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人事部長のひとりごと(3)新卒で「グローバル」はありえない?

authored by 日経カレッジカフェ×人事部長
人事部長のひとりごと(3) 新卒で「グローバル」はありえない?

 はじめまして、帝人の人事部長、藤本治己といいます。この夏休みに、昔、赴任していたドイツに10日程遊びに行ってきました。夏のドイツはカラッとしていて、気温は25度以上になることはまれです。夜は9時頃まで明るくて、ビールはうまいし最高です。毎日美味しいソーセージと重たいデザートを食べていると、あっという間に太りますが。

ドイツではまず小学4年で将来を選択

 ご存知かもしれませんが、ドイツの教育制度は日本と違っていて、小学校4年生のときに、一旦、将来の進路を決定します。大学に進学したいなら、9年制のギムナジウムに行ってアビトゥ―ワという大学入学資格を取得する必要があります。だいたい大学進学率は、30%くらいとのこと(日本は50%以上ですね)。大学以外では、有名なマイスターを目指すコースや専門学校に進むコースなどがあります。

 大学や専門学校もどんな仕事をするのか、それぞれの大学で学んだことが直結しています。多くの大学生が長期の無給のインターンシップをやり、その会社で良い評価を得ることが就職先に影響するようです。ドイツ人は幼いころから、将来の仕事(就職)を意識しながら大人になるため、社会に出る前から、自ら仕事ができるように努力することが当然の社会です。また大学でダブルデグリー(経済と哲学、法律と歴史など)は普通です。4年ではまず卒業せず、5年以上かかりますし、卒業が厳しいので中途退学も30%弱だそうです。

グローバル人材のイメージとは

日本とドイツでは受験事情も大きく異なる(撮影協力:神田外語大学)

 グローバル人材の定義は多数ありますが、文部科学省の「産学連携によるグローバル人材育成推進会議」がまとめた報告書によると、「世界的な競争と共生が進む現代社会において、日本人としてのアイデンティティーを持ちながら、広い視野に立って培われる教養と専門性、異なる言語、文化、価値を乗り越えて関係を構築するためのコミュニケーション能力と協調性、新しい価値を創造する能力、次世代までも視野に入れた社会貢献の意識などを持った人間」(「産学官によるグローバル人材の育成のための戦略」、2011年4月28日)。このすべてを兼ね備えていなければならないとすると、グローバル人材とはスーパーマンみたいな人に思えます。

 では、皆さんはグローバルに活躍するという言葉にどんなイメージを持っていますか?海外に駐在する、頻繁に海外出張をしている、外国人と一緒に席を並べて働いている、毎日外国語を駆使して交渉する、などでしょうか? そのために、どんな資質や能力が必要だと思いますか? 語学力や異文化対応能力は、すぐに思いつきますね。では、学生時代にどんな勉強や経験をしたら良いのでしょうか? 海外留学、その国の歴史や宗教を学ぶ、外国人留学生と親しくなる、というようなことが思い浮かぶかもしれません。

まず日本国内できちんと仕事ができること

 帝人は「グローバル人財」(ここから、あえて「財」を使います)の定義を、「母国と同じように外国でパフォーマンスを上げられる人」としています。言い換えると、「日本国内で困難なビジネス環境であっても、成果を出し続けられる人が、海外に関わるビジネスであっても同様の成果を期待できる」となります。

 学生から社会人になりたてで、グローバル人財の人はほとんどいないでしょう。というのも、まず一人前以上に仕事ができることが最低条件だからです。一人前に仕事ができるようになるためには、知識や能力を、求められる水準まで上げる必要があります。その人材育成は、仕事を通じての育成(on the job training)と教育研修(off the job training)そして、上司を含めた周囲からのフィードバックが3本柱といわれていますが、一人前以上に成長するために、時間が必要であることは、ご理解いただけるでしょう。

人間力とリベラルアーツが不可欠

帝人は「グローバル人財」の定義を、「母国と同じように外国でパフォーマンスを上げられる人」としている(撮影協力:神田外語大学)

 グローバルで活躍するためには、語学力や異文化対応力が必要ですが、これらは社会人になってからでも十分身に付けられるものです。したがって、学生の皆さんには、むしろ好奇心、柔軟性、発信力、実行力や主体性といった基礎的な人間力について、自分の強みを伸ばしていくことを期待します。また歴史や文化・政治といったリベラルアーツは、グローバル人財には必須です。その教養がないと、海外のお客様との会食で恥ずかしい思いをすることになります。またビジネスマンとしての軸を持つには、リベラルアーツを身に付けることが早道と言われています。大学時代の一般教養をバカにしていたことを後悔するのは、社会人の常識です (笑)。

 さて、日本の大学生は、新卒一括採用システムの中で、昨年の厚労省の調査では、就職希望者の内定率は、97.3%と過去20年で最高でした。ドイツのように就業力が入社前に準備されるのではなく、日本では入社後、社内育成システムで就業力を付けます。このシステムの良さは、もちろんあると思いますが、将来のグローバル人財である意識の高い、優秀な学生から、そっぽを向かれないように早期に改善していくのが喫緊の課題と感じています。

 ちょっと、やんちゃでグローバルに活躍したい人財を大募集しています。

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