日本経済新聞 関連サイト

OK
[ career-働き方 ]

先輩からアドバイス誰にも負けない強みを
小説家 磯崎憲一郎さん

先輩からアドバイス 誰にも負けない強みを小説家 磯崎憲一郎さん
撮影協力:神田外語大学

 4年生は大学生活も残すところあと半年、総仕上げとしてどう過ごしますか。人生の次のステージに向けて気持ちの切り替えも必要です。会社勤務の経験があり、現在は小説家として活躍する磯崎憲一郎さんに、ポイントを聞きました。磯崎憲一郎さんは商社マン時代に採用部門の課長を務めるなど、学生を間近で見てきました。

実社会で何をするか

磯崎憲一郎(いそざき・けんいちろう)さん 1965年生まれ。早稲田大卒業後、三井物産入社。在職中に小説を執筆し始め、2009年に「終の住処」で芥川賞を受賞。15年9月に退社し東京工業大教授に就任した。

 「当然ですが就職はゴールではなくスタートラインにつくことにすぎません。今は就職活動が大変なので、内定がゴールだと錯覚している学生が非常に多い。内定を得た時の方がモチベーションが高く、入社式の時は気持ちが落ち着いてしまっています」

 「実社会に出るというのは、会社のリソース(資源)とフィールド(事業)を使って自分がやりたいことを実現していくということです。社会に出て何をやるか、どう生きるかを考えてほしい」

 「これからの日本は転職が当たり前の時代になります。自分のキャリアは自分で作っていく意識が必要です。誰にも負けない、圧倒的な強みを身につけてほしいです。強みを持つ人は会社を飛び出しても自らの力でやっていけるし、企業も手放したくありません。強みとは例えば、この商品の知識は誰にも負けないとか、この国・地域なら自分が一番よく知っている、といったことです」

 「殺伐とした厳しい時代になると感じる人もいるかもしれないが、私はそうは思いません。米国駐在時代、米国のビジネスマンは競争の厳しい世界にいる割に日本のサラリーマンより幸せそうに見えました。自分で自分の生き方を選んでいるからです。同じ会社で働き続ける生き方は、守られている一方で息苦しい部分もあります。強みを身につけるより、社内での自分の立ち位置の確保に莫大なエネルギーを費やしてしまっています」

問われる人間の核

 「作家としてデビューした頃、企業というオーガナイズされた世界にいた人間が野蛮な作家の業界でやっていけるのか、2つの世界の間で股裂きになってしまうのではないかと恐れていたところもありました。だがしばらくすると、サラリーマンと作家は表面的には違う仕事に見えても、いざというときには信念というか人間のコアな部分をさらけ出さなければならないという意味では変わらないことに気付きました。股裂きになるどころか1つに統合されるような感じがありました」

 「正解が分からない中で自分はこう考える、と信念をもって提示していく。どんな仕事も一番大事なところでは人間のコアな部分が問われます」

[日本経済新聞朝刊2016年9月28日付大学面から転載]

「日経College Cafe」のお勧め記事はこちら>>