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[ liberal arts-大学生の常識 ]

ニュースの見方(1)「就職協定」違反を
どう考えたらよいか?

戸崎肇 authored by 戸崎肇大妻女子大学教授・経済学者
ニュースの見方(1) 「就職協定」違反をどう考えたらよいか?

戸崎肇の「ニュースの見方」

 今回から新たな連載を開始します。皆さんが関心を持ちそうな話題を取り上げて、論じていきたいと思います。第1回は「就活」を取り上げます。今年も早くから実質的な選考に動く企業が多かったようです。学業にも影響が及ぶ事態をどう考えたらよいのでしょうか。

ルール違反をどう受け止めるか

 今年の選考開始は6月ですが、ディスコの調査によると内定率は5月1日時点ですでに29.1%、そして6月1日時点では54.9%に達していました。協定違反はどうしても防ぐことができないようですが、採用をあせる企業に入ることが本当にいいことか考えどころでしょう。優秀な人材をしっかりと見極めたいと考えている企業であれば、焦って人材の囲い込みなどしないと受けとめたらどうでしょうか。まわりがもう決まったからと言って、焦る必要はありません。

周囲に振り回されないようにしよう

 さまざまな考え方があると思いますが、就職協定を破る会社は、実際の企業活動でもルールを守らない危険性があるかもしれません。今では、個人的なレベルでの判断ミスも、その企業を破綻に追い込むような事態を招きかねない時代です。

 ルール違反といえば、三菱自動車が日産自動車の傘下に入るというショッキングなニュースが飛び込んできました。この電撃的な提携の引き金となったのは、三菱自動車が犯した燃費データの改ざんでした。三菱自動車の管理職職員が子会社に燃費に関するデータを改ざんするように指示したことが明るみになり、三菱自動車の経営は大きく揺らぎました。以前にも三菱自動車は経営危機に陥ったことはありましたが、その時には同じ三菱系の銀行、商社、重工業に助けられました。しかし今回は、それらはいずれも経営的に厳しい状態にあって手を差し伸べることはできず、結局、日産の力を借りなければならなくなったのです。日産としては、小型自動車が好調な三菱自動車を傘下に収めることで、自らの経営基盤を強固なものにすることができます。

 今後、三菱自動車に日産の手法がどこまで導入され、徹底されるのかが注目されます。少なくとも、三菱自動車の社員にとっては将来が読めなくなったことは確かでしょう。このように、いつ何時、企業が大きな試練にさらされるかわからない状況になっています。だからこそ、コンプライアンス(遵法性:いかに法律やルールを守っているか)は極めて重要なことであり、就活においてもその企業の将来性を判断することがある程度できるのではないかと思います。

再チャレンジの機会もある

 採用試験を受け続ける皆さんや、来年以降に受ける皆さんは、就活を「楽しむ」ことが大切です。余裕があればこそ、皆さん自身の魅力を十分に引き出すことができるでしょう。今は新卒の段階で行きたいと思っている会社に入社することができなくても、その後にいくらでも再チャレンジできるような時代になりました。いったんある会社に就職したら、一生をその会社のために尽くすという「就社」の時代は良くも悪くも終わりつつあります。そもそも入社する前に、その会社の正確な姿などわかるわけがないのです。結果的に、第一志望ではない企業に就職してよかった、ということも多々あるはずです。

いずれチャンスが来るはず

 そうした心の余裕をもって面接にも望みましょう。「圧迫面接」をする会社もありますが、その場でうまく言えなくて失敗したとしても、そのような会社は、そのほとんどが将来、皆さんがその会社の顧客になることも考えていないような企業だと思いましょう。気にすることはありません。皆さんの方から願い下げにすればいいでしょう。ただし、自分の側でも、「本当にこの会社に入りたい」という熱意が全く伝わらず、その結果として相手の苛立ちを招いたとしたら問題です。この点はしっかりと「復習」してみなければなりません。

 それに色々な企業の人に会う機会がもてるのもこの時期しかありません。「出会いの楽しみ」もあります。時間的・体力的にきつくても、できるだけ多くの企業を回ることをお勧めします。このことがいい人生経験となり、新たな可能性を開いてくれることにもなるでしょう。

面接官の頭の中を考えよう

 面接では、面接官の心境も推し量るような「気遣い」も必要です。同じようなことを何度も聞かされる面接官は相当に疲弊しているはず。奇をてらうことは望ましいことではありませんが、自分のオリジナリティを出すことで相手の興味を引くことは重要です。

 その上で是非、皆さんに聞いてももらいたいことがあります。アルバイトの経験やサークルの経験は、聞き手にとっては結構退屈なものです。よほどうまくアレンジして話さないと、「またこのパターンか」と面接官に受け取られてしまいかねません。それだけこの話題で勝負しようという学生が多いのです。留学についても、単なる「語学留学」ではあまり魅力がありません。そこで語学ではない「何を学ぼうとしたのか」が重要なのです。「語学留学」は日本人に特徴的なもので、通常海外の人々にとって留学というのは「その国でしか学べない特別なものを学ぶ」ことなのです。ですから、留学したというだけではだめです。その上でどのような努力をしてどのような能力を勝ち得たかをアピールできるようになりましょう。

 大学入試とは違って、就職試験は「理不尽なもの」と割り切りましょう。合格に関する合理的な基準はそもそも設定しづらいのですから。もちろん、こういったからといって、努力しないことの言い訳にはなりませんが。

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