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「違い」を愛せる社会に(2)「二重国籍」の私が思うこと

「違い」を愛せる社会に(2) 「二重国籍」の私が思うこと
authored by 岩澤直美Culmony代表、早稲田大学3年

 2週間ほど前になりますが、民進党の代表に蓮舫さんが選出されました。これまでの旧民主党のイメージを払拭する存在として期待されている方も多いのではないでしょうか。しかし、その蓮舫さんですが、代表選の直前には二重国籍問題で謝罪するという事態に追い込まれました。

 日本では重国籍は認められておらず、日本国籍を選択する場合には、「外国の国籍の離脱に努めなければならない」と国籍法に明記されているのです。今回はご本人が破棄したと思っていた台湾の国籍が残っていたことが判明し、大きな批判が寄せられました。

 私自身、日本とチェコという2つの国籍を持って生まれ、国籍の選択をしなければいけない期限である22歳を目前に控えている身として、今回の件に関しては何とも言えない複雑な思いが溢れてきました。みなさんにどこまで理解、共感して頂けるかはわかりませんが、ハーフという境遇にある若者の一人が、この件に関してどんなことを感じ、そして考えていたのか、その一端でも知っていただけたら幸いです。

国籍を破棄するという気持ち

 国籍を選ぶというのは、簡単なことではありません。私自身、幼いころから「22歳までに国籍を選ばないといけない」と聞いていたために、常に自分のルーツや国籍について意識する機会が多くありました。そんななか、いざ選択をしなければいけない21歳を迎え、改めて現実的にどうするかを悩んでいたタイミングに、今回の騒動が起こったのでした。

 どちらかの国籍を破棄する――。それは私自身の一部を消してしまうかのような感覚で、切なく、とても胸が痛みます。これは日本国籍のみを得ている方々には理解しづらい感覚かと思いますが、たとえば腕や足など、身体の一部を切り取られることを想像していただけたら、それに近いものがあるように思います。

 そんな複雑な心境をうまく表現することが難しいのですが、それでも私のなかでは「日本人でありたい」という思いが日増しに強まっているのを感じています。理由はふたつ。ひとつは母がチェコ人であるためにチェコ国籍を有しているものの、生後半年間しかチェコ在住経験がないこと。もうひとつは、ハンガリーやドイツなど複数の国に在住した経験があったからこそ育まれた「日本への愛国心」、そして「この素敵な日本をよりよい社会にするために貢献したい」という想いです。

 「私は日本の国会議員として、この国、そして子供達の将来を紡ぎたいと思っている」と語る蓮舫さんの言葉を、いぶかしく感じていらっしゃる方々が少なくないことは理解しています。しかし、同じ二重国籍という境遇にある私に、彼女の言葉は強く、まっすぐに響いてきました。自身のアイデンティティーの一部を破棄してまでも、「日本を良くしたい」という想いが伝わってきました。そうした彼女の覚悟や苦労を少しも想像することもなく、誹謗中傷にも似たコメントが多く寄せられている状況に、なぜだか涙が止まりませんでした。

私(子ども時代)

重国籍保持者が活躍する国もある

 そもそも、国際的に見れば、重国籍を認めている国は珍しくありません。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、ブラジル、ペルー、オーストラリア、ニュージーランドなど枚挙に暇がありません。また世界には重国籍の保持者や移民が政治家や経営者として活躍しているケースも多く見受けられます。

 ちなみに、私の母国のひとつであるチェコは、周辺の大国に何度も侵略された過去もあることから、保守的な側面が強いように思います。それでも、2014年には重国籍を認める法案が通り、それ以前に破棄をしてしまった人がチェコ国籍を再取得できるようにもなっています。また、以前には日系人男性が大統領に出馬表明したこともありました。

 私は重国籍を認める国が正しく、日本が間違っているなどと断罪するつもりはありません。「これまで」の日本にとっては、現行の制度や法律が適切だったのかもしれません。しかし、時代の変化とともに大いにグローバル化が進んだいま、「これから」の日本にとって、日本に住む人たちにとって、どのような政策や法律が適切なのかを議論していく必要があるように思います。

 もちろん、政治家が重国籍であることを認めるかは、また別の議論が必要になってくるでしょう。しかし、私たち一般国民の重国籍を認めることには、いったいどんなメリット・デメリットがあるのか、いま一度問い直すタイミングが訪れているのではないでしょうか。

Culmony活動の様子

多様性をリスペクトする社会を目指して

 私は多様性をリスペクトする社会を目指してCulmony(カルモニー)という会社とNPOを経営し、日本人の子どもたちに向けた多文化理解教育を展開しています。今回の議論の中で、理不尽な批判や寛容性に欠けたコメントを多く目にし、改めてその道のりが途方もなく長いものであることを痛感しました。この悔しさと切なさと日本への愛を胸に、今後も活動に力を入れていきたいと心から思う契機となりました。

 現在、日本で生まれる子どもの30人に1人は、外国籍の親を持つと言われています。そうした子どもたちが大人になる将来、日本はどんな国になっているのでしょうか。