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skill up-自己成長

私を試す舞台は世界
大分からハーバードへ
米ジュリアード音楽院入学予定
広津留すみれさん

私を試す舞台は世界 大分からハーバードへ 米ジュリアード音楽院入学予定 広津留すみれさん

 大分市の公立高校を卒業後、日本の大学ではなく、米ハーバード大学に進学した。留学経験はなく、英語力は地元の大分で身につけた。ハーバード大を選んだ理由は学業とバイオリンの両方に全力投球したかったから。今年6月に卒業し、9月に米名門音楽院、ジュリアードに入学する。バイオリンの技術を磨き、自分の将来を模索する。

 大分市に生まれ育ち、海外経験が全くなかった広津留すみれさん(23)。どう英語力を身につけたのか。

 答えは幼少期にさかのぼる。母は英語が得意で翻訳をしていた。赤ちゃんの頃から読み聞かせは英語の絵本。週末にはホームパーティーが開かれ、留学生と遊んだ。

 並行して取り組んだのが2歳半から始めたバイオリン。コンクールで優勝し、面白くなった。英語とバイオリン。「日常生活に2つの柱があるのは普通のことだった」

 高校は地元の進学校に入り、東大合格を目指す特別クラスに在籍した。転機は高校2年の春。バイオリンの演奏ツアーに参加し、初めて米国に行った。観光でハーバード大の学生が案内するキャンパスツアーに参加。目を輝かせて自信たっぷりな姿に衝撃を受けた。

 心を奪われたのは、学業だけでなく課外活動にも注力できる点だった。「学業とバイオリンの両方を極める環境は、東大よりハーバード大の方があるかも、と思った」。高校2年の12月に受験を決意。担任に打ち明けると絶句していた。

 高校1年で1万語の語彙力が必要とされる英検1級に合格したが、それでは足りない。受験までの1年で1万5000語レベルへの引き上げが必要だった。一つ一つ覚える時間はなく、接頭語と接尾語を分解したり、言語の由来で覚えたりと試行錯誤を繰り返した。

 一番苦労したのはSAT(大学進学適性試験)の準備。米国版のセンター試験のようなもので理数系の科目があった。専門辞書を片手に、授業で習ったことを英単語に訳して覚え直した。

 幼い頃から一度決めたらぶれない。ハーバード大受験は友人には話さなかったので、東大クラスで勉強をしながら、バイオリンの演奏も続けた。孤軍奮闘し、合格した。

 入学後に出会ったハーバード生の多才ぶりには驚いた。勉強だけでなく、演劇やコンピューターなど、一芸に秀でているのが当たり前だった。

 勉強は1週間に何冊も分厚い英語の本を読まねばならず「ホームシックになる暇もなかった」。話す力ではさらに苦労した。議論を重視する授業では「意見を言えなければ存在しないに等しい」。ネーティブの同級生は既にディベートの技術を持っていた。悔しかった。

 教授に相談すると「英語はあなたの母国語ではないから無理もない。私があなたに質問するからそのタイミングで発言して」と言われた。「教授も生徒も『困ったら助けるよ』という文化だった」。1年後には助け舟がなくても議論に入れた。

 課外活動では音楽2団体の代表を務めた。企業から支援金を募り、会場押さえやキャスト選びまで責任を負う。全体の9割が米国人学生。マイナーな立場で皆をまとめるプレッシャーと戦った。

 無我夢中で「あっという間だった」というハーバード大の生活は終わった。9月に入学する米ジュリアード音楽院は、世界屈指の芸術学校。2年間はバイオリンに没頭すると決めた。将来何をするかはまだ決めかねている。「日本にいると楽な方に流れてしまいそう」。世界で自分がどれくらい通用するのか、もう少し試したいと思っている。
(坂下曜子)[日本経済新聞朝刊2016年8月8日付、「18歳プラス」面から転載]

 ひろつる・すみれ 大分県出身。幼少時から英語の勉強と並行してバイオリンを習う。大分県立大分上野丘高校を卒業後に米ハーバード大に入学。専攻は音楽とグローバルヘルス。課外活動で音楽2団体の代表を務めた。今年6月に米ハーバード大卒。9月から米ジュリアード音楽院に入学予定。

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