内装工事のデザインに込めた思い。　そして大失敗も

ForuCafeを開くと決めてから、物件を決めて、人材を集めて、次は店舗作り。私はもちろん、それまで店舗なんて作ったこともなければ建築デザインのけの字も知りませんでした。店舗作りの基礎的な本を読みあさり、建築の専門学校に通っていた友人に手伝ってもらい、まずは全体像のイメージを固めるところからスタートしました。

「ターゲットは20代前半女性のフレンチトースト専門店。女子会やデートで使ってもらえるようなおしゃれな内装なの！　メインカラーはボルドー。シャンデリアが付いていて、アンティーク調の家具が揃っている少しシックなイメージ。キッチンは、ホール全体が見渡せてお客さんとの距離が近くて反応もしっかり見られるオープンキッチンで！」

私の夢と妄想はとどまる所を知りませんでした。

メインカラーのボルドーは、私の原点でもあるオーストラリアのホームステイ先の壁の色のイメージでした。オーストラリアでの修行時代、私は週に1回、世界各国から来るホームステイ先のゲストに料理を振る舞っていたのです。そのときに「"食"は人と人とを繋ぐ、言葉の壁を越えるんだ」と身をもって体験し、「この感動を発信したい！」と考えました。そんな私の原点でもある思い出の場所の壁の色が、印象的なボルドーだったのです。

お客様、従業員、経営者の視点でレイアウト

店舗の全体像を決めたら、次に客席のレイアウトを決めました。たった9坪の店舗でどの範囲をキッチンにして、何席取るか。フレンチトーストのお皿とドリンク、カトラリーセットが置ける適度なテーブルの大きさ、お客様が無理なく通れるテーブルとテーブルの間の幅、従業員がストレスなくスムーズに動けるキッチン内の冷蔵庫・冷凍庫・製氷機・シンクの配置......。お客様が居心地よく利用していただけるお客様満足度からの視点、従業員の作業動線もしっかり考慮した従業員満足度からの視点、そして収益性の高い経営満足度からの視点、この3点のバランスを考慮してレイアウトを決めました。

内装は、はじめ設計業者さんと施工業者さんを別々に依頼しようと考えていました。しかし資金的に余裕がなく断念。我流で内装デザインを考えました。ウェブ上で内装のイメージに合う国内外の飲食店の素材を拾ってきてイメージを確立、そしてその写真をもとにイラストを描いて施工業者のおじさんに力説しました。壁のクロスはどの素材にして、床の素材はどれにするか。1000種類近くある素材の中からこれだという1つの素材を選ぶ作業は骨の折れるものでした。優柔不断な私でしたが、これで決断力が鍛えられました。

家具選びは友人と母親に

続いて家具選び。家具選びは専門学校に通う友人と母親に手伝ってもらいました。私の思い描くイメージを伝えて「これと同じようなリーズナブルな家具を探してほしい」と無茶振り。ほとんど全てネットで探してもらいました。候補のリストを作ってもらい、そこから私が選択をする作業。友人はセンスが良く、「これだ！」と私のイメージに合う商品を探してきてくれてとても助かりました。代官山にある素敵な家具屋さんとの出会いもあり、なんとか予算内で全ての家具を揃えることができたのです。キッチンのコールドテーブルや製氷機、シンクなどもネットと厨房機器販売店の価格と機能を地道に比較して購入しました。

8月、いよいよ施工開始。真夏の日差しがじりじりと暑い季節でした。とにかく3カ月以内にオープンさせたかったので、「スピード感をもってお願いします！」と施工業者さんに無理なお願いを。頭の中のイメージが形になっていく日々の変化にワクワクが止まりませんでした。

施工も終盤、キッチンができあがってコールドテーブルや製氷機の搬入予定の日、「平井さん、コールドテーブルとか届かないんだけど！　どうなってるの！」。荒々しい声で施工業者さんから電話がかかってきました。私の凡ミスで配送希望日を間違えていたのです。それを伝えると「こっちは無理なスケジュール組んでやってるのに、そんなミスされると困るんだよ！」と怒られて、ひたすら平謝りをしたという日もありました。

全ての工事が終了して、引き渡し当日。言葉に言い表せない感動が湧き上がってきました。夢に描いていた私のお店がついにカタチになったのです。「たくさんご迷惑をかけましたが、本当にありがとうございました！」。施工業者さんにうるうるしながら感謝の気持ちを伝え、いよいよ自分のお店を開くのだという実感が湧いてきました。

その日の夜、出来上がったお店で一人、作業をしていると「450万円も借金をして作ったけど、お客さんが来なかったら、上手くいかなかったらどうしよう......！」と、突然不安と恐怖に襲われたことを覚えています。（寝たら次の日には忘れていましたが。。。笑）