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学生のための業界ガイド2017(2)百貨店~グループ化進む
コト消費対応が課題

学生のための業界ガイド2017(2) 百貨店~グループ化進むコト消費対応が課題

 「日経カレッジカフェ」では皆さんの就職活動の参考になるように、業界研究を連載しています。今回取り上げるのは「百貨店」。皆さんにはなじみ深い業界でも、最近は足が遠ざかっている人がいるかもしれません。小売りの世界ではちょっとクラシックなタイプですが、激しい業界再編が一段落し、今後は新たな店舗や大規模改装も相次ぐ予定です。ファッションに関心のある方、人に接する仕事に就きたい方にはぴったりの仕事があるはずです。

業界再編は一段落も、閉店、譲渡相次ぐ

 現在、日本には81社、236店(日本百貨店協会の売上高調査対象店)の百貨店があります。大別すると、全国展開する大手百貨店、近鉄百貨店や東急百貨店といった電鉄系百貨店、地域に特化した地方百貨店の3タイプ。丸井、パルコ、ルミネなどのファッションビルも近い業界といえるでしょう。

 この10年間で大きな再編の波に洗われたのが大手百貨店です。業界トップの三越伊勢丹ホールディングス(2015年度売上高1兆2872億円)は、2008年に老舗の三越とファッションに強い伊勢丹が経営統合して生まれました。三越伊勢丹を中核に、札幌市の地場百貨店の「丸井今井」などを運営する札幌丸井三越、福岡市の「岩田屋」などを運営する岩田屋三越などを傘下にもち、全国12社27店舗を展開しています。このうち販売が振るわない三越千葉店と同三越多摩センター店を17年3月に閉店することになりました。

 業界2位の高島屋(同9295億円)は東京と大阪に旗艦店をもつ老舗で、大手では唯一、単独での経営を続けています。名古屋でもJR東海との共同出資で「ジェイアール名古屋高島屋」を運営しています。

高島屋は結果的に再編から距離を置くことになった(東京都中央区の高島屋日本橋店)

 ちょっと他の大手と成り立ちが異なるのが3位のそごう・西武(同8034億円)です。今はセブンイレブンなどと同じセブン&アイ・ホールディングスの傘下企業ですが、前身のそごうは倒産、西武百貨店も経営不振という辛酸をなめています。いったんミレニアムリテイリングとして経営統合した両社は、2006年に流通業界第2位のセブン&アイ・ホールディングスの子会社となります。ただ、販売不振の店舗も多く、2016年に西武春日部店とそごう柏店を閉鎖。さらにセブン&アイの構造改革の一環として、そごう神戸店など3店舗を、後述するエイチ・ツー・オーリテイリングに譲渡することになりました。

経営統合しても店舗はライバル同士

 4位はJ.フロントリテイリング傘下の大丸松坂屋百貨店(同6775億円)。これもかつての老舗呉服屋系百貨店の大丸と松坂屋が2007年に経営統合、J.フロントリテイリングとして誕生しました。関西に強い大丸、名古屋と東京に拠点がある松坂屋と地域競合が少ないのが特徴です。ファッションビルのパルコも2012年にこのグループに入りました。

 業界5位の阪急阪神百貨店(同4316億円)は関西の電鉄系百貨店、阪急百貨店と阪神百貨店が2007年に合体して発足したエイチ・ツー・オーリテイリングの傘下企業です。阪急百の兄弟会社である阪急ホールディングスと阪神百の親会社の阪神電気鉄道との経営統合に伴う事業再編という形でしたが、J・フロントと違い、旗艦店が大阪・梅田で軒を接するライバル店として激しい販売競争をいまも続けています。一方、セブン&アイ・ホールディングスから関西にある3店舗を取得することは、基盤である関西地区の強化につながりそうです。準大手スーパーのイズミヤも2014年にエイチ・ツー・オーと経営統合しました。

事業をエイチ・ツー・オーリテイリングに譲渡するそごう神戸店(神戸市)

 このように大手百貨店は様々な形で再編を遂げましたが、これにはバブル経済崩壊以降の長期不況や、小売業界を取り巻く環境変化が大きく関係しました。百貨店は小売業界の中では富裕層や法人需要に支えられている部分が大きく、世の中が好況のうちは業績がグングン伸びますが、いったん不況になるとスーパーやコンビニ以上に業績が悪化する特性があります。宝飾品や高級ブランドなど、いわば「ぜいたく品」の比率が高いからですね。2000年以降、郊外に大規模なショッピングモールやアウトレットが次々に登場し、専門店チェーンも台頭して百貨店の主力である衣料品の需要を取り込んだことも痛手になりました。百貨店全体の売上高は2015年に6兆1742億円と、ピークだった1991年の6割強まで落ち込んでいます。

