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早稲田大ワークショップ2016学生映画監督にインタビュー
~これからの仕事・人生は?

早稲田大ワークショップ2016 学生映画監督にインタビュー~これからの仕事・人生は?
authored by 早大ワークショップ受講生
この記事は、早稲田大学の2016年度学部横断型授業「プロフェッショナルズ・ワークショップ」の日本経済新聞社実施講座を受講した学生による作品です。昨年に引き続き、今年も4月から6月まで講座を実施しました。昨年同様、「日経カレッジカフェのコンテンツを作成しよう」という課題のもと、約40人の学生がメディアの仕組みや取材、記事の書き方について学び、6グループに分かれて実際に独自記事を作成しました。紹介する記事は6月2日に行われた最終発表会で最優秀賞を獲得したグループのものです。他のグループの作品も順次、掲載します。なお、文章表現の一部などはカレッジカフェ編集部で修正しています。
【早稲田大ワークショップ2016リポート】
最優秀賞「学生映画監督にインタビュー~これからの仕事・人生は?」
優秀賞「就活は農家へ!?~チャンスは農業界にあり」
「留学は魔法の体験ではない その裏側知ってますか?」
「これで飲み会は大丈夫!? ノミノミクス3本の矢」
「『ぼっち』で何が悪い たまにはひとりで外に出ませんか?」
「口約束は当たり前? すべてのバイト戦士に幸あれ」

5班「ラッキー7」 丹治 太郎、大竹亮輔、坂本英佑、廣谷優果、今里友紀、春原太樹、玉澤恵理

 日本三大映画祭の一つ、沖縄国際映画祭。4月24日の最終日、那覇市の国際通りに敷かれた鮮やかなレッドカーペットを、ひとりの大学生が満面の笑みで踏みしめた。8回目を迎えた沖縄国際映画祭の「U-25映像部門」で、グランプリと沖縄県民賞を受賞したのは早稲田大学商学部3年の倉持治さん(20)。両賞のダブル受賞は異例のこと。しかも受賞作の「さんさんごご」は彼の初監督作品だ。大学から映画の世界に足を踏み入れた倉持さんは、今までどんな人生を歩み、これからをどう生きようとしているのか。

初監督作で異例のダブル受賞

中江審査委員長から「シーサー」のトロフィーが倉持さんに手渡された

 「ぼくは家族を知りません。でも、その少年と、女性と過ごした2週間たらずの短い記憶は、間違いなく、僕にとっての家族でした」(映画「さんさんごご」より)

 エンドロールが流れると、会場が拍手の渦につつまれた。涙を流す観客もひとりやふたりではない。「既存のスタイルにとらわれない、日本映画に新しい風を吹かせてくれる人材であると確信した」。映画監督で、第8回沖縄国際映画祭U-25映像部門の審査委員長である中江裕司氏は倉持さんに最大級の賛辞を寄せた。数千人の前で迎えた閉会式で、あいさつに立った倉持さんは、作品が多くの人の支えなしには完成しなかったことを強調した。

映画サークルと「偶然の」出会い

 倉持さんは中学では野球、高校ではバレーボールと、青春をスポーツに注いだ。「大学では何か、今までやったことがないことをしたい」。そんな軽い気持ちで、たまたま友人に誘われて早稲田大学の公認映画サークル「シネマプロダクション」に入会した。映画は父親の影響で昔から好きだったが、「あの時、あの友人がいなければ、いま映画を撮っていたかどうかはわからない」と笑う。

 入会当初から監督志望だったが、先輩の作品では俳優として主演もこなすなど、サークルではいろいろな役割を担った。「初めはみんなで作った映画を、仲間内で観て楽しめればいいな、くらいの感覚だった」。そんな映画への意識が変わり始めたのは、昨年末のこと。初めて監督として仲間と共に作り上げた作品「さんさんごご」が、大学内イベントの第28回早稲田映画まつりで観客賞を受賞したのだ。

撮影中、笑顔を見せる倉持さん

 自分が想いを込めて作った作品が評価されたことで、「自己満足」から「観てもらう」意識に変わった。「今は作品を褒められたときが、一番嬉しい。やっぱり映画は観てもらえることが幸せなんだなぁと。でもそのためには、いい映画を作らないと」。たくさんの人に観てもらい、楽しんでもらうことの喜びを知り、初めての作品で沖縄国際映画祭にエントリーすることを決めた。

 受賞作の「さんさんごご」では、家族をテーマにした。「家族はなにがあっても、関わりは続く。どこにいようと関係性がある限り、物語が生まれていくのではないかと思う」。映画では偶然知り合った男女と子供の3人が、漠然と「家族」を形作る。物語が進むにつれて、ひとりひとりが「三々五々」独立して、生きていく。

