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日本経済新聞「未来面」
片野坂真哉・ANAホールディングス社長
からの課題「30年後の世界で役に立つ
ヒコーキを教えてください」

日本経済新聞「未来面」片野坂真哉・ANAホールディングス社長からの課題「30年後の世界で役に立つヒコーキを教えてください」

 日本経済新聞の未来面は、読者や企業トップの皆さんと課題を議論し、ともに作っていく紙面です。共通テーマは「革新力」です。今回はANAホールディングス社長・片野坂真哉さんからの「30年後の世界で役に立つヒコーキを教えてください」という課題について、学生の皆さんからの多数のご投稿をいただきました。

 ここで紹介したのはほんの一部です。掲載できなかったアイデアを日経電子版の未来面サイトで紹介しています。

【課題編】「30年後の世界で役に立つヒコーキを教えてください」

ANAホールディングス・片野坂真哉社長「機内と空港、楽しんでほしい」

 今年はANAが国際線に就航してからちょうど30年になります。路線網は世界41都市に広がり、旅客数も日本一となりました。2020年には東京五輪を控え、訪日客が急増する見通しです。次の30年後にもお客様に満足していただくためには、我々も新たなチャレンジが必要だと思っています。

ANAホールディングス・片野坂真哉社長

 ANAの前身は戦後誕生した日本ヘリコプター輸送という会社です。コード名の「NH」や、レオナルド・ダ・ヴィンチのヘリコプターの絵をあしらった以前のロゴがそれを物語っています。世界の航空会社では後発企業でしたが、1999年に航空会社グループの「スターアライアンス」に加盟したことをきっかけに飛躍のチャンスをつかみました。

 当時は日本人による海外渡航が増えた時期です。空港のラウンジやマイレージのポイントを共有したり、荷物を現地までスムーズに運べたりしたことで、お客様に快適な空の旅を提供できるようになったからです。

 航空会社としては、飛行機という移動手段を提供することが基本ですが、機内や空港で過ごす十何時間という空間を楽しんでもらえるソフトやサービスも非常に重要だと考えています。隣同士の席が互い違いになった「スタッガード」と呼ばれる水平に倒れるシートを他社に先駆けてビジネスクラスに導入したのは、そのためです。

 ICカードを使って簡単に搭乗できるようにした「スキップサービス」を導入したのも我々が最初です。インターネットを使い、座席や食事などのご要望も事前にうかがえるようにしました。

 もちろん飛行機も常に最新機材を投入してきました。米ボーイング社の最新型機「787」や、欧州エアバス社の総2階建て大型機「A380」などがそうです。ビジネス需要を見込み、三菱航空機が製造する国産ジェット旅客機「MRJ」も導入する予定です。

 では、未来の「ヒコーキ」とはいったいどんなものになっているでしょうか。あえてカタカナで表記したのは、ハードウエアとしての進化はもちろん、人工知能(AI)によるクルマの自動運転のように、ユーザー体験が大きく変わることが予想されるからです。

 そこで皆さんにお願いですが、30年後の世界で役に立つヒコーキをぜひ提案してください。たくさんのご応募をお待ちしています。
(日本経済新聞2016年9月5日付)

◇    ◇

【アイデア編】

アイデア001 空の上の優先座席
佐久間 有紀(武庫川女子大学文学部3年、20歳)

 私には寝たきりの兄がいる。家族で飛行機に乗るたびに「あればいいな」と思うものがある。それは優先座席だ。電車や新幹線のような優先座席ではなく、エコノミークラスでも真横に倒すことができる優先座席だ。寝たきりの人は、支えやベルトがあると座ることが可能だが、長時間その状態だと腰や首が座っていないので、辛いのではないか。ファーストクラスのように個別の座席は真横にできるが、兄のような寝たきりの人は隣に誰か支える人が必要なので厳しい。その便に必ずしも身体の不自由な人が乗っているとは限らないので、その時は空席にするのではなく、一般の人も乗れるように優先座席と分からないような座席にすればよいのではないか。30年後には、身体が不自由な人でも飛行機で快適に過ごすことができていればいいなと思う。

