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[ liberal arts-大学生の常識 ]

ふんわりかき氷、
家でも食べたーい

ふんわりかき氷、家でも食べたーい

 かき氷は人気店で食べると、独特なふわふわした食感が、何ともおいしい。自宅にある家庭用かき氷機でもあんな雪解けのような味に近づけることはできないか。工夫を重ねてみた。

 自作する前に専門店の味を偵察してみた。天然氷で人気の埜庵(神奈川県藤沢市)を訪ねる。「生めろんみるく」を食べると一口目から明らかに違う。シャクっという心地よい食感の後、氷があっという間に消えていく。口どけのよさは驚きだ。夢中で次のさじ、また次と食べ進めた。

 家にあるかき氷機は6000円ほどした。でも埜庵のような食感が出たことはない。「何が違うんですかねえ」。ぼやき気味に店主の石附浩太郎さんに尋ねると「業務用の刃は良く研いであるから、家で同じように薄く削るのは難しい。でも氷をゆるめれば、だいぶ食感は良くなるはず」。これは大ヒントだ。早速帰って挑戦しよう。

水ですすぐとヒビが入る

 最初はいつものようにかき氷用専用カップに180ミリリットルほどの天然水を入れた。冷凍庫から出してすぐ削る。直径10センチ、高さ5センチほどの円柱形の氷は表面を白い霜が覆い、硬い。かき氷機は氷に当たる刃の量をねじで調節できる。削りが「細かい」段階に設定するとガタガタと空回りした。最も「粗い」目盛りにしてやっと氷が削れて出てきた。ガリガリした食感で、頭にキーンとくる。

 「ゆるめる」とは溶けて軟らかい状態のことのはず。一度水にくぐらせれば軟らかくなるのではないか。氷を水道水ですすぐと、ヒビが入ってしまった。削れるが途中でがたがたと安定しない。目盛りは「やや細かい」でOKだったが、ヒビがあるため、1個からできあがった量はいつもの8割ほどに減ってしまった。それでも1さじすくって食べると、なかなかいける。

 氷を室温に置いて溶かすのはどうか。製氷カップを取り出して数分待ち、氷の表面が溶けて透明になってから削る。刃当たりがよく、目盛りは「やや細かい」で滑らかに薄く削れる。食べると、ふんわりとした口どけ。これは埜庵に一歩近づいたぞ。


混ぜ混ぜ作戦 食感軟らかく

 もう一段進化したい。氷の性質・構造に詳しい東京理科大の川村康文教授(物理学)を訪ねた。氷は水分子同士が水素結合でくっついている。「モノを溶かして凍らせると結合が緩くなり、氷が軟らかくなる」と川村教授は言う。

 よし、混ぜ混ぜ作戦の開始だ。「例えば砂糖なら水の量の10~20%ほど加えれば氷の性質がだいぶ変わる」と助言を受けた。180ミリリットルの水に大さじ2杯(18グラム)入れ、かき混ぜて溶かしてから凍らせた。同時に、調味料の定番の食塩も試す、重さ18グラムで量は大さじ1杯分。同様に氷を作った。できた氷を室温で溶かして削る。どちらもさらさらで、ふんわりと仕上がった。食感は実にいい。ただ食べると砂糖氷はかなりの甘さだ。食塩氷はしょっぱ過ぎて、かき氷には向いていない。

 「無味ならゼラチンや寒天がいい」。川村教授の言葉でゼラチンを試す。粉ゼラチンの箱にはゼリーの製法として「50ミリリットルの熱湯で5グラムのゼラチンを溶かし、水200ミリリットルを加えて混ぜる」と書いてある。この通りの分量で製氷カップに注いで凍らせた。

 冷凍庫から出したゼリー氷を削ると刃がうまく当たらず、かき氷機がガタガタ震える。最も粗い目盛りでニュルニュルとゼリーが出てきた。食感はもったり、ザラザラ、口どけという感覚ではない。どうやら分量調整が必要だ。

 次は和菓子の食材、寒天だ。粉寒天の箱には「500ミリリットルのお湯に4グラムの粉寒天を加えてよく混ぜてください」と書いてある。こちらは凍らせる前からさらさらしている。冷凍室から出し、室温で溶かして削ると、これまでで最も快適だった。最も細かい目盛りで削れ、かき氷は薄く、削り幅があきらかに広い。削り上がって連なった氷は専門店並みにふんわりと積み重なる。味と香りに混ぜ物が入っている感じはなく、完璧だ。

砂糖を溶かして基本のシロップを作る

 そういえば台湾風かき氷店アイスモンスター表参道店(東京・渋谷)に1時間並び、食べたマンゴーかき氷は味が違った。日本の伝統的なかき氷のように氷を削ってシロップをかけたものではない。果汁ごと凍らせて削った印象だ。口の中でしっとり溶ける。シャーベットのような状態。

 混ぜ混ぜ作戦を応用すれば、アイスモンスターにも近づけるかもしれない。マンゴーピューレと牛乳を2対1の割合で入れ、練乳を少し加えてよくかき混ぜて凍らせてみた。削るとまるで降りたての雪のように、薄くふんわり積み上がる。食べると甘さのバランスがいい。この食感が店でなくても味わえるとは。ぜひ一度挑戦してほしい。

記者のつぶやき
 完熟果実で特製シロップ
 埜庵の石附さんに聞いた基本のシロップは実に簡単。水800ミリリットルを沸かして砂糖500グラムを溶かす。和三盆やグラニュー糖、三温糖、黒糖、水あめなど何種類か混ぜれば、風味や香ばしさの幅が豊かに仕上がる。日本かき氷協会の小池隆介理事長は「熟した果実をジューサーにかけて冷やすだけでもおいしいシロップになる」。熟したメロンの果汁をかき氷にかけてみた。若干甘さが足りず、作りおきの自家製シロップを加えてちょうどよい甘さ。素材の新鮮さと手づくりの楽しさでより一層かき氷をおいしく感じた。
(小柳優太)

[日経プラスワン2016年7月23日付、日経電子版から転載]

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