他の人から学ぶ~「先輩」と「ライバル」を見つけよう
生涯キャリアの選択肢(13)
前回、ビジネスに必要な三つのスキルは、問題発見解決力(コンセプチュアルスキル)、人間関係力(ヒューマンスキル)と専門能力(テクニカルスキル)の三つで、このうちの問題発見解決力について述べた。今回は人間関係力だ。
学ぶべき先輩を見つけることから
仕事で実績を上げた人で、学んでいない人はひとりもいないと断言できる。学び方は人それぞれで、読書で学ぶ方法もあるし、学校に行く方法もある。そんな中で、社会で成功している人が共通してやっているのは、人から学ぶ方法だ。
ある大企業の社長は目が悪く、文章を長い時間読むことができなかった。その分、耳がすごく発達していて、日々色々な分野のリーダーと話して、その人たちの意見から学んでいた。まさに「耳学問」を実行していた。
社会人になってすぐは初心者なので、まずは社内で自分のモデルのような人を見つける。そしてモデルの言っていること、やっていることから、その中で自分が使えそうなことがあればどんどん取り入れていく。成長の早い人というのは、人のいい点を摂取する度合いが高い人だ。そのためには、そういう人を見つけなければならない。そして、いいところ取りをするスタイルを身に着ける必要がある。
社内の先輩を見つけることから始めるのだが、社内の人だけでは限りがある。同質性も高い。30代になれば、外に目を向けないと、得られるものは限られてくる。同じ業界の研究会や交流の場を活用したり、異業種交流会などに出ていってみよう。管理職になると、社外の役割が一気に増える。学びも出会いも、アウトプットも高度化する。経営トップを見ると、最後は経団連や商工会議所で社外の政策に関与している。このように、職位とともに社外でのプレゼンスは高まっていく。ただし、その出発点は社内の基盤作りで、それが十分でないと、根無し草になり、社外でも相手にされない。
自分が成長できるライバルとは
他方、ライバルの発見も大事だ。健全な競争心は自分を高める有効な方法だ。会社の中でライバルが見つかれば、それでよし。しかし、能力が高い人の場合は、社内には見つからないことがある。よくある間違いは、自分が一番できる、出世していると、それ以上のライバルがいないので「これでいいや」と思うことである。狭い世界の一番で満足してしまうことが落とし穴で、成長を止めてしまう。
社外に広くライバルを求めて、自分をいつもその人と比較して、学ぶべきところを見つける。こちらは20代から実行したい。できる人は世の中にはいくらでもいる。
学生時代にも、自分の大学に閉じこもらず、他大学、社会人と交流を広げよう。大学の中だけでは得られないものがある。早く人と交流する楽しみをつかんでしまおう。「人は、若い時に出会った人の範囲で成長する」のだ。
一橋大学社会学部卒業後、東京ガス入社。ロンドン大学大学院留学、ハーバード大学大学院修士課程修了。中東経済研究所研究員。アーバンクラブ設立、取締役。法政大学大学院博士後期課程修了、経営学博士。東京女学館大学国際教養学部教授(キャリア開発委員長)、一橋大学特任教授などを経て2015年より三菱商事社外取締役。18年から立命館大学共通教育推進機構教授。人材育成、企業経営、キャリアデザインを中心に研究し、実践的人材開発の理論を構築。研修・講演は通算1000回を超える。ビジネスリーダーの生涯キャリア研究がライフテーマ。著書は計61冊。就活関係では「受かる!西山式内定バイブル」(小学館)がある。
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