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経営者ブログ READYFOR代表取締役起業を目指す後輩たちへ

米良はるか authored by 米良はるかREADYFOR代表取締役
経営者ブログ READYFOR代表取締役 起業を目指す後輩たちへ

 日本でも起業する若者が増えているようです。私が起業するに至ったきっかけは何だったのか。その一つはある興奮を覚えたためでした。

ユーザーに見てもらえなければ意味がない

 慶応大学3年生のときに、現在、東京大学准教授を務める松尾豊氏と出会いました。スタンフォード大学から東大に戻ってきた松尾氏と、私が所属していた大学のゼミの先生とのご縁により、学生がビジネスモデルを考えるコンテストのような試みがなされました。ある企業の方からお題を与えられ、その題に沿ったビジネスモデルを提案。その良しあしを判定するものです。

 私はそのとき、「一体誰のためにやっているのか。ユーザーさんに見てもらえないのでは意味がないではないか」といった疑問を抱きました。学生の分際で自分のアイデアを世に問うというのもおこがましい話ですが、目の前にいる人だけの判断が本当に正しいのか。実際に世の中に受けるかどうかという肝心なところが見えてきません。自分が一生懸命考えたアイデアが世の中に出ないのはすごく不幸なことだと思ったのです。

 松尾氏はその当時、人と人との関係を可視化する人物検索サイトを開発・運営しており、私もそのサイトの運営に参加しました。サイトの名称を考え「スパイシー」と命名したり、サイトのデザインを変えたりしました。インターネットのウェブについてはあまり知らなかったですけど、自分が出した提案が翌日にはサイトに反映され、それを見ている人がたくさんいるという体験をしたんですね。そのときの興奮こそが、私の起業の源になっています。

 自分がこうなんじゃないかと思ったことが、即座にユーザーさんの目に留まる。その内容が良かったか、悪かったかもデータで分析できるわけです。これがインターネットなんだと実感し、とても面白みを感じました。

 こんなことが世の中にあればいいなあとか、自分はこんなこともできるかもしれないと思ったその感覚や気持ちを、ある一人に否定されたことによってアウトプットできなかったとしたら、それはとても不幸なことです。もしかしたら世の中にはチャンスを逃している人がたくさんいるんじゃないかと思い、その思いを世の中で実現するお手伝いをしようと、今、READYFOR(レディーフォー)を営んでいます。

 レディーフォーを始めてからこの4年ぐらいの間に、3Dプリンターや小型無人機「ドローン」といった新しい製品が続々と登場してきました。ものづくりや流通のコストもどんどん安くなってきて、昨日思いついた誰かのアイデアが明日の世の中を変えることもあり得ない話ではなくなっています。

若者が動かなくて、誰が動く

 学生の起業家は経営者としてのスキルが低いのは当たり前だし、私も会社を4年ほど経営していても、いまだにわからないことがたくさんあります。ただ、起業すること自体のハードルは以前に比べ下がっていると思いますし、起業したい人にとって、チャレンジしない理由はありません。

 若いころは本当の意味でのリスクも少なく、体力もあれば、給与が低くてもがむしゃらに働けます。本当に失うものを抱えている人はそんなにたくさんいるわけではないのではないでしょうか。逆に今はビジネスモデルがどんどん変わっていく中でチャンスは広がっているし、若者が動かなくて、誰が動くんだと思います。もちろん、起業以外のことでもいいわけです。自分のやりたいことに果敢にチャレンジしてほしいですね。

 誰か喜んでくださる方のために何かの価値を提供して、その対価としてお金をいただくことがビジネスではないかと、私なりに捉えています。新しい世界でビジネスをするには、本当に価値がなければお金をいただけないし、企業も成長しません。その種はいろんなところに落ちています。

 誰のために何の価値を提供しているのかがわからないで働くというのは、とても悲しいことではないでしょうか。誰のために何の価値を提供しているのかということに向き合い続ければ、どのようなところで働いていても仕事ができる人になれる。新しいことだってきっとやっていけると思います。
[日経電子版2016年3月14日付]

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