アイデア002 快適性を向上させたヒコーキ
仙田 裕紀(東北大学大学院工学研究科修士1年、23歳)

 30年後には「快適性」を向上させたヒコーキが活用されるだろう。まず機体には新素材「セルロースナノファイバー」から成る透明強化プラスチックが用いられる。透明な機体なので機内空間を広く感じることができる.この強化プラスチックには多機能センサーが内蔵されており、乗客は機体に触れることでデジタルコンテンツを楽しむことができる。機内に設置されたシートは人工知能(AI)により乗客の好みに応じて変形する。空席は折畳まれ、貨物室に収納される。シートはAIにより機内空間を快適に活用できるように配置される。機体には水素エンジンが搭載され、エンジンから排出される水を回収することで機内にシャワールームを設けることができる。翼は飛行状態に応じて、騒音や空力面において最適な形状に変形する「モーフィング翼」となる。空港では機内清掃の間にロボットが手荷物を棚に収納することで搭乗時間を短縮する。

アイデア003 宇宙観光できるように
今田 浩暢(自営業、47歳)

 30年先には、宇宙に対応した旅客機が誕生している。燃料の燃焼効率を飛躍させたハイパワーでエコなエンジン、大気圏への往来に耐えられる機体、それらの技術革新で一気に宇宙空間へ安全にたどり着く。室内は宇宙空間でも耐えられる特殊ガラスで覆われていて、大気圏を出れば機体の外壁を開け、地上では見ることが出来ない満天の星と宇宙から見た地球を観賞できる「宇宙観光」を実現する。移動する間の快適さやおもてなし、食事などの提供だけではなく、従来にない機内での滞在をメーンとした「降りないで空旅を楽しむ乗り物」のサービスレベルを実現させる。宇宙からは、雷・台風・オーロラなどの気象の変化から世界遺産までが確認でき、老若男女問わず、地球と宇宙を同時に学べることになる。

アイデア004 自動制御、安全で優しく
北浦 由紀(自営業、49歳)

 ソーラーパワーで稼働する安全で優しいヒコーキ。天候や状況にあわせて高度、ルート、操縦など全てコンピューター制御で、ヒコーキが判断し動く。危険時も自動回避するので事故は起こさない。椅子は体にフィットするように変形する。脚、背中以外に、目、顔のマッサージ機能も搭載。3D眼鏡のような機器で、音楽、読書、ゲーム、映画、プラネタリウム、コックピットから見えるリアルな景色まで楽しめる。また、機内の席の離れた知人、日本にいる家族と顔を見ながらの会話も可能。飲み物や食事、免税品はタッチパネルのスクリーンで選べば、ロボットが直ちに運んでくれる。支払いは網膜認証。金額の一部をどこに寄付するか世界中の財団から選べる。自宅でケータリングするように機内でもシェフがオーダーメイドで食事を作ってくれる。30年後そんなヒコーキがあればウレシイ。

【講評】ANAホールディングス・片野坂真哉社長

 お仕事で飛行機をご利用されているビジネスパーソンやこれからユーザーになっていただける学生など、多くの方から貴重なご提案をいただきました。いずれも示唆に富み、私たち業界人には気付かないアイデアも多数ありました。

 「未来のヒコーキ」については私も普段から想像を巡らせています。例えば、子供のころに夢見た宇宙ステーションなどです。その点では「宇宙観光」のご提案にはワクワクさせられました。今は「空」と「宇宙」は別なものと考えられていますが、その境目が取り払われる日もいずれ来ることでしょう。

 快適な空の旅を願う私たちは、飛行機のハードだけでなく、ソフトの観点も重要だと思っています。ソーラーパワーで飛び、機内の様々な新しいサービスをご提案くださった「優しいヒコーキ」には非常に共感いたしました。

 アイデアを選ぶ際、近未来に実現できそうかという点も着目しました。ただ「空の上の優先座席」のご提案を拝見し、今からできることもあるとハッとさせられました。ぜひ皆さんからのご提案を生かし、これからもANAをご利用いただけるよう努めて参りたいと思います。
(日本経済新聞2016年9月26日付)

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