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[ career-働き方 ]

シューカツ都市伝説を斬る!中小・ベンチャーの就活
「社長の経歴」で選べ

authored by 曽和利光
シューカツ都市伝説を斬る! 中小・ベンチャーの就活「社長の経歴」で選べ

 リクルート、ライフネット生命などの人事責任者として20年以上、累計で2万人を超える就活生を面接してきた「プロ人事」、曽和利光さん。「学生は、根拠のない思い込みで失敗している」という曽和さんが、面接官の本音を語ります。今回は「中小企業は『社長の経歴』で選べ」です。

社長の考え方が社風になる

 中堅・中小企業やベンチャー企業への就活を続けている学生には、「どうやって会社選びをしたらいいかよくわからない」「どこを受けたらいいかもわからない」という悩みもあることでしょう。確かに、一つの業界に限っても、中小は会社の数が膨大です。一方で、それぞれの会社についての情報や評判もあまり出回っていませんから、どこが自分に合っている会社なのかを見極めようとしてもそう簡単にいかない面があります。そこで、中小の社風を把握する上で参考になる、とっておきの手掛かりをお伝えしたいと思います。

 大企業はさまざまな部署があります。配属された職場の環境が自分になじむかどうかは、各社の社風よりは、むしろその職場の上司がどんな人物かによって左右される部分が大きいといえます。そんなことまで入社前に確かめるのは、ほとんど無理な話でしょう。その点、中小は規模が小さいぶん、社長の考え方が社風として浸透していて、どの職場も雰囲気が似ているケースが多いのです。中小への就職で雇用のミスマッチを防ぐには、この「社長の人物像」がポイントになるというわけです。

曽和利光(そわ・としみつ) 1971年生まれ。 京都大学教育学部卒。リクルート人事部ゼネラルマネージャー、ライフネット生命総務部長などを経て2011年、主に新卒採用を対象にしたコンサルタント事業の人材研究所を設立。著書に『就活「後ろ倒し」の衝撃』(東洋経済新報社)、「『できる人事』と『ダメ人事』の習慣」(明日香出版社)などがある。

 面接の機会などに、できる限りどんな人柄の社長なのかを感じ取ろうとするのはもちろん必須でしょう。それでもよくわからない、あるいはそういう機会がなかった場合にどうするか。実は、社長の経歴を調べれば、その会社の社風や文化、価値観を理解する手掛かりになるケースがあります。

出身企業の流儀が反映

 特にベンチャー企業の社長ならば、大企業を飛び出して起業しているケースが少なくないでしょう。社長がどこの企業出身か、もともとどんな仕事をしていたかは、ホームページに載っていたり、インタビュー記事に書いてあったりするので、調べるのはさほど難しくありません。その出身企業の社風やもともとの職歴が、いま社長を務めている会社にけっこう影響していることが多いんですよ。例えば外資のコンサルティング会社出身の社長なら、部下の鍛え方もそのコンサル流だったりするのは、よくあることだと思います。

 もっと具体的な例を挙げましょうか。IT(情報技術)関連のメガベンチャーでみると、ディー・エヌ・エー(DeNA)はコンサルタントが創業した会社ですよね。事業展開をみていると、選択と集中を進めて、勝てる分野で勝負をする傾向があったりだとか、戦略的なものを感じます。「コンサルタントっぽい」会社だと私はみています。同様に、グリーはエンジニアの会社ですので、とにかくやりたいことには手を出してみるような、ものづくり精神を感じます。

 銀行マンがつくった楽天は、グループに証券会社を持ち、ネット上で「楽天経済圏」を拡大しようとしている。そういうシステマチックなところが、いかにも銀行らしいですよね。営業マンがつくったサイバーエージェントは、フェイスブックやツイッターのように何もないところからまったく新しいサービスを生み出すというよりは、いろんなサービスをアレンジして世間に広めていくところに強みがあると思います。もちろん、どの会社も一口に語ってしまうのは乱暴でしょうが、ある程度は社長の経歴と会社の「色」に関連性があるといえるのではないでしょうか。

社名にも創業者の思い

 社長の経歴の他にもう一つあり得る手掛かりは社名です。どんな由来でその社名になっているのか。例えば、「曽和興業」のように名前を冠していれば、良くも悪くも「俺の会社だ」という創業者の自己顕示欲が反映しているのでしょうし、「社員は俺の家族だ」といった感じで、家族主義の社風かもしれません。

 名前ではなく製品や技術をストレートに社名とした、「機能系」とでも呼べるケースは、どちらかというと知性的なものや合理主義を感じます。「ソワックス」のように、響きのかっこよさを狙った広告コピーのような社名であれば、ブランド志向や理想主義の雰囲気がにじみでていると思います。例外も多いので、一般的な原則とまではとてもいえませんが、いずれにせよ適当に名付けているわけはありません。社名の背景を探れば、創業者が込めた何らかの思いは感じ取れるはずです。

 会社の事業は時がたつにつれて移り変わりもしますが、社長の考え方はそう変わりません。ホームページの事業概要を読むより、社長の経歴を調べるほうが企業研究に役立つともいえます。また、会社の仕組みがしっかりできあがっている大企業と違い、中小は社長の考え方が社内に直接大きな影響を及ぼします。この意味でも、社長がどんな価値観で仕事をしてきた人物なのかを知ることは重要です。社風や価値観は、学生が企業を選ぶときに重視しているポイントの中でも上位にくる項目でしょう。それがさほど手間を掛けずにわかるわけですから、ぜひ参考にしてほしいと思います。
[日経電子版2016年7月26日付]

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