他人が気にならない 「強い自分」を作る方法
生涯キャリアの選択肢(16)
前回、感情に左右されない強い自分を作ることを推奨した。今回はその作り方を考える。連載の13回では、ライバルを持つことが自分の成長を加速するといった。スポーツや学業成績でもそれは同様だ。しかし、行き過ぎはマイナスになる。過度のライバル心を持ち、相手に敵意を抱いては本末転倒だ。あくまで自分の向上が主で、ライバルはそれを促進するサブ要素である。そこをしっかり認知しておけば自分が左右されず、常に心静かでいられる。
自分を信じるには?
出世などの野心を持つことは悪いわけではない。それが成長を促進することは事実だ。しかし、会社の出世競争に自分の人生をかけるのは危険だ。上司=他人が決めるのが出世で、自分では決められない。それに人生をかけてどうするのか。本当に野心があり、立身出世をしたいと思うなら、サラリーマンを辞めるべきである。自ら起業し会社を起こすことである。そうすれば、トップとして、自分で自分の運命を決められ、その結果も責任も自分に返ってくる。
当たり前だが、仕事の目的は出世ではなく、自己実現と社会への貢献だ。自分がどのくらいやりがいを感じながら成果を上げたか、その中で自分が成長できたか、そして社会になんらかの貢献ができたと感じることが、人の生きがいになる。そうしていれば、時に出世はあとからついてくる。それはウェルカムだ。でも、副産物に過ぎない。
大切なのは自分を強くして不動にし、その自分を信じられることだ。連載で何度も言ってきたとおり、それには自分がプロになる必要がある。ほかの人と比べられない何かの強みを作ることだ。自分を信じられれば、少々のことではびくともしなくなる。いつも動じないでいられる。最も健全な感情コントロール法である。
自分の悩みを「ひとごと」にする
あなたが冷ややかに自分の悩みを見られるようになれば、もはや悩みではない。例えば仲のいい友人からに、その人にとっては深刻な仕事や恋愛の悩み相談をされたとしよう。一緒に一生懸命考えるけれど、同じレベルではあなたは悩まないだろう。失恋の痛みは他人には体感できない。なぜならば、それは「ひとごと」だからだ。
つまり本人にとって、自分の悩みでも相対視してとらえられ、「ひとごと」になれば悩まなくなる。他人を気にしないことの次は、自分を気にしないことだ。自分をもう一人の自分が上から見ている状態、自分を客観的にみる(「メタ認知」という)だ。このスタイルを身に着けるように努力しよう。何かやる前に客観視する、やったあとに客観視する。そうしていることを意識しながら実施するやる。それでメタ認知力はアップしていく。
大学でも社内でも、そこは人間集団の渦である。その中で自分のポジショニングをして、人間関係をマネージしていかなければならない。自分のプロ度を高め、人と比べなくなること。自分を別の視点から見られること。それをめざしていきたい。最初はちょっとむずかしいかもしれないが、その方向にちょっとずつ進んでいくと、いつか何が起きてもなんでも「まあいいか」になれる。私がそうできただったから、確信をもっていえる。
一橋大学社会学部卒業後、東京ガス入社。ロンドン大学大学院留学、ハーバード大学大学院修士課程修了。中東経済研究所研究員。アーバンクラブ設立、取締役。法政大学大学院博士後期課程修了、経営学博士。東京女学館大学国際教養学部教授(キャリア開発委員長)、一橋大学特任教授などを経て2015年より三菱商事社外取締役。18年から立命館大学共通教育推進機構教授。人材育成、企業経営、キャリアデザインを中心に研究し、実践的人材開発の理論を構築。研修・講演は通算1000回を超える。ビジネスリーダーの生涯キャリア研究がライフテーマ。著書は計61冊。就活関係では「受かる!西山式内定バイブル」(小学館)がある。
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