航空会社 全日空・日本航空から LCCまで拡大続く
学生のための業界ガイド2017(1)
学生の皆さん、将来どんな職業に就きたいと考えていますか? 日経カレッジカフェは就職活動の参考になるように、「業界研究2017」を連載します。今回は「航空業界」を取り上げましょう。日本では長く日本航空をはじめとする3社体制が続きましたが、1998年以降、新興航空会社が参入。現在ではLCCと呼ばれる格安航空会社も勢力を伸ばしつつあります。
長く続いた3社体制に風穴
航空会社は今も昔も、就職先として人気が高い業種のひとつです。日本では、全日本空輸の持ち株会社であるANAホールディングス、日本航空の大手2社に加えて、地方拠点の航空会社も増えました。1998年以降、相次ぎ就航した札幌拠点のAIRDO(エア・ドゥ)、北九州拠点のスターフライヤー、宮崎拠点のソラシドエアといった企業が地方を拠点とする主な顔ぶれです。
さらに、LCCが相次ぎ参入しています。2012年以降、ANA系のピーチ・アビエーションとバニラ・エア、日本航空が出資するジェットスター・ジャパンなどが相次ぎ就航しており、航空会社間の競争は激しくなっています。LCCとはローコストキャリアのことで、日本語では格安航空会社といわれることが多いようです。ちなみに従来型の航空会社のことはFSC(フルサービスキャリア)と呼びます。
全日空の国際線定期便は1986年から
学生の皆さんが生まれる以前、昭和の時代には日本航空、全日空、東亜国内航空(社名変更して日本エアシステムに、さらに日航が日本エアシステムを吸収合併)の3社による寡占体制が続いていました。
かつて全日空、日本エアシステムの2社は国内線が中心で、本格的に国際線を運航しているのは日本航空1社という時代がありました。全日空が国際線の定期便運航を始めたのは1986年のこと。東京―グアム線でした。もちろん現在では、全日空は国際線を積極的に展開しています。以前、全日空の役員が「自分たちが入社したころには、ビジネスで英語が必要になる時代が来るとは思わなかったよ」と話すのを聞いたことがありますが、まさに隔世の感がありますね。
安全な運航を維持するため、航空会社には多額の資金が必要となります。1998年以降、プレーヤーが増えたことで、運賃競争も起こりました。消費者にとって運賃が下がるのは嬉しい話ですが、航空会社からみると消耗戦を余儀なくされる危険があります。事実、日本を代表する航空会社だった日本航空が2010年、経営破綻し、会社更生法の適用を申請したのは衝撃的な出来事でした。その後、経営効率化に取り組んだ日本航空は再建を果たし、2012年には再上場したのは、皆さんもご存知の通りです。
世界の航空連合は3グループ
世界には、大きく3つの航空連合があります。協力関係にある航空会社のグループというわけです。全日空が加盟しているのが「スターアライアンス」で、ルフトハンザドイツ航空、ユナイテッド航空などが中心メンバーです。一方、日本航空が加盟しているのが「ワンワールド」というグループです。ブリティッシュ・エアウェイズやカンタス航空などが加盟しています。このほかに、「スカイチーム」というグループがあり、デルタ航空やエールフランス航空がメンバーとなっています。
ANAホールディングス、日本航空の売上高はともに1兆円台です。海外ではアメリカン航空、デルタ航空など、グループ売上高が3兆~4兆円台の規模という巨大企業も存在します。
スカイマークはANAが支援
最近話題になったのは、スカイマークの経営破綻でしょう。同社は大型機材の大量発注をめぐるトラブルがもとで経営が行き詰まり、2015年1月に民事再生法の適用を申請しました。日本では長らく3社体制が続いたと説明しましたが、実はそんななかで、規制緩和の流れに乗って1998年に登場したのがスカイマークでした。同社は新興勢力を代表する存在となり、健全な競争を促す上でも、ANAホールディングス、日本航空に対する第三極としての役割が期待されていたので、破綻は残念なことでした。
スカイマークは結局、ANAホールディングスの支援を受けることになり、2016年3月には再建を果たしました。実は、スターフライヤー、AIRDO、ソラシドエアといった各社も現在、ANAの出資を受けたり、運航上の支援を受けたりしています。日本航空が一度破綻した経緯があり、各社がANAに頼る状況になったのです。第三極と口で簡単にいっても、実際にはなかなか難しいものです。
新卒採用に積極的
現在、原油安が採算改善に寄与しているほか、訪日客の増加という追い風も吹いていて、日本の航空各社の業績は安定しています。路線網を拡充していることもあり、新卒採用にも積極的な企業が目につきます。
大手の年収は......?
最後に、学生の皆さんが気になる待遇について紹介しましょう。平均年収は有価証券報告書に掲載されています。各社のホームページにアップされているので、皆さんも簡単に確認できます。
日本航空の2015年度の有価証券報告書によると、地上勤務の社員の年収は679万円(平均44.3歳)です。これに対して、運航乗務員(パイロット)は1690万円(平均44.5歳)、客室乗務員は495万円(平均35.0歳)となっています。
一方、ANAホールディングスの場合、持ち株会社ですので社員数は141人と限られますが、年収は853万円(平均48.4歳)となっています。国際間の競争が激しい業界ですので、広い視野を持った人材が求められそうです。
(村山浩一)
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