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日本に広まる民泊って何?

日本に広まる民泊って何?

 最近よく耳にする「民泊」。ホテルや旅館など普通の宿とどう違うのでしょうか? イチ子お姉さんとからすけの話を聞いてみましょう。

イチ子お姉さん 個人が自宅の空き部屋などに有料で旅行者を泊(と)める民泊(みんぱく)が広まっているわ。増える外国人旅行客の受け入れに一役買いそうよ。
からすけ 知らない人の家に泊まれるのは楽しいかもね。外国人に日本の暮らしを知ってもらえそうだし。でも問題はないのかな?

訪日客の宿泊先に期待

 イチ子 民泊は言葉の通り「民家に泊まること」よ。

 からすけ じゃあ、友だちの家に泊まるのも民泊だね。

 イチ子 ええ。でも最近、ニュースでよく聞く民泊は、ホテルや旅館のように宿泊代を払(はら)って泊まることを指すことが多いわ。インターネットの仲介(ちゅうかい)サービスを利用する方法が急増しているの。

 からすけ ネットで?

 イチ子 ええ。2008年に米国のAirbnb(エアビーアンドビー)という会社が始めたサービスで、欧米を中心に世界中に200万もの物件があって、約1700万人が利用しているそうよ。

 からすけ そんなに?

 イチ子 ええ。同じようなサービスを手がける企業もどんどん増えているわ。部屋を提供する側は空いている部屋を有効活用できるし、旅行者はホテルなどより宿泊料を安くできるし、その国の地元の人々の暮らしを体験できる楽しみもあるの。

 からすけ 姉ちゃんも海外旅行で民泊したよね。

 イチ子 そうね。インターネットでホテルを探すように、仲介サイトから部屋の写真や価格を比較(ひかく)しながら宿泊先を選べたの。過去に泊まった人からの評価も出ているから安心して利用できたわ。日本でもこのサービスが普及(ふきゅう)してきたのよ。

 からすけ でも、自分の家に知らない人が来るのは心配じゃないのかな。

 イチ子 そうね。からすけのように感じる人は、日本では多いみたい。海外では物件の82%がホームステイ型といって、自宅に旅行者を招き入れるスタイルが主流なの。でも日本では自宅のシェアは40%よ。住宅の狭(せま)さに加え、よその人を家に入れるのに抵抗(ていこう)がある人が多いの。

 からすけ ボクの部屋はかなり汚いから、できれば見られたくないな。

 イチ子 代わりに、日本では別荘(べっそう)やマンションの空室などを貸し出す独自のスタイルが発展しつつあるわ。企業が商機を見いだして参入しているの。ただ、日本で本格的に民泊が広がるにはまだまだ課題が多いのよ。

手続きなどルールづくり進む

 からすけ 確か、法律違反になることもあるんだよね?

 イチ子 日本では旅館業法という法律があって、有料で人を宿泊させるには一定ルールを守って許可をとる必要があるの。でも、民泊では多くが許可を受けないまま営業しているわ。騒音(そうおん)やゴミ出しなどのルールを守らない宿泊者がいたり、マンションに知らない人が出入りすることでセキュリティーを心配する住民もいるわ。

 からすけ でも面白いサービスが禁止されちゃうのはもったいないな。

 イチ子 今、政府は安全に民泊ができるよう規制改革を進めているの。まずこの春から民泊をカプセルホテルなどと同じ「簡易宿所」として営業許可を申請(しんせい)できるようにする見通しよ。さらに家主がいるホームステイ型については、営業許可を取らなくても、自治体に届け出を出すなど簡単な仕組みで手がけられるようにするそうよ。羽田空港に近い東京都大田区や大阪府などは国家戦略特区(キーワード)で民泊に乗りだしたわ。運用しながら問題点を改善していくんですって。

<キーワード>
 国家戦略特区 地域限定の規制緩和。政府、自治体、企業が一堂に会して協議し、煩雑(はんざつ)な手続きを迅速(じんそく)に進め経済成長を加速する。
 シェアリングエコノミー 家や車などをシェアする共有型経済。欧米を中心に広がっており、日本でも市場規模が462億円(18年度)になるとの試算も。

 からすけ へぇ。日本は何でも規制しちゃうのかと思ってたよ。

 イチ子 それはね、外国人旅行者が増えて民泊を広める必要があるからなのよ。昨年日本を訪れた外国人の数は1973万人と前の年の1.5倍に増えたの。一方で東京や大阪のホテルの稼働率は80%超とほぼ満室で、客室が足りないの。日本のビジネスマンが出張に使うビジネスホテルも海外からの旅行客で埋(う)めつくされている状況よ。2020年には東京五輪を控(ひか)えていて、これではとても旅行者を受け入れきれないわ。

 からすけ だから民泊をもっと増やして、外国人を泊めてあげるんだね。

 イチ子 その通りよ。今年は民泊を広げるためのルールづくりの年になるわ。民泊を足がかりに、自家用車のシェアサービスなどシェアリングエコノミー(キーワード)が今後、急速に広まって、世界中の人とモノがインターネットを通じて飛び交うようになるわ。ただテロや感染症拡大などの危険もあるから、様々な声を聞いて安全な態勢をつくることが大切ね。

日本でも古来、多くの物語に登場

渋谷教育学園渋谷中学高等学校の真仁田智先生の話 約20年前、英国を旅した時に「B&B(ベッド・アンド・ブレックファスト)」という民泊を利用しました。宿泊先の家族との会話や日常生活の体験は、今でも鮮明に覚えています。
 日本でも民泊が普及しようとしていますが、全国各地の昔話には、見知らぬ旅人が戸をたたく場面からはじまる物語が多くあります。人助けの親切が報われた、招かざる客が災いをもたらしたなど様々です。
 「鉢木(はちのき)」という話は、能を大成した観阿弥・世阿弥の作といわれる謡曲(脚本)で、歌舞伎の題材にもなった人気の演目です。全国を僧に扮(ふん)して行脚していた幕府の執権・北条時頼が、大雪の夜に通りかかった民家に泊まり、貧しい家の主人のもてなしを受ける場面から始まります。幕府の御恩と御家人の奉公の関係を表す「いざ鎌倉」の語源になった物語で、情にあふれたいい話です。

[日経プラスワンから転載、日経電子版2016年4月2日付]

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