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NYうどんブームの火付け役に
つるとんたんの挑戦

NYうどんブームの火付け役につるとんたんの挑戦

 世界の食が集まるニューヨーク。日本食も高級すしからラーメン、焼き鳥など幅広く楽しめる。だがいまひとつ日本食として注目を浴びていなかったのがうどんだ。日本のうどん店「つるとんたん」が海外初進出先としてマンハッタンを選び、閉店した人気店「ユニオン・スクエア・カフェ」の跡地に8月末に店舗をオープンした。粉も日本から運ぶというこだわりだが、うどんブームの火付け役となるのだろうか。

 マンハッタンのダウンタウン、ユニオン・スクエア。8月29日にオープンしたばかりの「つるとんたん・うどん・ヌードル・ブラッセリー」の前には夕食時ともなると行列ができる。メニューは日本同様、大皿に盛られたコシの強いうどんがメーンだ。1番人気はウニを載せた24ドル(約2400円)のうどん。目下、ニューヨークの和食通の間ではウニが大人気なため注文が相次ぐ。

 2番目に人気があるのは「メンタイコ・キャビア・ウドン」。めんたいこになじみがない米国人でも魚卵であることがわかるように、また高級感を出そうとあえて「キャビア」とつけた。価格は16ドル(約1600円)とうどんにしてはやや高めだが、ニューヨークのカジュアルレストランでは受け入れられる価格だ。

印象は「こじゃれたレストラン」

8月29日にオープンした「つるとんたん・うどん・ヌードル・ブラッセリー」(ニューヨーク市)

 てんぷらやカレーなど様々なうどんメニューの価格帯は14~24ドル。そのほか、ギョーザやからあげ、すしロールなどのサイドメニューも豊富に取りそろえた。日本のメニューに米国のトレンドを取り入れ、生み出した。うどんの粉と塩も日本から運び、店内で作るこだわりようだ。つるとんたんの特徴ともいえる大きな器も日本と同じだ。

 和の雰囲気とニューヨークのモダンさをミックスした店内は「うどん屋」というより、こじゃれたレストランだ。実際、ウエーティングバーも備えてある。1本500ドルのワインや86ドルの焼酎、日本のビールやウイスキーもメニューに並ぶ。1杯13~15ドルのオリジナルカクテルも加えた。

看板商品の「メンタイコ・キャビア・ウドン」

 初日の午後7時には約80人が列をなし、2時間待ちの盛況ぶり。顧客の9割以上は麺類になじみがあるアジア系だ。クリームうどんを食べていた中国出身の女子大学生(25)はソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)で開店を知った。「想像以上においしい」と太めの麺をすする。実際にニューヨークでは口コミやSNSでレストランの人気に火が付く。アジア系の顧客の多くが「フェイスブックやツイッターでつるとんたんを知った」と話した。

 唯一の白人顧客だった生粋のニューヨーカーという67歳男性は、以前この地に店を構えていた「ユニオン・スクエア・カフェ」の常連客だった。米国料理に新風をふき込んだダニー・マイヤー氏の人気店だっただけに、ニューヨーカーの間ではいったいどのような店が入店するのか噂となっていた。この男性はてんぷらとカレーうどんをすすりながら「ファストフード店が入ったら憤まんやるかたなかっただろうが、また来たいと思える店ができてよかった」と満足げだ。ちなみに、東京ミッドタウンにある「ユニオン・スクエア・トウキョウ」はユニオン・スクエア・カフェの海外初の姉妹店だ。

ダシと相性がいい? NYの水で日本の味再現

 日本でつるとんたんを展開するカトープレジャーグループの加藤友康社長兼最高経営責任者(CEO)は、「手作りにこだわってきたので海外展開は難しいと思っていたが、海外1号店であるニューヨーク店では日本の味を再現できた」と胸を張る。海外では日本と水質の違いもあり忠実に味を再現するのは難しいが、ニューヨークの水は日本の水に近く、思い通りのダシがとれたようだ。

顧客の大半はアジア系だ

 ニューヨーク店を運営するダイニングイノベーションの西山知義会長兼CEOはもともとつるとんたんのファンで、その創作性や内装から「海外でも絶対に成功すると確信した」。「海外でやるならまず米国、それも一番ブランドを構築しやすいニューヨークだと決めていた。日本人客がおいしいと感じる基礎的な部分は崩したくない」と味に妥協はしない姿勢を強調した。

 米国内でもとりわけ食のレベルが高いとされるニューヨークで成功すれば、全米展開も視野に入る。「10年以内に北米で50店舗を展開したい」(西山氏)と意欲的だ。10月1日にランチも始めたら、1日あたり800人の来客を見込むという。現在の顧客層はアジア人が中心だが「あくまでもターゲットは米国人」(西山氏)。ラーメンブームが一世を風靡したニューヨークで、うどんブームに火が付けられるか。つるとんたんの挑戦は始まったばかりだ。
(米州総局 高橋里奈)[日経電子版2016年9月16日付]

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