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[ career-働き方 ]

お悩み解決!就活探偵団2017なぜ私たちはベンチャー企業を選んだのか
内定者座談会

authored by 就活探偵団'17
お悩み解決!就活探偵団2017 なぜ私たちはベンチャー企業を選んだのか内定者座談会

 2017年卒の就活では、従業員数5千人以上の「大企業」を志望する学生の数は8万3400人と、16年卒の6万9800人から19.5%増えた(リクルートワークス研究所調べ)。一方、大手企業の内定を持ちながら、あえてベンチャー企業を選ぶ就活生もいる。なぜ彼らはベンチャーを選ぶのか。内定者座談会の後編では、ベンチャー企業に就職を決めた学生が本音を語った。

定年後に何も残らないのが怖い

――大手志向が強まる中で、どうしてベンチャー企業を選んだのですか。

 A君(首都圏私立大) 「先輩を見ていると、安定志向の人が有名企業に決まって、優秀だと思っていた人がその子会社に決まったりしている。結局大手は会社への忠誠度を見ているのかなと。それを確かめるために大手商社の面接も受けました。面接で『最初は書類整理をすることになるがどうする』と聞かれて、拒否したら落とされました。やっぱり違うなと思いました」

 川守田明さん(東洋大) 「ストップウオッチで時間を計られて終了という面接がありました。それで落ちてしまったのですが、納得できず人事に問い合わせたら復活できたことがありました。その対応もどうかと思うし、もし採用されたとしても同じような扱いを受けるのかなと」

――大手企業への違和感がきっかけになっているんですね。

「さまざまな社員と話して、仕事の価値観を共有できた」と語る川守田明さん

 土方正和君(埼玉大学大学院) 「僕は理系の大学院生ですが、周りは大手志望がほとんどです。自分も今年の春まで大手志望でしたが、選考では社内SEをやってくれと言われてました。たとえ技術者でも、セクションに限られずに働きたいので大手企業の選考はやめたんです」

 Bさん(関西圏公立大) 「大企業の社会人って楽しくなさそうじゃないですか。私のイメージでは、言い方は悪いですが『檻(おり)に入れられる』ようなものでした。周りは大手志向が多かったのですが、安定志向やブランド志向に共感できませんでした。そこでベンチャー企業を見てみようとなりました」

 河内延紘君(中央大) 「僕の場合は、違和感というのではありません。実家が食品関係の同族企業で、それを継ぐプロセスを考えた時にベンチャー企業で働いた方が短期間で様々なことを吸収できると考えたからです。内定先にもそのことを話していますし、5~6年働いて家業を継ぐ予定です」

――大企業のメリットは捨てがたいものがあると思うのですが。ご家族は反対しませんでしたか。

河内延紘さんは「将来家業を継ぐプロセスを考え、ベンチャーを選んだ」という

 川守田さん 「大手企業にも内定を頂いていたので、両親からそっちに行ったらどうかというのは言われました。ただ、選考の仕方に違和感があって、入った後もこういう扱いなのかなと考えました」

 土方君 「出身が秋田県です。有名で安心できる大手企業志向はあると思います。ただ、仮に大企業で大きなプロジェクトに携わっても、自分の力でできているのかが分からないところが納得できませんでした」

 河内君 「企業のブランドにすがりついて定年を迎えた後に自分に何も残らなくなり、『自分は一体何なのだろう』となるのが怖いです」

 A君 「一概に大企業が画一的ともいえないんじゃないかな。大手を受けたとき、リクルートスーツは着ずにワイシャツ・ノータイで行ったんですが、面接は通りました。服装や態度のことをよく言われますが、そこだけ見ているわけではなく、将来どうしたいのかを見ているのだと思います」

ちゃんと見てくれている

――逆にいうと、ベンチャーの選考が魅力的だったということでしょうか。

「ベンチャーは、技術者であっても裁量の幅が広いのが魅了」という土方正和さん

 川守田さん 「リクルートスーツ禁止、面接廃止という不思議な選考でした。インターンシップを通じて内定を頂きましたが、様々な社員の方とお話しして、仕事の価値観を共有できました。画一的な選考ではなく、自分をちゃんと見てくれているなと思います」

 土方君 「情報分野を大学院で学んでいますが、ベンチャーの説明会で話を聞くと、技術者であっても何でもやらなくてはいけないという裁量の大きさを感じましたね。今の内定先を選んだのは、将来事業を立ち上げたいと思っており、Webマーケティングやコンサルティングといった事業を学べると思ったからです」

