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日中間の誤解(2)高校生で参加して分かった、中国社会との向き合い方

authored by 日中学生会議 実行委員会
日中間の誤解(2) 高校生で参加して分かった、中国社会との向き合い方

 こんにちは。慶應義塾大学法学部政治学科3年現代中国政治専攻の御器谷(みきや)裕樹です。高校生3年のときに2013年第32回参加者(情報分科会)、2014年第33回実行委員(歴史分科会・広報)、2015年第34回実行委員長を務めました。

参加したきっかけと初めての本会議

 私が中国に興味を抱いたのは中学時代の漢詩の授業でした。選択授業で中国語と文化の基礎を学んでいたのですが、漁船衝突事件をきっかけに日中関係の政治的な側面に興味がわきました。しかしながら高校では中国政治専門の先生はいらっしゃらず、情報源は本、新聞、講演会で限定的。

 そんな高校生の私を歓迎してくれたのは日中学生会議でした。OBである中学時代の恩師の紹介で主催の講演会を見学したり、当時の実行委員主体の討論会に挑戦したりするうちに、日中関係を中国の学生がどう考えているのか議論を通じて知りたくなり、日中学生会議の参加を志しました。参加後は年上の大学生に混ざった唯一の高校生として先輩の勉強方法を必死に吸収しました。

御器谷裕樹さん

 そうして迎えた本会議の2週間では文化交流や共同生活の中で感じることも多く、中国人の学生と仲良くなって考え方を理解しようと努めました。中でも最も印象に残っているのは議論で、中国側参加者が日本人参加者の意見に対して指摘した「中国社会の発展を単に人と金が多いことに見出すのは誤解だ」という意見でした。知らず知らずのうちに抱く主観を排除して、丁寧に中国社会に向き合うことの大切さを学びました。

実行委員、実行委員長としての経験、挫折

 2年目には歴史分科会のリーダーとして、両国の歴史認識の違いに関する議論で双方の持てるあらゆる知識を総動員して熱のこもった議論ができました。(お互いに)相手の意見に賛同できない点が多々あったものの、学生だからこそできる徹底的な議論を重ねることができたことは深く印象に残っています。

 議論で自信を得た私でしたが、一方で広報としては目標を達成できずとても悔しい思いをしました。これは私が翌年実行委員長をやるときのモチベーションになりました。改めて団体の意義や活動内容に向き合い、4人で始まった実行委員会を少しずつ大きくしていきました。個人的には3年目の集大成として、団体としては戦後70周年に日本開催を主催するにあたり、広島を開催地とすることに強いこだわりを持ちました。さしあたりOB・OGや顧問の先生方から多額の寄附金とご助力をいただいてやっと実現しました。

 夜な夜な電話会議をして企画を詰めるなど体力的にはぼろぼろになりながらも、失敗は許されない日本開催を成功させることができたのはとても大きな自信になりました。このような成功はなにも私が頑張ったからではなく、実行委員一人ひとりが役割を一所懸命果たそうとした、その熱意がもたらしたものでした。私としてはそんな実行委員会を代表することができたことはとても幸せなことです。

中国に向き合う意味

 慶應大学の、ある高名な名誉教授は中国地域研究の神髄を、社会の「意識下にある無意識を分析することにある」とおっしゃいました。日中学生会議では議論の時間以外にも文化交流や共同生活の中で何気ない会話から、そのような根本的な価値観を意識することができます。私が実際に中国人と政治の話をして最も驚いたことは、社会的に望ましい政治の役割が違うことでした。日本や中国社会がどうあるべきか、ということ以上になぜそれが現在の形態を呈しているのかという根源的理由を分析することが重要だと感じました。

 私は数十年も日中間に横たわる諸問題を学生が議論してすぐに解決できるとは思っていません。それよりも議論を通じて相手の思考を構成する社会背景について洞察すること、さらにそのような洞察をする自分自身の価値観を形成する社会的要素をも分析することに意義があるのではないでしょうか。

 30年を迎える日中学生会議の長い歴史の中では、天安門事件や伝染病の流行により、実際に開催できなかった回もありました。しかしながらそうした困難をOB・OG一人ひとりの頑張りによって乗り越えて、少しずつ年月を積み重ねたからこそ社会的に認められ、数々の団体の後援を受けるほどになったと思います。好き嫌い関係なく実存する課題である日中関係を長期的に安定化させることは次代を担う日本人の若者が取り組む意義があることなのです。

日中学生会議のその先 北京大学留学―私の「現在地」

 私は中国人の親戚を持つわけではなく、日中学生会議本会議が中国での最長の滞在期間です。中国語も中学時代にはじめ、現代中国政治を志したのも高校生時代でした。そんな中国初心者である私が自分なりに模索することができたのは日中学生会議のおかげです。

 今年の9月から私は北京大学に1年間交換留学し、中国国内の国家公務員制度や行政を学ぶことで中国の内政に関する理解を深める予定です。中国の外交政策など行動を観察・分析するのであれば日本にいても勉強できますが、国の内側ではどんな体制や制度のもと日々意思決定から執行までがなされているのかという内なる原理・力学を知る必要があると私は考えています。このように中国人の目線で中国政治を理解する試みは厳しい挑戦になるでしょうが、日中学生会議の経験が心の支えになるでしょう。

日中学生会議
 日中学生会議とは1986年に設立し、その後30年間続く歴史ある団体です。第35回日中学生会議は2016年8月7日から8月25日の約2週間半、中国の北京、上海、広州で開催されます。日本の学生31人と中国の学生31人の計62人が、討論だけでなく、フィールドワーク、文化交流、観光、そして共同生活を行います。日中学生会議では、日中両国の参加者が、日中間の諸問題を、社会的潮流にとらわれず主体的に判断しようとする姿勢を養うことを目的としています。さらにはその諸問題に対する考察を国際社会の問題へと敷衍することで、広く国際的な視野・知識を身につけた人材を輩出することを目指しています。
 今年度のテーマを「『百聞』を論じ、『一見』して気付く夏 ~個から広がる相互理解の輪~」と設定。情報量が多い今日ですが、その中でしっかりと疑問に思っていることを相手と面と向かって議論する。さらに実際に中国に行って、自分の身を以て相手を理解し同時に自分、真の日本を伝えてゆきたい。そして、日中学生会議を通し多くのことを学び感じた学生個人が、その経験を伝えることで相互理解の輪が広がることを願っています。
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