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[ career-働き方 ]

面接ゼロの就活
メルセデス・ベンツ日本

面接ゼロの就活メルセデス・ベンツ日本

 メルセデス・ベンツ日本は原則、インターンシップ(就業体験)への参加を新卒採用の条件にしている。入社した後はインターンで働いた職場に配属させるため、学生は働く姿をイメージしやすく、受け入れた社員は学生の資質を厳しく見る。思い描いていた仕事と違う「ミスマッチ」が減り、離職が少ない。インターン後の最終面接は不要と判断し、2014年に廃止した。

 カタログなどの制作を担当するマーケティング・コミュニケーション部の田坂玲奈さん(23)は15年4月に入社した。同社が内定を出すのは年に10人前後。その狭き門をくぐって、14年9月に参加したインターンで内定を得た。

 もともとブランドビジネスに興味があり、同社は有力な志望企業の1つだった。15人以上の営業部の社員が会社説明会に来て、「うちのインターンに挑戦して下さい」とアピールしたことをよく覚えている。「面接が大の苦手だったので、長い目で本当の私を見てもらえる」。同社の選考に面接がないと知ったときにこう思った。

田坂玲奈さん(左)はインターンの時と同じ情報発信をする部門に所属している

 メルセデスのインターンは一般企業のそれとは少し違う。期間は2週間で、6500円の日給が出る。入社1~2年目の社員が指導を担当し、会議への出席や販売拠点への訪問など2週間のスケジュールを組み立てる。

 インターンの前に、採用サイトに提出する小論文と手書きで郵送するエントリーシートで選考する。説明会では社員がそれぞれの部署を説明する一方、学生も自己PRをし、最終的にどの職場にインターンをするのかを決める。

 田坂さんはマーケティング・コミュニケーション部で顧客向けの雑誌の作成を補佐したり、テレビ広告の会議に参加したりした。指導役の女性社員が働く姿を間近で見て、入社後の仕事のイメージが膨らんだという。

 インターンで働いた部署が配属先となる。受け入れる社員はともに働くことになる人の働きぶりを真剣に見る。

 インターンは人事部の田中順太郎マネージャーが考案し、1999年から取り入れていた。インターンを通過した学生には最終面接をして合否を決めていた。田中氏は「中途採用では互いの意思を擦り合わせるために面接は必要。だが社会人の経験がない新卒では人となりくらいしか分からず、意義が薄い」と指摘する。

 学生との面接では自然に上下関係ができてしまい、取り繕った姿しか見えないとも感じていた。ドイツの本社の承認が降り、やっと面接を排除できた。本社では選考に面接を取り入れている。

 インターンを続ける中で社員が定着していることも自信になった。メルセデス・ベンツ日本の社員数は約500人。厚生労働省によると過去10年、社員数が500~999人の企業の入社3年後の離職率は30%前後だが、同社では入社10年以内でも3%。この3年で入社した22人のうち、退職したのは1人だ。

 インターンを始める前には「若者のクルマ離れ」などのテーマで意見を出し合い、最後にグループディスカッションなどの場で発表している。17年入社の採用活動は7月から始める。説明会とインターンシップを経て、8月末に内定を出す予定だ。

 経団連は加盟企業にインターンを選考の手段にしないように求めている。学生の獲得を前倒しで競うようになり、学生が勉強に専念できなくなるのを避けるためというのが理由だ。メルセデス・ベンツ日本は外資系企業のため経団連の指針には縛られない。日本企業でもインターンを学生と接触する手段にし、事実上の採用活動の一環にする動きが広がっている。

 田中氏は新卒で入社した金融機関で思い描いていた仕事とのギャップに悩んでいたとき、メルセデスの採用募集を見て応募した。インターンを始めた時は「採用活動を押しつけるな」と文句を言いにくる社員もいたが、いずれ同僚となる学生と毎年2週間働くうち、注文を付ける社員はいなくなった。今後も学生と企業が互いに理解を深められるインターンの在り方を模索する。
(企業報道部 吉田楓)[日経産業新聞6月21日付、日経電子版から転載]

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