けないように自信の品物を送ってくるため、ユーザーも満足だ。おなかも心も満腹だ。次の配達はいつだろうか。

アイデア003 声も届ける「玉手箱」
木村 俊博(海陽学園海陽中等教育学校中学3年、14歳)

 僕は今、愛知県の全寮制の学校で生活をしている。2月に14歳の誕生日を迎えたが、当日は離れて住む祖父から宅急便でプレゼントと音声付きメッセージカードが届いた。カードからは無機質な機械音が奏でる「誕生日の歌」が流れた。確かにプレゼントはうれしかったが、せめて祖父の声を聞けたらなと思った。贈り主の声と荷物をいっしょに運ぶ宅急便があったらどんなに心が温かくなるだろう。荷物が届き、開けた瞬間に遠く離れた所にいる贈り主の声を聞ける玉手箱のような物流があったなら――。日本では核家族化が進み、人とのつながりが希薄になりがちだといわれるが、玉手箱のような物流がこうした事態を打開する鍵になればいいなと願っている。

【講評】ヤマトホールディングス・山内雅喜社長

 性別や年齢を超え、多くのアイデアをいただき、物流や宅急便への期待の大きさを感じました。今後も生活に寄り添いながら時代に合ったサービスを開発し続けていくことが私たちの使命であることを改めて実感する機会となりました。本当にありがとうございます。アイデアの中でぜひ、検討したいものが「地域医療の要に」です。実体験を基にした切実な思いに胸を打たれました。介護、地域医療に物流を通じてお手伝いできることは必ずあるはずです。現状は規制もありますので規制緩和に向けた問題提起も含め、今後積極的に取り組むべきテーマだと考えています。

 「ミステリー便」はとても楽しいサービスです。新しい発見や豊かな食生活につながるだけでなく、地域創生へ向けた魅力的な提案だと思います。そして「玉手箱宅急便」は当社の社訓の一つである「運送行為は委託者の意思の延長と知るべし」に通じるものがあります。お客様の思いを運ぶことこそが私たちの役割であることを再認識させてくれました。ほかにも具体的かつ事業性、社会性のあるアイデアが多く、その期待に応えるために私たちはより一層努力し続けていく必要があると痛感しました。

(日本経済新聞2016年4月25日付)

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