日本経済新聞 関連サイト

OK
[ liberal arts-大学生の常識 ]

デジタル社会の光と影(19)ロボット関連企業社長が語る
成長を実感できる産業で働こう

小川和也 authored by 小川和也アントレプレナー、フューチャリスト
デジタル社会の光と影(19) ロボット関連企業社長が語る成長を実感できる産業で働こう

小川和也のデジタル社会の光と影

 就職活動をする上で、重要な選択基準となるのが仕事、会社、業界の将来性であろう。就職をする時点でその会社や業界が好調であったとしても、それが未来永劫続くとは限らない。実際、大手企業があっさり破綻したり、あまり注目されていなかった業界が時流とともに急成長する事例は無数にある。就職はあくまでもスタートラインに立つためのきっかけ作り、そこからの職業人生の方が圧倒的に長い。だからこそ、目先の印象にとらわれず、将来性にこだわるべきではないだろうか。

 将来性を重要視している就活生ならば、最近話題のロボット業界に興味を持つ人も多いはずだ。しかしながら、ロボット業界の実態、その将来性についての情報が足りずに、いまいち踏み込み切れない学生も多い。そこで、ロボットに関連するソフトウエア開発、メディア、マーケティング事業などを手掛けるロボットスタート社の代表取締役社長を務める中橋義博氏に、ロボット業界の現状と未来について話を聞いた。

ロボット業界の市場規模は

小川 そもそも、現在のロボット業界の市場規模はどの程度あるのでしょうか。

中橋 いま、ロボットが何かと話題ですが、その市場規模はここ数年でとてつもなく大きくなると言われています。政府による「ロボット新戦略」(2015年1月公表)によれば、現在のロボット市場はトータル6600億円。内訳は製造業向けロボットで6000億円、非製造業向けロボットで600億円となっています。そして、「ロボット新戦略」では、このロボット市場を2020年までに、製造業向けロボットを2倍の1.2兆円、非製造業向けロボットを20倍の1.2兆円とする目標を掲げています。2020年には製造業と非製造業のロボットが同じ数値になるということですね

小川 現状で6600億円、これから5年ほどで製造業向けロボットが6000億円、非製造業向けロボットの方はさらに伸びしろが大きく1兆円以上の成長余地があるわけですね。

中橋 まさに、5年で20倍成長が見込まれる非製造業のロボット市場は要注目です。

小川 「非製造業のロボット」とは、具体的にどのようなロボットなのですか。

中橋 聞き慣れないかもしれませんが、これはいわゆる「サービス分野のロボット」と呼ばれるロボットのことです。大雑把にいうならば、介護、受付業務、パーソナルモビリティ、掃除ロボット、コミュニケーションロボット、レスキューロボット、ドローン、ヒューマノイドなどなど、つまり工場で使われるロボット以外のロボットを指します。

小川 PepperやRoBoHoNといったコミュニケーションロボットがメディアを賑わし、お掃除ロボットを導入している家庭も増えてきています。既にサービス分野のロボット市場は立ち上がりつつあると言えるのかもしれませんね。ロボット業界の市場規模は、2020年以降も急拡大すると思うのですが。

販売開始が発表されたシャープのモバイル型ロボット電話「RoBoHoN」

中橋 経済産業省の「ロボット産業市場動向調査結果」(2013年7月公表)では、将来の国内ロボット市場規模を2020年2.9兆円、2025年に5.3兆円、2035年には9.7兆円と予測しています。これは国が出している将来予測ですから、とてつもない新産業が登場し、期待されていることがわかるかと思います。現在、1兆円に満たない市場が、20年後に10兆円市場に成長するということですからね。

小川 10兆円規模にまで成長すると、一大産業ですね。

中橋 ちなみに国内市場における10兆円産業ってどんな規模かといえば、携帯電話で10兆円、銀行業界で20兆円、総合商社市場で30兆円、自動車業界で60兆円。大雑把なデータですが、10兆円がいかに大きな市場なのかはわかるかと思います。

小川 10兆円ですら通過点でしょうからね。いまは巨大な自動車産業だって、50年前はまだモータリゼーションの波の最中。乗用車が普及してきたと思ったら、あっという間に60兆円産業。ロボット産業もインパクトの大きな成長を遂げるとすると、その成長を後押しする背景には何があるのでしょうか。

中橋 ロボット業界が発展する背景として、特に少子高齢化があります。これらが進む社会になりますので、ロボットなしには日本の成長そのものが危ういかもしれません。そして、ロボットのある世界を実現できる技術的なバックボーンがものづくりに長けた日本にはあると思います。

