日本経済新聞 関連サイト

OK
[ liberal arts-大学生の常識 ]

デジタル社会の光と影(18)大学生が人工知能に興味を持たない理由

小川和也 authored by 小川和也アントレプレナー、フューチャリスト
デジタル社会の光と影(18) 大学生が人工知能に興味を持たない理由

小川和也のデジタル社会の光と影

 人工知能に関する特集をするということで、とある大学の学生新聞から取材を受けた。学生新聞でも人工知能の特集を組むタイミングが訪れたことを実感するとともに、当テーマを大学生がどのように捉えているかの実態を探りながら応答した。インタビューを受けながら、逆にインタビューをしてみる。

 なぜこのような企画をしたかといえば、「メディアで人工知能の話題が増えた割には、大学生はまだ知識が不足している」ゆえとのこと。

 世間では賑わい始めたようでも、まさしくそれが実態だろう。大学生に限らず、人工知能をはじめとしたテクノロジーの潮流に敏感な反応を示しているのは、仕事や興味の矛先がそこにある人がほとんどで、広く一般化しているとはまだ言い難い。俗にいう新しいものを好んで摂取するイノベーター、流行に敏感なアーリーアダプター層が積極的に情報収集を行なっている段階だ。

差し迫って必要な知識ではない?

 どうして知識が不足するのか、そもそも論を聞いてみた。それに対しては、「差し迫って必要な知識ではない」「現実感が乏しく他人事のように感じるから」なのだと言う。興味が薄ければ知識は身につくものではないから、もっともな結果か。

 「まずは目の前の生活で精一杯。人工知能は夢物語のようだし、自分にはあまり関係ないかな」。これがありがちな大学生の本音だそうだ。でもそこに、一石を投じたい思いで大学生記者は取材に来ている。

 もちろん個人差があることを前提に、これから訪れる未来よりも、目の前の現実の力学に左右される大学生像は想像に難しくない。「大学生はモラトリアム」という昔からある考え方も、いまだに途絶えていない。楽しい時期を遠慮なく謳歌することは、個人的には大賛成だ。しかし一方で、いまの大学生が働き盛りの真っ只中に迎える変化を意識せず、モラトリアムだからと刹那的に過ごしてしまうのはもったいないなと思う。

 まずは社会人になってみて、経験を積みながら自分自身の成長軌道を作って行くにしても、大学生という人生の地点だからこそできる人生の舵取りのプランニング、思考や感性のトレーニングというものがある。特にこれから訪れる変化は、多くの人が想像している以上に劇的なものだ。あとの祭りにならないために、いまこそ未来志向であるべきなのだ。目の前の現実は足腰を重くしがちだけれど、そのような未来がやってくることもまた現実だ。

 学生新聞の取材もそういう思いで受けていたので、大学生がなるべく自分ごと化できる話にフォーカスした。人工知能に関する話は相当広域に及び、かつあまりにも深い。

仕事選びをきっかけに、人工知能や社会について想像しよう

 大学生活の締めくくりとして否応なしに問われる進路、仕事選びをきっかけに、人工知能やそれがとりまく社会について想像を膨らますことが一番自分ごとにしやすいだろう。やはり仕事、さらにその扉となる就活に関わることにはみな関心がある。

 大学生記者から「これからの人工知能社会を見据えて、どのような仕事を選ぶべきでしょうか」という質問を受けたが、それは「ロボットが仕事を奪う~消滅する職業とは」「就職人気ランキングを信じるリスク」などでも言及している通り、これまでの常識を疑う必要がある。

いまの土台が次の成長へ

 どんな仕事を選ぶべきか、どんなスキルを磨くべきかについて、目の前の固定観念だけで判断すると、それは将来通用しなくなる。これから10年、20年、30年のスパン、それぞれで起こる大変化は夢物語とはならない(10年どころか、1年スパンの変化はますます大きくなる)。いま大学生のみなさんは、働き盛りの最中に環境激変の連続を味わうことになる。

 いまの土台が次の成長、次の土台がその先の成長を促すことを踏まえると、30年後にいきなり自分を変えることは簡単ではない。だからこそ、モラトリアムだと油断せずに、いまから未来の社会を見据えて自分自身を育てて行く。興味の有り無しに関わらず、人工知能は社会や仕事のあり方を変え、誰にとっても他人事だと言い切れなくなる。この夢物語を、やがて訪れる現実と捉え直してみよう。まずはそこからだ。