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お悩み解決!就活探偵団2017就活とお金100人調査
「貯金底ついた」過酷な実態

authored by 就活探偵団'17
お悩み解決!就活探偵団2017 就活とお金100人調査「貯金底ついた」過酷な実態

 就活は財布との戦いでもある。行きたい企業にエントリーするのはタダでも、説明会会場までの足代や面接用の服装、時間をつぶすカフェ代などが徐々に懐に打撃を与える。就活探偵団では「就活とお金」をテーマに、2カ月にわたってアンケートを実施した。100人からの回答と個別取材を通じてわかった、就活生の厳しい懐事情と節約のための涙ぐましい努力を公開する。

宿泊はカプセル、夜行バスで節約

 アンケートの結果を見ると、就活にかける費用の総額について、回答者の半数以上が10万円以上を費やしたと答えた。まだ就活を続けている回答者もいるため、就活を終えるころにはさらに増えるだろう。回答者の6割以上が、「交通費・宿泊費」に最も費用がかかると答えている。企業へのエントリー数は、約6割の学生が20社以上と答えている。手書きの願書の時代と違って、ネットで一斉エントリーが可能になった分、説明会や面接などにかかる必要経費も増大していることがわかる。

 人気のある大手企業は、本社を東京に構えていることが多い。説明会などは地方で開かれても、たいていは選考が進むにつれて会場が東京のみとなる。そのため首都圏外に住む学生にとって交通費の圧迫は無視できない。

 アンケートに答えてくれた岡山県在住の男子学生Aさんは、「行きたい企業を絞れていない時期に東京や大阪で説明会があったため、交通費で貯金が足りなくなった。内容が似た就活セミナーを地元で探し、受ける企業は早めに絞った」とコメント。就活は、数を打てば当たる、という側面もあるだろうが、物理的に手当たり次第はできないことを物語っている。福島県に住む男子学生は「ホテルは低価格なカプセルタイプに泊まる。手作り弁当を持っていき、1食分の食費を浮かした」という涙ぐましいエピソードを寄せてくれた。

 大阪大学大学院博士課程の女子学生Bさん。今年の1月に就活を始めて4月に終了。6社に応募して、外資系、日系メーカー1社ずつから内定をとった。就活では大阪から東京まで合計4回往復し、交通費は10万円にのぼった。中でも、本命だった外資系のメーカーは1次面接から数えて東京で3回選考が行われたため、宿泊費も含めて5万円ほど費やした。

 企業が負担してくれる交通費には上限があったため、夜行バスを使って節約していたが、「寝心地が悪くて眠れず、体がつらかった。渋滞で到着時刻も遅延した。休める場所はカフェしかなく、やはりここでもお金が飛んでいく」。すでに就活を終えているBさんだが、「就活が長引いていたらと思うとぞっとする」と振り返る。

 東京や、首都圏に住む学生はすでに拠点があり、定期券を使えるなど交通費や宿泊費でのアドバンテージはある。しかし懐事情が厳しいことに変わりはない。東京地区私立大学教職員組合連合の調べでは、私立大学生の月平均の仕送り額は、2015年度まで、17年連続で減少している。東京在住だからといって有利とは言い切れない。

ストッキング200円か500円か

面接と面接の合間も、毎回カフェで時間をつぶしているとお金がかかる(東京・丸の内、ベンチで休む就活生)

 アンケートを見ても、就活に必要な服装一式や、情報を入手するための本などに出費がかさみ、カフェでの休憩代も痛手だという意見が多く寄せられた。「リクルートスーツは買わずにあるもので済ませた」「昼食・飲み物代、交通費などを見越して3月までに貯金を10万円作っていた」。「2駅くらい歩いて交通費を節約している」など、爪に灯をともして就活する学生は多い。

 早稲田大学の女子学生Cさん。医療系コンサルティング会社と不動産会社からすでに内定を得ているが、現在も就活を継続中だ。Cさんは、身近な小物選びでも工夫する。「ストッキングは安いものより、やや高めのものが伝線しにくく長持ちする。結果的に安上がり」と話す。就活を始めたばかりの頃は、3足で200円の製品を買っていた。だが、「1回使用したらすぐに穴が空く。そこで1足500円のものに変えたら、10回は使えることに気づいた」。

