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日中間の誤解(1)私が日中学生会議に参加した理由とは

authored by 日中学生会議 実行委員会
日中間の誤解(1) 私が日中学生会議に参加した理由とは

 『「百聞」を論じ、「一見」して気付く夏~個から広がる相互理解の輪~』。これは今年開催の第35回日中学生会議の理念、スローガンです。実行委員長として、私がこの理念に込めた思いは決して「日中友好を目指す」というものではありません。なぜなら、人には好き嫌いがあり、個人と個人の友情だって築くことが難しいというのに、それが国家間の話になればより困難になることは当然です。

 私がこの会議を通して伝えたいことはただ一つ。それは「知る」ということです。私たちは日本について、中国についてどれ位知っているでしょうか。中国という国を知っていても、「中国人」をちゃんと知っているでしょうか? またどれ位日本を知っているでしょうか? どれ位「日中関係」について知っているでしょうか。

 相手を知り、己を知るという行為を2週間にわたって行うのが日中学生会議なのです。

日本で生まれた中国人としての思い

 私は日本に生まれた中国人です。でも、ずっと日本で育った訳ではなく、中国に8年、日本に13年暮らしてきました。私にとって日中両国は私の祖国であり、異国でもあります。日本にいた時も、中国にいた時も、周りにいる国民の方々はとても優しく温かく、幸運なことに二国間での転校や引っ越しにさほど苦労した思いがありません。しかし、それでも幼い頃から私の心を痛めたのは、両国お互いに対する偏見や誤解でした。

 中国にいれば十分に正確ではない日本の情報が伝えられ、日本に帰れば中国についての報道もまた同じように一面的なのものばかりでした。それによって、本来優しい国民同士の誤解が増え、ますます溝が深まるのを間近で見るのはとてもつらい経験だったと共に、なんとも悔しい思いをしました。この思いが今、私の日中学生会議の活動を続ける原動力となっているのです。

日中学生会議の活動で見えたこと

 私と日中学生会議の出会いは完全な偶然でした。2015年3月頃、日中関係改善という目標にすこしでも近づくため、卒業後の進路を大学院進学に決めました。ところが、社会を身近に感じるにつれ、果たして70年たっても解決されない両国のこの複雑な関係を自分は改善するようなことができるのか、と自分の夢に対して漠然とした不安を覚えていた時期でもありました。そんな時に第34回日中学生会議をインターネットで見つけたのです。これからの社会を担う日本と中国の学生が、今の日中関係をどのように捉えどのよう考えているのかを知りたいと思ったと同時に、自分の背中を押す思いで参加を決めました。

 会議が始まって、まず驚いたのが、自分たちの圧倒的な知識と認識不足です。中国と日本における現状について理解していても、なぜそうなったか、その文化背景、歴史背景に対する理解はほぼありませんでした。私が所属する安全保障分科会で領土問題を扱う時、まず両国の「領土」に対する価値観がまったく違うのを実感しました。他にも農業問題に対しては、隣国でありながら地理的差異が予想以上にあったのも驚きです。

日中学生会議での議論の様子

 違いを感じるのは討論の時だけではなく、共同生活の時もありました。例えば、日本の参加者のほとんどは洗濯物を自分たちの部屋で干すのに対し、中国の参加者たちは男女ともに下着を含めて同じ洗濯場で干していました。これには日本参加者が戸惑っていました。逆に、食べ物は温かい状態で出てくるのが当然という文化で育った中国参加者は、揚げ物も冷たいままで出てくるお弁当に非常に困惑していました。

 しかし違いばかりかといえばそうではありません。議論では言語やカルチャーショック、認識の食い違いに苦しみながらも理解し合える部分も多くありました。休憩を挟んでいる時には共通のアニメの話やお互いの恋愛話をする参加者。ご飯を食べている時や、分科会の議論が終了した夜の空き時間に何時間も人生相談をし合う参加者。文化交流会では、言葉は通じなくても、みんなで歌い踊り楽しい時間を過ごしました。みな未来に対する期待と将来に対して不安を感じたりするのは国は違えど同じなのです。

 両国の相違は確実にあるが、違いを知り、また同時に同じであると実感できたのは日中学生会議に参加したからです。

第35回日中学生会議

 第35回日中学生会議は中国開催であり、今年で30周年を迎えます。言わずと知れた中国の首都北京、中国随一の金融都市である上海、そして中国北部とは文化も言葉も違う南の大都市広州で様々な中国を体験できるプログラムになっています。日中学生会議のメインイベントは8月に開催される2週間に渡る討論合宿ですが、5月から本会議に向けて約3カ月各分科会で準備を始めます。この期間で自分たちはなぜこの議題を討論するのか、自分たちはどこまで相手と己を知っているのかを見つめなおす期間でもあります。

 日中学生会議はただの2週間の"国際交流"ではありません。魂と魂で語り合い、知恵と知恵のぶつかり合いで絆を結ぶ場なのです。冒頭にも書きましたが、私が日中学生会議を通して目指すのは決して日中友好ではない。自分と自身が知っていると思っている相手を本当の意味で"見る"というこの経験を多くの方々にしてもらいたい。それが私の目指す日中学生会議であり、日中友好への第一歩なのです。

日中学生会議
 日中学生会議とは1986年に設立し、その後30年間続く歴史ある団体です。第35回日中学生会議は2016年8月7日から8月25日の約2週間半、中国の北京、上海、広州で開催されます。日本の学生31人と中国の学生31人の計62人が、討論だけでなく、フィールドワーク、文化交流、観光、そして共同生活を行います。この熱い会議を一緒に創り上げる学生を全国から募集しています。締め切りは4月19日(エントリーはこちらから)。日中学生会議では、日中両国の参加者が、日中間の諸問題を、社会的潮流にとらわれず主体的に判断しようとする姿勢を養うことを目的としています。さらにはその諸問題に対する考察を国際社会の問題へと敷衍することで、広く国際的な視野・知識を身につけた人材を輩出することを目指しています。
 今年度のテーマを「『百聞』を論じ、『一見』して気付く夏 ~個から広がる相互理解の輪~」と設定。情報量が多い今日ですが、その中でしっかりと疑問に思っていることを相手と面と向かって議論する。さらに実際に中国に行って、自分の身を以て相手を理解し同時に自分、真の日本を伝えてゆきたい。そして、日中学生会議を通し多くのことを学び感じた学生個人が、その経験を伝えることで相互理解の輪が広がることを願っています。
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