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[ career-働き方 ]

机を斜めに、社員を刺激
ヤフーの働き方改革

机を斜めに、社員を刺激ヤフーの働き方改革

 インターネットサービス大手のヤフーが「働き方改革」のアクセルを強く踏み込んでいる。川辺健太郎副社長が語る。

 「この10年で世の中は大きく変わった。パソコンのインターネットから、スマートフォン(スマホ)のインターネット、IoTのインターネットになった。しかし、パソコンの前で働くというリズムは変わっていない。スマホ時代に合った働き方のリズムに変えないといけない」

 10月1日付の本社移転を機に、オフィスのつくりを一新した。特徴的なのは、社員の机をジグザグに並べたフリーアドレス制。「わざと歩きづらくして、社員間の摩擦、コミュニケーションを生む。いろんなアイデアを持った社員が出会うことでイノベーションを起こしたい」と川辺氏。固定的な席に座っていては、仕事も固定的になる。そんな考え方だ。

週休3日制も検討中

 新本社には「ロッジ」と名付けたコワーキングスペースも設けた。社員だけでなく、外部の人も利用できる。会社の壁を取り払ってアイデアを吸収し、社員が刺激を受けるしくみといえる。

ヤフーの新本社は社員同士の交流を促すため机をジグザグに配置(東京・千代田)

 さらにヤフーは、通勤時間が2時間以上の人を対象に「新幹線通勤」を認め、「週休3日制」も前向きに検討中だ。育児・介護と仕事の両立など、社員の都合に合わせやすい環境を整える。10月3日には、新卒一括採用をやめ、30歳以下なら応募できる制度に改め、通年採用すると発表した。

 すぐれた人材をいかに集め、どう能力を引き出すか――。企業にとって古くて新しい課題だが、重みは一段と増している。柔らかな発想や身軽な行動など、人間の知的パワーが競争力に直結する傾向が強まるからだ。

 37万人を超す社員を抱える世界的なコンサルティング会社のアクセンチュア。「これからの中核は(デジタル技術を使いこなす)ミレニアル世代。未来を考える人材を引き付けるため、人事制度もイノベーティブでなければならない」。最高人事責任者のエリン・シュック氏は訴える。肝は、社員一人ひとりの資質に合わせるパーソナル化や、透明性の確保だ。

 例えば、適性診断で客観的に社員の強みを見つけ、それを発揮できるチーム編成をして業務にあたる活動を始めた。社員がやる気になり、生産性や収益性が上がる成果が出ているという。

 仕事ぶりの評価も年に1回まとめてといった伝統的な手法ではなく、上司や同僚が「今日のプレゼンはよかった」「ここを改善すればもっといい」などと日々フィードバックする仕組みを導入した。フェイスブックで「いいね!」する感覚だ。

好きな時間に働く出前配達員

社外の人にも開放するコワーキングスペースを設け、ヤフーは広くアイデアを吸収(東京・千代田)

 一方で、企業というワクの外で「職場」が増殖している。

 配車アプリで急成長する米ウーバーテクノロジーズは9月末、レストランの料理をスマホで注文すれば配達してもらえるサービス「ウーバーイーツ」を東京で始めた。自転車やバイクで料理を運ぶのは、身分証明書の確認や審査を経て登録するパートナー配達員。「決まったシフトはなく、好きなときに好きなだけ働ける」。ウーバー日本法人の高橋正巳社長は、シェアリングエコノミーが生む新たな働き方だと説く。

 ウーバーは配車サービスで働くドライバーの権利への配慮が足りないなどと批判も浴びるが、これまでにない就業機会を生み出しているのは確かだ。ウーバーイーツも、すでに東京以外の7カ国33都市に広がっている。

 ネット経由で働くクラウドソーシングでも、単純作業だけでなく、より高度な仕事がなされるようになってきた。「いまや腕に覚えのある人ほど、フリーランスで働きたがる」との声も聞く。

 日本では、労働人口の減少という「量」の問題に議論が偏りがちだが、働く人の意識という「質」の変化にも、企業はよくよく注意を払う必要がある。必ずしも皆が正社員の立場を望むわけではないし、副業が社員の自己研さんにつながる場合もある。「働き方改革」をとらえる視点は多様でなければならない。

 あなたの会社(職場)、働く人をその気にさせる工夫はありますか?
(編集委員 村山恵一)[日経電子版2016年10月7日付]

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