 こだわりは3人が「ちゃぶ台」を囲むシーン。「ちゃぶ台には裕福ではないけれど、温かい家族の姿が感じられる」。自らの幼少期、家族で囲んだちゃぶ台の思い出と、大好きな映画「男はつらいよ」のワンシーンとを重ね合わせ、「家族を結びつける象徴」として描いた。

ロケ先で寝た駅のベンチは固かった

 初めて取った学生映画のメガホンは、想像以上に苦難の連続だった。何をするにも「学生」という身分が災いし、大人の理解が得られない。物語の舞台となるアパートも、不動産屋に掛け合うが、ほとんどが門前払い。7軒回ったあげく、最終的にはサークル員の両親の好意に甘えた。制作予算は約10万円。大学に通いながらのアルバイトで調達する。ロケにかかる交通費や宿泊費は節約を極め、スタッフに泣いてもらうことも。遠征時の寝床はネットカフェや車内。時には駅のベンチで寝袋にくるまることもあった。

 ただ、そんな苦労を乗り切れたのは、どんな時でも支えてくれた仲間の存在だった。「この作品はひとりの才能ではなく、みんなとの絆があったからこそできたものと思います」。その言葉に応えるように、「さんさんごご」の制作スタッフも「倉持は応援したくなるキャラクター」「私たちが支えてあげなきゃいけないという気持ちになる」と笑みを浮かべた。

皆で撮れた映像を確認するのが一番の楽しみ

 自主制作の学生映画は、商業映画のように人をお金で動かすことはできない。スタッフはもちろんボランティア。セットや小道具、演者すらもサークル員たちの「自前」だ。そこは「良い作品を作りたい」という共通の想い、監督への強い信頼でのみ成り立つ世界。「ここにいてよかったなと思える現場にしたい」は彼らへの感謝の言葉だ。

 作品作りにこだわるがゆえ、仲間と衝突することもあった。「さんさんごご」の脚本を手がけた佐久間啓輔さん(21)とは、撮影が進むにつれ撮りたいものに差異が生じた。撮影中は何度も口論したという。でも、「いい作品をつくりたいというベクトルは同じ」と信じ、互いの方向性をすり合わせた。

 「二人が口論しているときは、みんなでご飯食べて休憩していました。」とスタッフのひとりは笑って振り返る。周りの理解があってこそ、作り上げられた作品だった。

「ずっと映画に関わりたい」

 倉持さんは現在、大学3年生。周りの友人たちは、次第に就職活動を意識し始めている。「みんなに夏に映画を撮ろうって声をかけたら、『インターンがある』と言われてしまって。ああ、もうそんな時期なのかと」。

 入会当初はプロの映画監督の道に進む事など全く考えられなかったが、現在は業界から声がかかるほどの存在になった。「僕にとって、映画はもう立ち止まれないもの。形はどうあれ、死ぬまでやり続けたい」。監督か、または一般企業に就職して別の立場で映画にかかわるのか。決断の時期が迫っている。

外で昼食を取りながら倉持さん(左)に話を聞いた

 今は100%映画を撮ることしか考えていない。「映画は楽しむもの」。次回作の構想を語る倉持さんは本当に生き生きとしていた。次に目指すは今年の「第29回早稲田映画まつり」だ。12月23日と24日に早稲田大学大隈記念講堂で開催される。

 倉持さんは、作り手と受け手の両方の立場から純粋に映画の楽しさを享受している。好きな
こと、やりたいことを純粋に楽しむ。将来を不
安に思い、型にはまった生き方や働き方を選んでしまう大学生には忘れがちなことだ。彼が夢中になって映画に取り組む姿、その生き方そのものが、我々にはまるで映画の一場面のように、素晴らしいものに感じられる。

本物の家族ではない3人が、丸いちゃぶ台を囲んで家族を作る(「さんさんごご」より)

【作品情報】
「さんさんごご」(2015年作品、31分)
監督:倉持治
脚本:佐久間啓輔
主演:佐久間啓輔 三村ことみ 三村正太郎
制作:早大シネマプロダクション
「第28回早稲田映画まつり」で本選出場、観客賞を受賞。
「AOYAMA FILMATE 2016」に選出。
「第8回沖縄国際映画祭クリエイターズ・ファクトリー U-25映像部門」でグランプリと沖縄県民賞(観客賞)を受賞。

「シネマプロダクション」HP
早稲田映画まつり
Twitter : @waseda_film_fes
Facebook : @waseda.film.fes

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