外国人客は都市部店に貢献、大規模改装も

 ここ数年はちょっとした追い風が吹いていました。ひとつはアベノミクスによる株高で、いわゆる「資産効果」の恩恵です。持っている株式が値上がりした富裕層が、売却益や含み資産の増加で、絵画や宝飾品、高級時計などを結構、買ってくれました。もうひとつは皆さんもご存知なように、「爆買い」に代表されるインバウンド(外国人観光客)による購入の増加です。特に東京の都心部の店は好調で、2015年度は松屋銀座本店の売上高は18.1%増、三越銀座店も14.6%増でした。ただ、インバウンドの恩恵にあずかりにくい地方店は苦戦が続き、その後の株価の低迷で高額品の売れ行きにも陰が差しています。

 国内の消費者も「コト消費」を重視する風潮が高まっており、百貨店には逆風です。高島屋が有名スタイリストを商品相談や買い物に同行させるサービスを始めるといった新たな対応の動きもありますが、全般的に取り組みは遅れています。

電鉄系百貨店も一定の存在感を持つ(東京都渋谷区の東急百貨店渋谷本店)

 その中で、大型店が相次ぎ開業するのは、明るいニュースです。2014年に大阪の近鉄百貨店が日本最大の売り場面積を誇る阿倍野本店を開業したのに続き、来年4月には東京・銀座の松坂屋銀座店がまったく新しい複合店舗として生まれ変わります。このほか、阪神梅田本店、三越日本橋本店、高島屋日本橋店なども大規模改装や建て増しを予定しています。夢を売る商売という一面がありますから、新しい店になることは百貨店の魅力のアップにつながるでしょう。

販売職は必ず経験、バイヤーも人気

 それでは百貨店ではどんな仕事があるのか、みてみましょう。代表的なのが販売職ですね。文字通り、売り場で接客、商品の販売、在庫管理や伝票処理などを行います。婦人服、紳士服、雑貨、家庭用品などのジャンルに分かれ、中には紳士服一筋〇年というベテラン販売員もいます。「入社後、最低3年は販売を経験してもらいます」(高島屋)というように、この業界に入ったら必ず経験する仕事です。

 仕入れ業務を担当するバイヤーも大変重要な仕事で、人気もあります。店舗で扱う商品の選定や仕入れ、新規ルートの開拓などを行います。流行や顧客動向の変化などを考慮し、いかに売れる商品を仕入れるかがバイヤーの腕の見せ所です。

雑貨売り場で買い物を楽しむ中国人観光客(東京都中央区)

 営業職もあります。外商と呼ばれる職種は多額の購入をしてくれる個人や企業に対して、店舗外で直接顧客の家やオフィスを訪問して商品を販売する仕事です。企業や学校の制服、備品などの大口取引を行う法人営業の担当もいます。

 このほか、店舗への集客を目的に物産展などのイベントを開催する販売促進や、売り場全体の構成を考えたり、ディスプレーを企画したりする店舗企画といった販売支援の職種もあります。三越伊勢丹ホールディングスのように、海外に大小約50店舗も展開する企業では、海外赴任の可能性もあります。

 気になる給与水準はどうでしょう。有価証券報告書によると、三越伊勢丹ホールディングスは2015年度、平均年齢46.1歳で年収833万円、J・フロントリテイリングもほぼ同水準です。ただし、これは店舗勤務の社員は含んでいません。高島屋の場合、全従業員約5000人(平均年齢44歳)の平均年収は650万円前後と見込まれます。流通業界全体では平均より少し上というところでしょうか。

 女性の多い職場ですので、出産や育児に対する環境整備は他の業界より進んでいるのが特徴です。ワークライフバランスへの取り組みを進めている高島屋は、育児休業制度や育児勤務制度が充実していることで知られます。

 ご存知の方が少なくないかもしれませんが、三越伊勢丹は慶応大学出身者が目立つようです。特にかつての三越は歴代社長が11代続いて慶応出身だったとか。ただ、最近の採用では特に慶応に偏っている傾向は感じられないようです。
(若林宏)

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