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シューカツ都市伝説を斬る!「内定」ではない「最終合格」
姿を変えたオワハラ

authored by 曽和利光
シューカツ都市伝説を斬る! 「内定」ではない「最終合格」姿を変えたオワハラ

 リクルート、ライフネット生命などの人事責任者として20年以上、累計で2万人を超える就活生を面接してきた「プロ人事」、曽和利光さん。「学生は、根拠のない思い込みで失敗している」という曽和さんが、面接官の本音を語ります。今回は「姿を変えたオワハラ」です。

オワハラはなくなった?

 去年の採用戦線で他社の内々定辞退を迫る企業が相次いで、大きな話題となった「オワハラ」。心配している就活生も少なくないことでしょうね。一部には残っている可能性はあるんですが、今年はほとんどないとみています。しかしながら、内々定の受諾を迫る企業側の動きがなくなったというわけではありません。いわば姿を変えて続いているオワハラの実態をひもとくと、企業側の内々定者確保の裏事情も透けてきます。

 なぜオワハラがなくなったのか。1つ目の理由は、オワハラの実態が広く知られたことです。他社の内々定の辞退を迫るようなことを少しでもすると、「あの企業はオワハラをする」という評判が立ち、いわゆるレピュテーション(評判)のリスクが生じてしまうようになりました。2つ目は、去年と今年で採用活動の時期が変化したことです。去年は大企業の選考開始が8月だったので、その前に中堅・中小企業の採用活動が進み、結果として大企業への乗り換えを防ぐための中堅中小のオワハラが顕在化しました。今年は大企業の選考が6月からなので、それが一巡するまで採用活動を待つという中堅中小が増えました。

 もう1つの理由としては、単純に売り手市場化が進んだことがあると思います。そのために企業が内々定を出しても、辞退する学生の比率が高まりました。企業側が、辞退阻止をあきらめてしまうような状況が普通になってしまったんですね。ともかくそんな理由から、去年あったようなオワハラは影を潜めています。しかし、やはり企業側としては、優秀な学生にはどうにかして他社を辞退して自社に来てもらうように仕向けたい。そこで企業側は新しい戦略を導入するようになっています。ある意味でオワハラが巧妙化して残っているともいえるでしょう。

最終合格は内々定ではない

曽和利光(そわ・としみつ) 1971年生まれ。 京都大学教育学部卒。リクルート人事部ゼネラルマネージャー、ライフネット生命総務部長などを経て2011年、主に新卒採用を対象にしたコンサルタント事業の人材研究所を設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新報社)、「『できる人事』と『ダメ人事』の習慣」(明日香出版社)などがある。

 ではその姿を変えたオワハラとはどんなものか。以前の常識からいけば、最終面接に合格すれば、それは内々定を意味するケースが大半でした。ところが最近では、この「最終合格」と「内々定」の概念を分離している企業が増えてきています。最終面接に合格した学生を、こうけん制するのです。「あなたの人材のレベルはうちの会社が採りたい水準に達しています。ただし採用には枠があります。あなたがうちの会社に来てくれると決めたら教えてください。決める前に枠が埋まってしまったらごめんなさい」。これはオワハラと同様、学生に意思決定を促す効果はありますよね。早期に採用計画を達成できるか見極めたい企業からすれば合理的な戦略だと思います。

 そうまでして企業が内々定者を早期に確定したがるのはなぜでしょう。採用担当者は、採用数を計画の人数にぴったり合わせることを求められます。多すぎても少なすぎてもいけないんですね。ぴったり合わせるのは、実はけっこう難しいのです。例えば採用計画が100人の会社があったとして、95人まではほぼ決まっていて、残り5人の枠を30人ぐらいの候補者が争うような状態だとします。30人の候補者がみな優秀で、これまでに最終合格させた中から辞退してくれる学生がいたらうれしいな......と思うことさえザラにあります。内々定辞退を伝えたときに妙にあっさりとした対応だったときなどは、そんなケースでしょう。

 企業は確実にきてくれる学生数を確定するために、早く返事を欲しがるのです。学生も、就職したい企業の最終面接を突破したら、できるだけ早くに受諾の連絡をしたほうがいいということになります。そうしないと、「最終面接は突破したのに内々定は得られない」という残念な結果になりかねません。

補欠から脱出するために必要なこと

 就活生が気をつけるべきポイントはもう1つあります。就活生の中には、選考過程がスローモーションのようになかなか進まない、最終面接を受けさせてもらえないという人もいるでしょう。これは、すでに採用計画達成にメドをつけ、辞退者の有無を確認している典型的ケースです。計画を満たせると明らかになれば、その後はどんな面接結果であれ、落としてしまうわけです。スローモーションの学生がもしいるならば、それはいわば「補欠」だということです。

 たとえ補欠だとわかっても、努力の余地はあります。早く面接してほしいという意向を企業側に伝えれば、配慮してもらえるかもしれません。補欠組から脱出するには、とにかく早く選考を進めてほしいとアピールすべきです。

 中堅中小企業の採用について、補足しておきます。百人単位で採用する大企業であれば、内々定者の人数で多少のブレがあることは、想定の範囲内です。ですが、中堅中小の場合は、例えば10人なら10人、多くても少なくてもダメだというケースが多くあります。企業の経営体力を考えても、それは仕方ないことですよね。中堅中小はそういうギリギリの採用活動をしているので、辞退をされたときのダメージは大企業と比べて計り知れないほど大きいのです。中堅中小への就活をしている学生は、内々定の重みが大企業とかなり違うので、しっかり判断してほしいですね。
[日経電子版2016年6月23日付]

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