 Bさん 「裁量の大きさは私も感じました。ベンチャー企業の就活生たちは起業したい、企業の歯車にはなりたくないという考え方の人たちでした。そういう人たちと話していて一緒に働きたいと思いました」

 A君 「社会人の方が親身に向き合ってくれることですね。様々な方が『将来何をしたいのか』『就活はどうしたいのか』と聞いてくれる。大手企業だとそこまで1人にコミットしてくれない。当然、ベンチャーも新卒が欲しいというのはあるのでしょうが、下を育てていきたいという気概を感じます」

 土方君 「確かにベンチャーの説明会では学生と社員の距離が近いです。説明会でもずっと話せるので、企業をじっくり見極めることができます」

 Bさん 「安定やブランド志向で大手企業に絞って、ベンチャーを毛嫌いしている人がほとんどなので、一度ベンチャーを調べてみれば選択肢は増えると思います。」

人脈は自分で作ればいい

――ベンチャー企業は数が多く、ブラック企業も紛れているかもしれません。どうやって探しましたか

 A君 「『OfferBox』という、自分のプロフィルを登録して企業からオファーが届くサイトを利用しました」

 Bさん 「同じく『OfferBox』や『Goodfind』などのベンチャーに特化したサイトからイベントに参加するようになりました。『OfferBox』では様々な企業からオファーが届きますが、できるだけ会ってみて自分に合う企業をリストアップして軸を固めていきました」

 河内君 「大企業の説明会で、『人脈が広がること』がメリットだと言われました。でも、それは自分で何とかなるのではないでしょうか。僕は1人で飲みに行くのが趣味ですが、就活中にバーで大手企業の方と知り合う機会がありました。学生でもいくらでも出会う機会はつくれるので、人の縁は自分次第だと思います」

就活が学業に影響しないわけがない

――今年も「学業に差し支えがないように」と経団連が採用活動の時期を変更した経緯がありました。面接は6月解禁でしたが、どう感じましたか。

 A君 「6月はゼミと丸かぶりです。ゼミに出席したくなくて、就活を免罪符のように使う学生もいて、学業への甘えを許す温床にもなっています」

 土方君 「卒業してから就活する人の受け入れ体制も整えるべきです。わざわざ学生でいる間に就活しなければいけないというのは、学業に影響しないわけがない。ベンチャーは基本的に卒業後の就活も受け入れていますが、やはり就活生の間では認知度が低いのが現状ですよね」

 川守田さん 「6月からとはいっても、実際は3年生から面接をしている企業は多いので、結局いつ動くかは自分次第ですね」

 Bさん 「解禁が6月といっているのに、実際にはその前からほぼ選考をしていて『実は水面下でやっていなければ駄目だったんだよ。知らなかっただろう』と言っている印象を受けます」

――後輩の就活生にアドバイスをお願いします。

 川守田さん 「経団連がいつ解禁だといっても、結局は自分からいかに情報収集するかです。積極的に人脈を広げることで情報は入ってきます」

 河内君 「日本ではいい意味でも悪い意味でもチームで物事に取り組みます。就活も同じで回りに左右されがちだけど、自分の就活は自分なりに考えてほしいです。情報を集めることは大事だけど、人の意見に左右されすぎないでほしい」

 Bさん 「一つの価値観にとらわれずに様々な人と会って話を聞いてほしい。それを繰り返して自分の軸が固まってきます」

 土方君 「基本的に大手就活メディアを使うと思いますが、それだけに縛られずに他にどういう手段があるのかを試行錯誤した方がいいです。大量に企業が並べられていても知っている企業しか選べなくなり、結果的に競合してしまいます」

 A君 「社会人は学生が思っている以上に親身に考えてくれます。そういった方々に助けられながら自分の道を探していけばいいのではないでしょうか」

聞き手から
 「ブランドにすがりついて、退職した後に何もなくなるのが怖い」とは今回の座談会を象徴する言葉だった。大手志向の高まりの中、自らに合った就職先を貪欲に探す姿勢は印象的だ。「ブラック企業」や「不安定」といったマイナス要素がある一方、「応募者が少ない分、ベンチャーの方が親身に向き合ってくれる」との意見もあった。大手企業にはない時間と距離感で互いを理解することが、確かなキャリアを切り開く道になりそうだ。
(結城立浩)

[日経電子版2016年7月28日付]

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