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国際機関で世界に挑む女性
働き方やキャリアの軌跡は

国際機関で世界に挑む女性働き方やキャリアの軌跡は

 様々な国の人が集まり世界の公益に尽くす国際機関の仕事に憧れる女性は少なくない。国連職員の4割は女性で、日本人職員のうち6割を占めるという。10月には首都圏で国連機関の合同説明会が開かれた。幹部として活躍する日本人女性に働き方やキャリアの軌跡を聞いた。

UNウィメン日本事務所長、福嶌香代子さん

 2015年4月、ジェンダーの平等を目指す国連機関、UNウィメンの日本事務所が都内に開設され、初代所長になった。もともとは外務省職員。国連機関幹部になるとは想像もしていなかったが、人事から打診され、即答した。国際機関での仕事に興味があった。

 本省時代、横浜に本部がある国際熱帯木材機関(ITTO)の仕事を担当したことが下地となった。理事会では委員会の議長として参加国の利害を調整、議題をまとめた。「多国間の交渉は面白い」。次女の育休明けで、家庭でも忙しい時期だったが、やりがいを感じた。その後、国連大学に3年間出向した時の決断にもこの経験があった。

激務でも多国間交渉は面白い

ふくしま・かよこ 1981年外務省入省。広報文化外交戦略課企画官などを経て2015年から出向で現職。上智大卒、米フレッチャー法律外交学院で法律・外交修士。57歳

 UNウィメンでは、紛争地の女性保護などの事業で本部と日本政府との連絡などを担当する一方、日本の男女平等推進にも力を入れる。企業トップらを説いて、女性の活躍推進プランに署名をもらったり啓発イベントを開いたり。

 在日スウェーデン大使館などと共同で男性向けのスウェーデン料理教室を開いた際は、20人の定員を超える応募が集まって抽選になった。高校生のグループが自主的に勉強に来ることもある。社会が変わりつつある手応えを感じる。

 夫も外務省職員。別々に海外赴任することも多く、子育てには親やベビーシッターを頼った。娘2人は自身に付いてくることが多かったが、長女が中学生、次女が小学生の頃に1年間、夫が駐在するメキシコに送ったことがある。「父親との絆を深めることができたようで、家族にとって良い経験になった」

国連広報センター所長 根本かおるさん

 「遅いスタートだった」。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)で働き始めたのは33歳。日本政府が若手人材を2年間、派遣するジュニア・プロフェッショナル・オフィサー(JPO)として採用される上限ギリギリ(当時)の年齢だった。JPO終了後に正規職員になれる保証はなかったが「どうにかなる」と腹をくくっていた。

ねもと・かおる 1986年テレビ朝日入社。96年からUNHCRで勤務し、フリー記者を経て2013年から現職。東京大卒、米コロンビア大で国際関係論修士。53歳

 常に自分で道を切り開いてきた。アナウンサーとしてテレビ局に入社した後、希望して報道記者に転向。日米自動車協議などを取材するうち、米国など海外の事情を学びたいと思った。当時、社内に留学制度はなかったが、手を挙げて休職させてもらい、米ニューヨークのコロンビア大で国際関係論を学んだ。

記者から転身 踏み出す勇気を

 国連本部が近く、ゼミに国連職員が参加したり学生が国連代表部に勉強に行ったりする機会に恵まれた。ちょうどUNHCRで緒方貞子さんが活躍していた時代。留学生活の最後にネパールのUNHCR事務所でインターンを体験したのが「転機になった」。取材する記者から内部のアクターに転向する決意を固めた。

 15年間勤めたUNHCRでは難民保護のほか、前職を生かした広報などを担当。2013年に東京にある国連広報センター所長に就任した。日本に国連の役割を伝える活動に努める。

 気がかりは「日本人職員が圧倒的に少ない」こと。国連事務局なら日本という国の規模では180~250人が「望ましい」とされるが実際は約80人。「日本人の他人をおもんばかる性質や調整力、計画性は世界でも重宝される能力」。踏み出せば活躍の場所はあると後進の奮起に期待する。

国際刑事裁判所次長 尾崎久仁子さん

おざき・くにこ 1979年外務省入省。人権難民課長などを務め2010年からICC裁判官、15年に同第二次長。東京大卒、英オックスフォード大で国際関係論修士。60歳

 「自らが弱者になりやすい分、共感する能力が高い人が多いかもしれない」。女性が国際機関で働く上での"強み"をこう分析する。オランダ・ハーグの国際刑事裁判所(ICC)裁判官の中から選ばれる次長に日本人で初めて就いた。

 ICCではジェノサイド(虐殺)や人道に対する罪などを裁く。これまで中央アフリカの内戦中に起きた市民への虐殺・レイプ事件やケニア大統領選の際に起きた暴動事件などを扱った。判決は厳格な法と証拠に基づいて下すが、被害者へのまなざしが常にある。

 実はICCでは現在、所長以下のトップ3ポストを全て女性が占めるが「特別なことではない」と話す。国際機関では出身地域などとともにジェンダーのバランスが重視されており、18人の裁判官のうち半数以上を女性が占めることもあったという。

弱者への共感力、女性の強み

 とはいえ職員の女性比率はまだ4割。男女の働き方で大きな違いは感じないが「トップが女性ということで、職員が気を使って女性活用に積極的に取り組んでくれる面はあるかもしれない」と笑う。

 外務省出身。男女雇用均等法以前の入省で「民間の就職先がほとんどなかった」ことも選んだ理由の一つという。学生時代から国際法に興味があり、国連の日本政府代表部や人権難民課長、法務省刑事局への出向など「たまたま実務経験を積む機会に恵まれた」。

 国際機関は分野も職種も幅広い。英語やフランス語などの語学力も必要だが「視野を広く持ちつつ、自身の関心に従って専門分野を深めることが一番の近道ではないか」とこれから世界の舞台を目指す女性らにエールを送る。
(木寺もも子)〔日本経済新聞朝刊2016年10月8日付、日経電子版から転載]

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