実践を軸にすれば半年でも習得可能に!
留学経験なしからのマルチリンガル(5)
秋山燿平の留学経験なしからのマルチリンガル
前回は言語学習に取り組む際のマインドセットについてお伝えしました。今回は具体的な学習法についてお伝えします。言語の種類や割ける時間にもよりますが、私は7カ国語を学んだ経験上、半年で話せるようになることも可能だと考えています。では具体的にどのように進めていけば良いのか、さっそく見ていきましょう。
※ここでの「話せる」の基準は「その言語で楽しく会話ができるレベル」と認識してください。
薄い参考書と単語帳で「会話に必要な最低知識を身につける」(目安:~1カ月)
初めにやるべきことは、「会話に必要な最低限の知識を身につける」ことです。簡単な参考書と単語帳を手元に用意しましょう。初めに参考書を開きます。前回も書いたように、そのまま頭から読み進めるのはあまり良くありません。まずはその言語の全貌を知り、これから学ぶ言語がどのようなものか把握するべきです。以下のような項目に注目して参考書に目を通しましょう。
・文字はアルファベットか?
・発音は日本人にとって難しいか?
・出てくる単語は日本語や英語と共通点があるか?
・SVO型? SOV型?(日本語のように動詞は最後か、英語のように先か)
・動詞はどのように活用するか?
・過去形はどのように作るか?
・疑問文はどのように作るか?
ゴールが見えない状態でがむしゃらに勉強すると、どうしても挫折しまいがちです。自分がこれからどんなことを学ぶのか、ぼんやりでもゴールを把握しておくことは大切です。
最低限の必要な知識は200個ほど
次に単語帳も使いながら、最低限の知識のインプットに入りましょう。まずは「自分が外国人と簡単な会話をする際に日本語で何と言うか?」を考えてみてください。そこで出てきた表現と単語が、覚えるべきものです(例えば「私は大学生で、薬学を専攻しています」と言うなら、それを外国語で何と言えばいいのかを覚えればいいのです。初期段階で「心理学」や「哲学」のような単語を無理して覚える必要ありませんよね)。人によって個人差があると思いますが、共通して以下のようなものが挙げられるのではないでしょうか。
・自己紹介
・「そうなんだ」「すごいですね」のような相槌
・日常使う超簡単な動詞、名詞、形容詞
・疑問文とその受け答え
・「~と思います」の言い方
これは私がまず覚えるものです。参考書は、前半に「月の名前」「曜日の言い方」「1~10000までの数字」など、規則性のある単語が大量に羅列されていることが多いですが、これをこの段階で全て覚えようとすると、ほぼ間違いなく挫折します。参考書や単語帳の中から自分が必要だと思った単語・表現に該当するものだけをノートに書き写して覚えましょう。相槌など、参考書に出てこないものはネットで調べてもいいと思います。ちなみに、私が最近韓国語を覚える際にまず書きだした単語や表現は約200個でした。
外国人とのやりとりを通じて文脈の中で覚えていく(目安:1~4カ月半)
「学ぶ言語がどのようなものか?」が分かり、「会話をする上で最低限必要な知識」が身についたら、次の段階です。もう、実際に外国人と話してみましょう。とはいっても「どうやって外国人と知り合うんだ」と疑問を抱く人が多いかと思います。まずは外国人とやりとりを始める方法についてお話ししましょう。具体的に方法は2つあります。
1.国際交流パーティなど、オフラインのイベントに参加する
2.言語学習アプリを使う
東京や大阪など大都市圏に住んでいる場合は、国際交流のイベントが頻繁に行われていますので、そこで外国人と知り合いましょう。東京と関西(大阪・京都)なら、私が2年前から運営している国際交流イベントもあります。(*日本人は学生限定です。)他にも、「Meetup」というサイトには国際交流系のイベント情報が多数掲載されていますし、大都市圏なら探せばいくらでもこのようなイベントは開催されています。
しかし、地方に住んでいたり、イベント参加に抵抗があったりする人には、言語学習アプリがオススメです。無料のものも多く、オンラインで簡単に外国人とのチャットや音声通話が可能です。私は「HelloTalk」というアプリを使っていました。アクティブユーザー数が多いので、好きな時にいつでも会話ができます。現在、自分でも外国人との交流を容易にするサービスの開始を検討しているところです。
自分専用の、会話必須事項ノートができる
上記のような方法で外国人と知り合ったら、自分が覚えたフレーズを使ってとにかく話してみましょう。「伝わった」という感覚を得ることが大切です。たった1カ月勉強しただけの言語が少しでも伝わったら嬉しいと思いませんか? またこの中で分からない単語や「これが言えたら伝わったのに......」という表現がたくさん出てくると思います。
これらを単語帳や参考書で確認し、ノートにメモしたりして覚えていきましょう。こうやって覚えた事項は忘れにくいし、無駄なものは一切ありません。これを繰り返すことで、自分の表現の幅が徐々に広がっていきます。また伝わったという「短期目標の達成」が頻繁に実現しているので、モチベーションがかなり高まり、楽しくなって、さらに話せるようになるための勉強をしたくなるでしょう。
検定を受けてみよう(目安:4カ月半~6カ月)
この段階になると、もう特定の会話であれば楽しく話せるようになっていると思います。次のステップである語学検定の受験に移りましょう。会話を通じて身につけた「知識に偏りのある」言語能力を、検定の勉強を通じて世間で求められる水準に引き上げます。検定は開催時期が決まっているのでタイミングよく受けられるとは限りませんが、ある程度会話ができるようになってから受けることが大切です。受験勉強のようなインプットが多少増えますが、既に会話を通じて「伝わった喜び」を味わっていると、滅多に挫折することはありません。1カ月~1カ月半集中して対策本をやり込み、合格を目指しましょう。
どの検定を受けたらいいのか
メジャーな言語であれば検定には、「~語技能検定」という日本人向けの検定と「世界共通の検定」の2種類あることが多いですが、受けるべきは後者です。日本人向けの検定は、実戦で使わない重箱の隅をつつくような問題が多く、無駄なコストがかかってしまいがちです。世界共通の検定を受けて実用力を引き上げましょう。具体例は以下の通りです。
英語:TOEIC、TOEFL
中国語:HSK
韓国語:TOPIK
フランス語:DELF
スペイン語:DELE
まとめ 簡潔にいうと、コンセプトは
「会話に必要な最低限の知識を身につけたら、すぐに実戦に移る。ある程度会話ができるようになったら検定を受け、偏った知識を是正する」ということです。こうすることで挫折を防ぎ、確実に言語習得することができるでしょう。
私の場合、それぞれの段階において、以下の期間を費やしました。
1.会話に必要な最低限の知識を身につける(~1カ月)
2.すぐ実践に移り、ある程度会話ができるようになる(1カ月~4カ月半)
3.検定を受け、偏った知識を是正する(4カ月半~6カ月)
今回は概観をお伝えするのに留まりましたが、次回は私が半年で中国語の検定で最上級(HSK6級)を取得するまでの過程を実例とし、具体的にご紹介します。
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