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経営者ブログ 星野リゾート代表ビジネス街に日本旅館
「ホテル業のトヨタ」目指す

経営者ブログ 星野リゾート代表 ビジネス街に日本旅館「ホテル業のトヨタ」目指す
authored by 星野佳路星野リゾート代表

 星野リゾートは7月20日、東京・大手町に「星のや東京」を開業しました。長野・軽井沢が発祥地で、これまでリゾートでビジネスを展開してきた星野リゾートにとって、東京での施設運営は初めてです。

玄関では顧客に靴を脱いでもらう

 大きな特徴はビジネス街のど真ん中に位置する日本旅館であることです。これまでにまったくなかったタイプの施設ですが日本旅館である以上、玄関では顧客に靴を脱いでもらうため、巨大な下駄箱を設置しています。室内は畳敷きであり、最上階には温泉を備えています。

 運営には星野リゾートが培ってきた独自の活動を全面的に導入します。具体的には、業務を兼務するマルチタスクの「サービスチーム」、自分たちの文化を反映したサービスを自ら創造し顧客へ提案するサービスの方法「日本旅館メソッド」、社員が言いたいときに、言いたいことを、言いたい人に言える「フラットな組織」などを取り入れます。

7月20日に開業する星のや東京の外観

 星のや東京を通じて、これまで蓄えてきた手法が東京でも通用することを示したいと考えています。高い収益率を上げることによって海外の投資家に対して、日本旅館が世界中の都市で通用することを示したいと思います。

 振り返ればバブル経済の時代、日本のホテル運営会社は次々と世界に打って出ました。しかし結局、思うような成果を上げられないまま撤退していきました。なぜかといえば、日本のホテル運営会社は自社よりもずっと規模の大きい海外のホテル運営会社と同じ運営手法を採っていたからだと私は思います。運営手法が同じならば、ブランド力のある海外の運営会社に勝つのは難しいのです。海外の投資家の立場からしてみたら、同じ運営手法ならばわざわざなじみのない日本の運営会社を選ぶ理由がありません。

 これに対して星野リゾートは世界の大手とはまったく違う方法で運営しています。運営効率の高さを考えれば、日本から世界に進出していく意義は大きいと思います。また、運営方法が違うため、海外の投資家にとっても日本から世界に打って出ることに対して納得感があるはずです。

 海外進出が進んできた製造業に対して、サービス業はまだこれから、という面があります。だからこそ、私はこれから日本旅館を海外で展開していきたいし、実現できる可能性はあると思っています。周囲に対してはわかりやすく伝えるために「ホテル業界のトヨタになろう」と言っています。

 星野リゾートをめぐるビジネス環境は少しずつ変わってきたし、これからもどんどん変わっていくと思います。

星のや東京はビジネス街のど真ん中に位置する日本旅館だ

 私は1991年に事業を引き継いでから「リゾート運営の達人」というビジョンを掲げてきました。しかし、運営している地域は当初想定していたリゾートだけでなく、都市部にもどんどん広がっています。また、ビジョンをつくったときに星野リゾートは運営会社としてまだ実績はありませんでしたが、約20年かけて星野リゾートは国内のリゾート業界をリードできるようになってきたと自負しています。それに伴う環境変化は大きく、私は次第にビジョンを変える必要がある、と考えるようになりました。

ビジョンを変更、チャレンジャーとして踏み出す

 こうして新しく定めたビジョンは「ホスピタリティーイノベーター」です。

 今後、世界を舞台にビジネスを展開するとき、星野リゾートは規模がケタ違いに大きな運営会社と競い合うことになります。海外の大手がやっていないことに取り組まない限り、到底、勝ち目はありません。星野リゾートは間違いなくチャレンジャーの立場になります。どんどん新しいことに挑み、ホスピタリティーのイノベーションを進めていく必要があります。だからこそ、私はそれをビジョンを通して示そうと考えました。

星のや東京は露天風呂も備えている

 新しいビジョンはカタカナが並びますが、それも将来を見据えてのことです。

 星野リゾートは既に南太平洋のタヒチで施設を運営しています。さらに年末にはインドネシアのバリ島で「星のやバリ」が開業します。今後も海外の社員が増えていくため、世界中の社員に伝わるビジョンにするため、英語を採用。創業100年を迎えた2014年の全社員研修の場で発表しました。

 このたびの星のや東京の開業もそのための一歩になります。ホスピタリティーイノベーターを目指して、これからも進んでいく覚悟です。
[日経電子版2016年7月14日付]

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