キャリア教育から 抜け落ちていた「ライフ」
これからの女子キャリと生き方(2)
こんにちは。manma代表の新居日南恵です。これからの女子のキャリアと生き方についてお話させてもらっているこの連載、前回は私の高校生時代のお話をさせてもらいました。内気な女子高生だった私が踏み出した最初の"キャリア"は、憧れの先輩の背中を追いかけては様々な学生主体の活動に奔走した日々でした。今回はそんな活動を通して私が感じたこと、そしてその想いが「manma」の設立という形になるまでの経緯を紹介したいと思います。
最初のキーワードは「自己肯定感」
高校時代、様々な学生団体で活動する中で「自己肯定感(自分の存在そのものに対する肯定感)」という言葉が私の中ではキーになっていました。たくさんの同世代と関わる中で、自分の存在に自信が持てない人たちとの出会いを多く経験したからです。
例えば容姿や学力に恵まれていて十分幸せに見えていた友人は、自分に自信がないために過剰にダイエットに走り拒食症に。彼女は何も食べられないどころか、食べすぎたと感じると恐怖で苦しくなってしまうと話していました。また友人の中には、大切な人がいなくなるのが不安で、暴力で傷つけてしまうという人もいました。
そんな経験から、私の関心は政治や経済などの「社会」から、そこで暮らす「人」に移り変わっていきました。自己肯定感は、未来を生き抜く希望につながるとても大切なものです。そしてそんな自己肯定感は、たくさんの時間を過ごす家庭での環境に大きく左右される。そんな風に考えていた私はAO入試のテーマを「子供の自己肯定感」とし、大学時にはそんな自己肯定感を育む場所である「家族」をテーマにした活動を行おうと心に決めました。
世間では「キャリア」とは働くことばかり
高校時代に感じたもうひとつのキーワードは「ライフ」です。学生団体での活動は、社会で活躍する方々からのキャリア教育を受ける機会をもたらしてくれていました。しかし、お話の中身はビジョンの描き方やプレゼンテーションスキルなど仕事に関するものばかり。誰一人として「ライフ」の部分については語ることはなく、私の中に結婚・出産・子育てに関するイメージは一向に湧いてきませんでした。
世間では「キャリア」とは働くことばかりを意味するものであり、「ライフ」の部分はほとんど無視されていたのです。特に驚いたのはカタリバの活動で出会ったとある女子高生の話。彼女は将来について考える際に「結婚や子育てを基軸に人生設計をしていたら先生に怒られた」と語っていました。仕事と「ライフ」は併せて考えなければならないもののはずなのに、みんな仕事のことばかり。そんな現状に問題意識を持ち、結婚・出産・子育てに対してもっと真剣に考える社会の風潮や機会が必要だという思いは、日に日に強くなっていきました。
思いを形にできずにいた日々
「家庭で育まれる自己肯定感」や「キャリア教育におけるライフの扱い」に関する漠然とした問題意識を持ちながらも、私はそれらの想いをなかなか行動に移しませんでした。いつも組織の中ではリーダーをサポートする役として活動してきた私は、自分がトップに立つのは向いていないと決めつけて、カリスマ的リーダーがあらわれる時をずっと待っていたからです。しかし、そんな人が都合よく現れるはずもなく、サポートする力を証明する何かが欲しいと思い立ち、秘書検定を取ってみたりはするものの、モヤモヤばかりがたまる日々が続きました。
そんなある日、当時お世話になっている方にそのことを話すと、いつもは穏やかなその方が目の色を変えて私を叱ってくれました。曰く、「代表タイプじゃないという気持ちは分かるが、まだ君は代表をやってみたことがないのに、向くか向かないかどうしてわかるんだ」と。「一度、やってみてダメならサポート役に回ればいい、リーダーを経験したサポーターの方がずっと価値がある」。そう言われました。
そして何より、「仮に大学時代をかけてその問題に取り組んで失敗したって、何も失うものはない。しかもまだ19歳と若いあなたは、今活動に取り組み始めれば絶対にその分野でトップになれる。まずはその想いがあるなら、少しでも早めにチャレンジしてみるべきだ」と。
女子大生が安心して母になる社会をつくるために
激励を受けた私は2人の女子大生を紹介して頂きました。その2人はそれぞれ食の安全と、女性のキャリアに興味があり、私とは関心がある分野はバラバラ。はじめはどうなるものかという気持ちでいっぱいでした。しかし、実際に会って話をする中で3人は共通の考え方を持っていたことが判明しました。それが、自分たちお母さんになった時に安心して暮らせる社会をつくりたい――。現manmaのコンセプトだったのです。日を待たずして学生団体「manma」は誕生し、女子大生3人による奮闘の日々が幕を開けるのです。そんな「manma」については次回に詳しくお話したいと思います。
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