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シューカツ都市伝説を斬る!内定ホルダー、「就活後」に落とし穴も

authored by 曽和利光
シューカツ都市伝説を斬る! 内定ホルダー、「就活後」に落とし穴も

 リクルート、ライフネット生命などの人事責任者として20年以上、累計で2万人を超える就活生を面接してきた「プロ人事」、曽和利光さん。「学生は、根拠のない思い込みで失敗している」という曽和さんが、面接官の本音を語ります。今回は「内定ホルダー、『就活後』に落とし穴」です。

内定の辞退は引き延ばすな

 6月末までに過半の学生が複数の内定を獲得していたという調査結果がありました。意中の企業を選び、他社には急いで辞退の連絡を入れるのが常道でしょう。しかし、よく「内定ホルダー」と呼ばれるように、いくつもの内定を手にして決めきれない学生の話も耳にします。迷う気持ちもわかりますが、そこで辞退をずっと引き延ばしているとどうなるか。実は、学生があまり意識していない落とし穴があります。入社後の配属にも悪影響が及びかねないのです。

 前回も触れましたが、複数の内定を得ながら辞退を伝えない学生は、採用担当者には嫌われます。どっちみち1社しか選べないのに、他社にも気を持たせるような振る舞いをする。学生に真摯に向き合って内定を出した担当者を、言葉は悪いですが、結局は「裏切る」ことになるわけです。最終的に選んだ企業の担当者の心証もよくありません。「人としてどうなんだろうか」「信頼の置ける人物なのか」「うちの会社に対する熱意がないんじゃないか」なんて気持ちにもなりますよね。

 そうなると、採用選考で例えばABCの3段階のうち、最上級のAと評価されていた学生でも、BやCに下がることもあり得ます。いったん採用が決まってしまえば評価など関係ない? 確かに、「この会社の社員になれさえすればいい」という学生には関係ないでしょうが、多くの学生にとってはそういう考え方はつまずきの元になるかもしれません。

配属は採用担当者の裁量で決まる

曽和利光(そわ・としみつ) 1971年生まれ。 京都大学教育学部卒。リクルート人事部ゼネラルマネージャー、ライフネット生命総務部長などを経て2011年、主に新卒採用を対象にしたコンサルタント事業の人材研究所を設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新報社)、「『できる人事』と『ダメ人事』の習慣」(明日香出版社)などがある。

 学生に限らず、世間的にも見落とされがちな事実を、ここで指摘したいと思います。私が実際に企業の人事担当を務めてきた経験からもいえることですが、企業の人事部が担う業務の中で、新卒採用の学生の「配属」ほど、重要性の割に力を入れていないものはありません。採用や人事異動、人事評価や人材育成の仕組みづくりといった業務に比べると、適当に済ませているといってもよいでしょう。

 異動であれば、対象者の人物像は、少なくともある程度は社内で知られています。「あの部の○○さんのような人物を、今度うちの部に欲しい」といった各部署の考え方を、それなりに擦り合わせることになります。「花いちもんめ」のようなイメージですね。では、配属の場合はどうか。新卒の学生の人物像を知っている人など、採用担当者を除けば、社内に誰もいないわけです。

 そのため、各部署の要望も「男子を3人欲しい」といった程度にとどまります。そこで採用担当者が「男子3人」をピックアップして配属が決まってしまう。そもそも具体的な要望がないので、考慮するとしても採用時の評価のABCぐらいがせいぜいでしょう。特に採用数の多い大企業では、学生の個性をしっかり反映させて配属を決めている会社は、驚くほど少ないのが実情です。「明らかにこの上司とはそりが合わない」というようなマッチングも、かなりの頻度で起きていますよ。

いたずらに内定への返事を留保していると、後々の配属に影響が出ることも

 もうおわかりですね。配属先は採用担当者の裁量で決まる部分が大きいわけです。私がリクルートの人事担当をしていたころを振り返ってみても、まさに私しかできない業務だったと思います。内定の受諾を巡り、そんな採用担当者の心証を損ねたらどうなるか。私自身は「こいつ気に入らないから飛ばしてやろう」などと考えたことはありませんが、そんな気持ちになる担当者がいてもおかしくないですよね。AがCになって、キャリアのスタートラインがおかしくなったり、「次世代のリーダー候補」の枠組みから外されたりすることもあり得ます。

 もちろん、採用時の評価と入社後の活躍はまったく別物です。最初はCでも大活躍している社員は数多くいますので、その意味では、採用時の評価や配属先を過度に気にする必要はないといえます。それでも、どこに配属されるかによって、実力を磨きやすいか、自分の望むキャリアに近づきやすいかに差がつくのも事実です。仕事のやりがいも多少は違うでしょう。

OB訪問で「ハイカツ」を

 学生の皆さんに注目してほしいのが、いわゆる「ハイカツ(配属活動)」です。何をすればいいのか。一つ挙げられるのはOB訪問です。どの部署が面白いのか、自分に合っているのか、社員に会って見極めるわけですね。採用担当者に社員を紹介してもらうのも簡単ですし、いずれ身内になるだろう学生に対しては、社員も会ってくれやすいというものでしょう。そこで、「自分はこの部署にいきたい、理由はこうだ」という考えをしっかり持てれば、内定後にある配属向けの面談でもアピールできます。

 もっと大きな効果もあります。OB訪問を積み重ねるうちに、その社員の部署から、「あの学生をぜひうちに」と人事部に注文が入るようになるんですよ。通常、採用担当者の裁量で配属が決まるのは、各部署が学生について何も知らないからです。そこで、OB訪問を通じて、「おまえいいやつだなあ、絶対うちの部署に来いよ。人事に言っておくから」などということになれば、その部署に配属される可能性はグッと高まります。繰り返しますが、本当に配属は適当です。一方で、ハイカツに熱心な学生はまだ少数派なので、積極的に取り組めば効果は小さくないと思います。

 こうしてみると、就職しない会社の内定をスパッと辞退するのも、ハイカツの第一歩と呼べるかもしれませんね。辞退の決断は勇気が要りますし、連絡するのは気が重いということもあるでしょうが、無駄に引き延ばすのはやめましょう。

 ちなみに内定の辞退の理由は、「親を説得できなかった」が最多です。採用担当者の間で「オヤカク(親確)」という言葉が定着しているぐらい、特に中堅・中小企業が「親の意思確認」を気にするのはそういうわけです。実はその「親の反対」も、半ば方便なのかもしれませんが、ずるずる引き延ばすよりずっとよいと思います。

[日経電子版2016年7月7日付]

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