インターンシップと学校の関係を考えよう
人事部長のひとりごと(2)
人事・採用経験者らが、仕事や就職をテーマに本音を語る本連載。初回に続いて、新日鉄住金ソリューションズ人事部専門部長、高知大学客員教授の中澤二朗が執筆を担当します。今回のテーマは「学びとインターンシップ」について。
雇用慣行を無視しては語れない
最近、またぞろ、インターンシップが話題になっています。そもそもインターンシップとは何か。それは長い方がいいのか、短い方がいいのか。
しかし話は、そう簡単ではありません。雇用慣行が、日本と日本以外(欧米に加えアジア諸国も含む)では、大きく異なるからです。慣行が違えば、インターンシップの位置づけも意義も、大いに違ってきます。その違いを認識することなく話を始めれば、議論はすれ違い、思わぬ不都合が生じます。
インターンシップと学業の折り合いは?
私はインターンシップという言葉を聞くと、いつも反射的に、こんな図が頭をよぎります。
これは、ある会議の席上、先生や企業人事の方の前で、私が思い付いた内容を描いたものです(その時のテーマは、たしか、インターンシップの今後についてだったと思います)。
〔ケース(1)〕
大学4年間、まったくインターンシップをしないケースです。いわば学業専念型です。
〔ケース(2)〕
大学4年間、すべてをインターンシップにあてたケースです。学生ではあるが、学校には来ないケースで、それでも卒業できると想定した架空のケースです。
〔ケース(3)〕
学業の合間をぬって行う、一般的なインターンシップがこれです。よって、インターンシップの長短議論は、これを起点にして行われています。
〔ケース(4)〕
大学に進学せず、高卒で働き出したケースです。よって余りに当たり前ですが、高卒後4年間(=大学に行ったとしたときの4年間)も当然に仕事オンリーです。
と同時に、これが頭に浮かぶと、つかさず、こんな「つぶやき」が頭の中を駆け巡ります。
(イ) もしインターンシップは長い方がいいと言うなら、4年間すべてをインターンシップにあてたらどうか〔ケース(2)〕。それで何が問題か。
(ロ) もっと言ってしまえば、一層のこと、大学進学はやめて、高卒で仕事についたらどうか〔ケース(4)〕。つまり〔ケース(2)〕と〔ケース(4)〕とでは、何が、どう違うのか。
(ハ) 反対に、もしインターンシップは短い方がいいと言うなら、4年間全くインターンシップをしないと、何が困るのか〔ケース(1)〕。少しでもそれをやった〔ケース(3)〕と、どこが、どう違ってくるのか。
極端だと、いぶかる人がいるかもしれません。しかし曖昧なものの本質をえぐるには、わかりやすい極端な例をもちだし、見比べると、意外にすんなりその核心に迫れることがあります。
そこで、ここからは、今度は皆さんへの「問い」です。「上記の4ケースをふまえ、インターンシップは長い方がいいでしょうか。それとも短い方がいいでしょうか。そしてそれは、なぜですか」。
「正解」のないつぶやき
以下は、この「問い」に対する私の思い付きです。
・大学とは、そもそも何をするところか。
・大卒と高卒は、そもそも何が違うのか。
・大学生のインターンシップと、高卒の人の仕事は、一緒か、違うのか。
・勉強する意義は、働いてみないとわからない。しかし、それでも、その働き出す前に勉強の意義を知りたいときは、どうすればいいのだろう。
・かといって、それを知るために、大学4年をすべてインターンシップで過ごしてしまっては、何のために大学に入ったのか、わからなくなってしまう。
・再びもどって、そもそもインターンシップとは何か。
・それは、誰のために、どんな期待が込められて始められたものか。
・他方、インターンシップは、日本と日本以外では、何が、どう違うのか。
・目線を変えて、企業は、これら4ケースを、どう見ているのだろう。
・一口に企業といっても、人気企業もあれば、そうでない企業もある。その間にインターンシップに関して何か違いはあるのか、ないのか。
ただでも暑い夏に、リオ五輪が更に拍車をかけました。錦織圭選手の銅メダル獲得に歓喜の声をあげた方も大勢いると思います。私も、むろんその一人です。寝不足つづきのこの夏に送るのは「正解」なしの「つぶやき」だらけ。
少しでもこれに関心を持たれた方がおられれば、私のつぶやきを友達と共有し、インターンシップ議論を通して「学びとインターンシップ」について考える夏にしてみてはいかがでしょうか。
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