 学生たちはどのように就活にあてる費用をまかなっているのか。一つは親からの援助だ。大阪在住で同志社大学に通う中田成果さんは、アパレルメーカーから内定が出たがまだ就活を継続している。「東京に行く際は、就活で知り合った人や友人に頼んで泊まらせてもらっている」といい、東京での選考でホテル代は1円も使っていない。それでも、これまで70社にエントリーし、就活に使った費用は交通費を中心に30万円にのぼる。費用の多くは「親に支援してもらっている」という。

 とはいえ就活は、学生にとって将来を決める大事な分岐点だ。取材に応じてくれた中田さんの父親は、「必要以上の出費はしていないと思うし、本人の希望で就活をしている。そのための費用は仕方がない」と心情を語ってくれた。

老後の貯金を崩した母

 まだ内定が出ていない都内有名国立大の女子学生Dさんは、「お金を無心したとき、母親からは『老後の貯金を崩した』と言われた」と話す。口調は冗談だったというが「半分は本気だったと思う。悪いなという気持ちになり、『ごめんなさい』と伝えた」。

 就活費用を捻出するもう一つの方法はアルバイトだ。しかし就活中はどうしても時間的な制約があるため、就活前よりも収入が減るケースがほとんどのようだ。

 教育関係の企業に内定をもらっているが、まだ就活は継続中の都内有名私大の女子学生Eさんは、切実な悩みを打ち明ける。「就活中は面接がいつ入るかわからないためバイトの予定を入れられない。翌月のシフト希望を出せないから、収入のめども立たない。中にはバイト先の融通が利かず、バイトを辞めざるを得なかった友人もいる」。

 「就活前までは週2、3回入っていた塾講師のバイトを1回に抑えざるを得なかった。収入が減り痛かった」と振り返るのは、都内有名私立大の男子学生Fさん。Fさんは大手生命保険にすでに進路を決めたが、「学生は勉強が本分のはず。就活で金銭的な苦労を強いるのは納得がいかない」と指摘する。

説明会「何度も開かないで!」

 Fさんは続ける。「企業は似たような説明会を何度も開かないでほしい。学生側には『説明会に多く出席すれば、その分採用に有利になる』という都市伝説が一部で信じられている。半信半疑でも、『もし本当だったら』と思うと、欠席はしづらい。インターネットで説明会の動画を公開するなどの対応を望みたい」。彼の言うとおり、就活とお金の問題では、採用側の配慮次第でクリアできることも多そうだ。

 まだこれから進路を決める学生にとって、交通費は痛い出費であり続ける。どうにか費用を抑える方法はないのか。バス、飛行機、電車を組み合わせた料金比較サイト「格安移動」を運営するLCL(東京・中央)の長島英孝氏は、行き帰りで移動手段を変える方法を提案する。「例えば行きは、集中力を高めるために新幹線や格安航空会社(LCC)を使ってコンディションを整え、帰りは我慢してバスにするのはどうでしょう」。

飛行機も意外に安い

 交通手段で最も安いのはバスだが、乗り心地はよくない。ゆったりと座れるシートもあるが、コストは上乗せされ、価格のメリットは低くなる。新幹線は時間が読めて快適だが、料金はバスの倍以上かかることもある。ディスカウントもほとんどない。

 長島氏は、方法によっては飛行機も検討の価値があるとアドバイスをする。「意外と利用が少ないのが飛行機。特にLCCは区間によってはバスよりも安くあがる。快適度合いはそれほどでもないが、時間が短いので問題ない。あまり知られていないが、LCCは金曜日の夜にキャンペーンを発表するので、安いチケットを手に入れるチャンスがある」という。

 6月1日の就活解禁から2週間あまり。すでに進路を決めた学生は、旅行に向けた資金稼ぎでバイトに励んでいるだろうか。これから内定を取る学生は、もう少し時間とお金を就活に費やすことになる。

 就活期間はどの学生にとっても、精神的に肉体的に、そして経済的にもきつい日々だ。就活探偵団のメンバーも、かつては就活生だった。今回のアンケートや取材を通して「お金ほんとになかったな」とほろ苦くも懐かしい記憶がよみがえってきた。就活は費用対効果で測れるものではないが、自分なりにやり切ることができれば、これまでの努力や出費にもきっと満足できるだろう。
(夏目祐介、結城立浩、北爪匡、岩崎航)[日経電子版2016年6月16日付]

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