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[ career-働き方 ]

職場の呼び方マナー
ちゃん付けは?ニックネームは?

職場の呼び方マナーちゃん付けは?ニックネームは?

 職場で意外と気を使うのが上司や部下の呼び方。上司は役職名で呼ぶべきか、それとも「さん付け」か。部下を呼び捨てにしたり「ちゃん付け」で呼んだりしたら、パワーハラスメントにならないか。仕事をする上でふさわしい名前の呼び方を探ってみた。

 名前の呼び方は時代で変わる。上下関係の厳しい男社会だった、かつての職場では、上司は役職名、部下は呼び捨てや「くん付け」が普通の光景だった。

 その後、世の中の変化や、堅苦しい上下関係が自由にモノ申せない空気を作ったことへの反省などから、上司をさん付けで呼ぶなど呼び方のカジュアル化が進行。一方で、コンプライアンス強化が課題となる中、高圧的な口調での名前の呼び捨てや、相手を傷つけるようなニックネーム、女性社員に対する「ちゃん」付けは、パワハラやセクハラの恐れがあるとして、使用を控える企業も増えた。

 職場では、互いにどう呼ぶのがマナーであり、仕事上プラスとなるのだろう。

 人財育成コンサルティングのJ―Labo(東京・港)社長の笠井玲子さんは、「上司には役職名で呼ぶのが基本。まずこの基本をしっかりと身に付けることが重要」と強調する。

 笠井さんの会社は、企業の新入社員向け研修も多く手掛けるが、最近特に多いのが「正しい言葉づかいを教えてほしい」という人事部門からの要望。「正しい言葉づかいと、名前の呼び方は密接に関係している」と笠井さん。

公私混同を避ける

 例えば、上司を役職名で呼んだ場合、「○○部長、この書類を見て頂けますでしょうか」と自然と敬語が出るが、さん付けだと"なあなあ"的な雰囲気になり、「○○さん、この書類みてもらえますか」など、砕けすぎた言い方をしてしまいがち。「親しみやすさと、なあなあは違う。ふだんなあなあ言葉を使っていると、商談や取引でそれが出る。会社にマイナスなので、ふだんの上司の呼び方は大切」(笠井さん)

 逆に、上司が部下を呼ぶ場合は「男女関係なく、さん付けが基本」(コミュニケーション研修の講師を務める堀口瑞予さん)。

 「部下を呼び捨てで呼ぶと、続く言葉も乱暴になりがち。さん付けで呼べば、『○○さん、これお願いします』と自然と丁寧な言葉づかいになり、パワハラと誤解されるリスクも減る」(堀口さん)。実際、ある大手食品メーカーでは、会社の行動指針に「『さん付け』は互いの立場の尊重」と明記し、パワハラやセクハラ防止の観点から、さん付け運動を進めている。

 堀口さんは、「職場は仕事をする場所。公私混同となるような、くん付けやちゃん付けは避けるべきだ」と強調。笠井さんも「一人だけちゃん付けで呼ばれる人がいたら、周りは、自分はその人より距離を置かれていると思い、不快に感じる」と指摘する。

職場環境に合わせ

 ただ、職場での名前の呼び方は、業種やカルチャーによっても異なり、一概に何が正しいとは言い切れない面もある。

 日米を拠点とするM&AアドバイザリーのGCAサヴィアン(東京・千代田)では、社長も含め基本はさん付け。ニックネームも多い。若手の土屋延大さんは上司から「つっちー」、部下からは「つっちーさん」と呼ばれる。マネージングディレクターの名倉英雄さんは、堅めの邦銀出身だが、年の離れた部下からさん付けで呼ばれても「そういう企業カルチャーなので違和感はない」。むしろ「自由な雰囲気が出て、業務にもプラス」と強調する。

 明確に業務目的で呼び方を決めている職場もある。

 NTTデータのグローバル事業本部は、担当役員も含め職場の全員がファーストネームか名前をもじったニックネームで呼び合う。同事業本部部長の田中一郎さんは「日本人の名前は外国人には覚えにくいので、あくまで仕事をしやすくするのが目的」と説明。同社の他の部署では、ふつうに役職名やさん付けで呼んでいるという。

 職場は、交遊の場所ではなくあくまでプロフェッショナルな仕事の場と心得て、適した名前の呼び方を心掛けるべきだろう。
(ライター 猪瀬 聖)[日本経済新聞夕刊2016年6月13日付、日経電子版から転載]

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