東京オリンピックで世界にアピール

小川 2020年の東京オリンピックも影響しますか。

中橋 東京オリンピックまでに国内の様々な場所でロボットの利用が進んでいきます。海外の人が日本に来て、ロボットを体験することになると予想されています。その実現に向けてロボット業界の方々は日々頑張っているんです。

小川 そんなロボット業界に就職しようと考えた場合、どのような選択肢があるのでしょうか。

中橋 ロボット業界といっても、産業用ロボット(工場向けなど)から、サービス分野ロボット(介護やコミュニケーションロボットなど)まで、サイズも形も用途も全く異なる様々なロボットが存在する広範囲な業界になっています。また、ロボット企業の種類も、上場大手メーカーから、未上場のベンチャーまで多様なロボット企業が存在しています。産業用ロボットは上場企業が多く、サービス分野ロボットはベンチャーが多い状況です。中でもコミュニケーションロボットについてはスタートアップ企業がたくさん登場しています。

求められるスキルとは

小川 職種についてはどうでしょうか。

中橋 職種についてはエンジニア、営業、管理など幅広い募集が行われており、ロボット業界に限らず一般的な職種の募集があると考えて良い状況です。もし、目指す業界種別、企業種別、職種が定まらないのであれば、インターンを募集しているロボット企業もありますので、そこで実際に経験をしてみるのもよいでしょう。

小川 ロボット業界で活躍するために、学生時代にどのようなスキルを磨いておいたらよいでしょうか。

中橋 もちろん、職種によって求められるスキルは異なりますが、どの職種にも共通して言えることは、新しいことに取り組む姿勢が重要ということです。特にサービス分野ロボットについては、まだこれから成長する産業と位置づけられており、日々新しいことへの挑戦をするという会社が多いと思います。同じことをルーティンで繰り返す能力よりも、日々違うことにチャレンジする能力が求められます。また、海外の技術を知ること、日本の技術を世界にもっていくこともこの業界には重要です。その点で語学力は高いに越したことはありません。スキルとはちょっと関係ないですけど、学生時代にしかできないことをやりきっておいてほしいです。多分ロボット業界は忙しいところが多いと思いますので、遊ぶなら遊ぶで今のうちに(笑)。

小川 ロボット業界に入ると、どのような夢が広がりますか。

成長産業で自己成長

中橋 何はともあれ、成長産業で働くことが自身の成長につながると思います。

小川 その自己成長が、将来どんな夢を持っても、その実現への武器になる。それこそが、ロボット業界の魅力かもしれませんね。

中橋 いま業績の良い業界が今後数十年に渡って成長するかは誰にもわかりません。逆に、衰退産業を選んでしまうと将来的に仕事の幅が広がりにくいのは明らかでしょう。そうなってしまうと、自分を磨けませんからね。

小川 その意味でも、今後成長が期待される業界を選ぶことは何より重要ですよね。成長産業には資金が集まり、優秀な人がたくさん集まります。そのような環境の中で、市場の成長、会社の成長、自身の成長を実感できることは社会人として幸せなことです。

中橋 そう思います。「ロボット業界」は日本に残された数少ない成長産業です。安倍内閣により設置された「ロボット革命実現会議」。この「ロボット革命」というキーワードが日本の国策として位置づけられる時代になりました。ロボット業界は政府がお墨付きの成長産業と言えます。人類の夢の実現に向けて、ロボットに関わる仕事をする......素敵だと思いませんか? ぜひ学生のみなさんに来てもらいたい業界です。

【デジタル社会の光と影】
(1) 就職人気企業ランキングを信じるリスク
(2) ロボットが人の仕事を奪う~消滅する職業とは
(3) 自動車産業の主役がIT企業になる日
(4) 優秀な人材はイノベーションの渦の中心に集まる~魅力ある仕事とは
(5) "将棋対決" 人vs.コンピューター~"ついに"勝ったのは...
(6) 頻繁化する墜落事故~ドローンの危うさと可能性
(7) ロボット義足で世界記録! 研究者が東京五輪にかける夢
(8) 火山学の権威に聞いた テクノロジーに振り回されない生き方
(9) 建築家、隈研吾さんが語る建築の未来とは
(10) いま必要な「教育のギアチェンジ」とは?
(11) 東ロボくんが示してくれた、これからの教育の方向性
(12) 金融とITの融合「フィンテック」とは?
(13) 人工知能社会では右脳の働きが重要になる?!
(14) 鈴木大地スポーツ庁長官に聞く 東京五輪とテクノロジー
(15) 未来志向の仕事選びとは
(16) 「地域×IT」で地方創生を
(17) 仕事選びの基準に「自分の中にある好奇心」を加えよう!
(18) 大学生が人工知能に興味を持たない理由