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[ career-働き方 ]

ドラフトコーヒー物語(1)愛される店の条件は努力と変化

平井幸奈 authored by 平井幸奈株式会社フォルスタイル代表取締役CEO
ドラフトコーヒー物語(1) 愛される店の条件は努力と変化

 3年続く飲食店は3割、10年続く飲食店は1割、そしてその中でも繁盛店はわずか1%と言われています。私が大学3年生のときに日本初のブリュレフレンチトースト専門店ForuCafeを立ち上げてから9月で早3年。飲食業のこうした現実を身をもって痛感してきました。

 ある日、開店当初から仲良くして頂いていた近所の飲食店のおじさんが「もう店を閉めるからこれ使って」と大量の卵を持って来てくださったことがありました。その日のもの寂しさは今でも忘れられません。当たり前ですが、始めがあれば終わりがあります。始める時は終わりのことなんて考えません。でも、始めた直後からはいつかは終わりが来るということを意識するようになっていました。いつか終わる時が来るのであれば、その時は笑顔でいられたらいいなぁ、なんてそんな気持ちも持ちながら3年間走り続けてきました。

3年間お店を経営していく中で分かったこと

 小さなお店ではありますが、3年間お店を経営していく中で、常に愛されるお店であること、愛されるブランドであるために必要なことが分かってきました。それはありきたりですが「努力すること」と「常に変化すること」この2つにつきます。いいものを作ることは大前提。「いいもの」であるということの伝え方の工夫、そして「より良いもの」にするために日々努力することが必要です。

 老舗の六花亭のバターサンドでさえ、開発当初から何度もレシピやデザインの改良を重ねていて発売当初とは全く別のものになっていると聞きました。長く愛されるものを作り続けるには、常により良く変化すること、改善していく柔軟な思考と姿勢が大切です。開店当初のブリュレフレンチトーストと現在のブリュレフレンチトーストを比べると、見た目だけでも違いが分かります。より良いものを作り、そのクオリティを保ち続けることの難しさはありますが、それを続けること、そのために努力することこそが飲食業の醍醐味です。

 「常に変化すること」の意味では、商品のブラッシュアップだけではなく、新しい事業にも積極的に挑戦しています。そのために常に内と外の世界に目を向けて広い視野を持つようにしています。これはある種、かけのようなところがあって「失敗」に終わることもあるのです(笑)。それでもその過程が大切で、たとえうまくいかなくてもその経験が次に活かせます。ただの失敗なんてありません。

 今、私たちが最も力をいれているのがドラフトコーヒー「FORU COFFEE」です。ちょうど1カ月前から取り掛かって3日前にリリースしました。準備期間はたったの1カ月。ここ1カ月は寝ても覚めてもコーヒーのことが頭から離れませんでした。この世界は常にスピード勝負。小回りが効くことが私たちの最大の強みです。

3年前のブリュレフレンチトースト

現在のブリュレフレンチトースト

シンガポールで出会ったコーヒー

 私がこのコーヒーに出会ったのはシンガポールでした。ビールサーバーからコーヒーを注ぐという斬新なスタイルです。注いだ瞬間滝のようにシュワシュワと窒素が立ち上り、表面にビールのようなきめ細やかな泡ができてなんともフォトジェニック。その泡によってほんのりした甘さとふわっとまろやかな口当たりになります。見た目もさることながらその味にも驚かされました。本場はアメリカで、既にスターバックスも導入するなどニューヨークを中心に大流行しています。これを日本に持っていきたい!直感でそう思いました。

 本場アメリカでのこのコーヒーの名前は"Nitro Cold Blew Coffee"です。Nitroが「窒素」、Cold Blewが「水出し」の意味。そのまま日本語にすると「ナイトロ・コールド・ブリュー・コーヒー」。なかなか日本人に馴染みにくそうな名前です。ネット上で検索すると「ナイトロコーヒー」「ニトロコーヒー」など様々な名前があり、悩んでいました。そこで、食通のライターである大学の先輩に相談すると、ズバり「ドラフトコーヒー」がいいんじゃないかと提案いただききました。「ドラフト」は樽から注ぐという意味。日本では「ドラフト」というと「ビール」を連想させます。ネットで検索すると確かに「ドラフトコーヒー」としての流通はまだまだ弱かったのです。そこでFORU COFFEEは「ドラフトコーヒー」と呼ぶことに決めました。

ビールサーバーで注ぐコーヒー

きめ細やかな泡によってほんのりした甘さとまろやかな口当たり

FORU COFFEE部隊、発足!

 日本でドラフトコーヒーを流行らせる。その決意を後押ししてくれたのは倉智ジョセフ氏(通称ジェイ)でした。某IT企業に勤める彼はアメリカでいたるところのドラフトコーヒーを飲んできたスペシャリスト。彼を本業の傍らアドバイザーとして迎え入れFORU COFFEE部隊が発足しました。

 こうして私たちの新たな挑戦"FORU COFFEE"がスタートしました。私がプレゼンすると「いいね!やろう!」と二つ返事で受け入れてくれた社員をはじめ、沢山の方々の助けがありました。未熟な私一人の力では何もできません。感謝をカタチにするためには結果を残すこと。

 この連載ではドラフトコーヒー「FORU COFFEE」を生み出すまでの話を書いていきます。