若者限定の国際フォーラムで日本人学生が感じたこと
私たちのリアル(17)
「One Young World(OYW)」をご存知でしょうか? 本部がロンドンにある非営利団体で2010年から年に1度"若者限定"の産官学国際フォーラムを開催しています。その規模はオリンピックを除くと世界一のユースイベントで、今年は第7回目、9月28日~10月1日に「One Young World Ottawa Summit」がカナダの首都オタワで開かれました。ワン・ヤング・ワールド日本委員会(東京・千代田)によると、各国を代表する18歳-30歳の次世代リーダーたちが190カ国以上から集まったということです。
世界中から集まるのは、学生よりも企業人や社会活動、文化活動、慈善活動等に関わっている若者が多く、他にはこれまで作家、女優、ファッションモデル、スポーツ選手や料理人など職業は多岐に及びます。人種、宗教、国籍、職業を超えて、世界が直面する地球規模の課題に向けて、自分たちが社会や地域にどのような貢献ができるかを様々な角度から議論するそうです。ゲストスピーカーやアドバイザーとして参加する評議員も、毎年、政財界、文化、スポーツ、メディア界、王室等、各界を代表する世界的指導者ばかり。世界中のメディアも集まり、年々OYWネットワークは拡大しています。
日本からの参加者は20人
日本からの今年の参加者は20人(大学生15人)で、累計約120人になります。「世界をどう変えていきたいか」「日本の将来に向けてどのようなPositive Changeを考え行動するか」について、論文(日本語か英語)と英語のプレゼンテーション、さらに面接で選抜された方々です。
今年初めて参加した学生に次の4つの質問をし、回答をもらいましたので以下に紹介します。
(1)OYW参加のきっかけや理由 (2)実際に参加した感想 (3)OYWの経験を生かして今後の夢 (4)大学生に向けて一言
清水亜美さん(群馬県立女子大学国際コミュニケーション学部2年)
(1)きっかけは、同じ大学の先輩が昨年のOYWバンコクに参加していたから。その先輩は非常にアクティブで何ごとにも前向きに全力で取り組んでおり、自分のお手本となる憧れです。学内で行われた報告会に参加し、興味を持ちました。私自身も学内で報告会を行う予定です。
(2)OYW開催期間中はただひたすらに楽しかったです。どの国の参加者も私のつたない英語に耳をかたむけてくれる親切な方たちばかり。OYWのスケジュールを見るとランチやブレイクなどセッションの間の時間は"net working lunch","net working break"と表記されており、人と人のつながりが重視されていることを感じました。
(3)期間中に名刺交換をしていて気付いたことは、会社からノミネートされた企業派遣の参加者が多いこと。ワールドワイドな企業研修のようでした。OYWをもっと日本に浸透させ、様々な企業から理解を得て支援していただくことができれば、より多くの若者がこの素晴らしい体験をできるのではないかと思います。私のような地方に住む学生は、都内の学生のようなキラキラした大学生活は送れないと半ばあきらめモードでしたが、OYW参加を通して自分から動けばいくらでも道は開けてチャンスを掴めるのだと実感しています。今後は報告会などを通してOYWをたくさんの人に知ってもらい、私の課題である地方都市、群馬の国際都市化というアクティブチェンジを目指して引き続き何かしらの形で活動していく予定です。
(4)どんなに小さなことでもいいから、アクティブチェンジを目指して行動を起こしている人。怖気づかずに何事もチャレンジできる人。そして、世界各国の若いリーダーとつながりたい人。そんな人たちにとってOYWは最高の場所です。OYWへの参加を強くオススメします! 私は何か特に大きいことを成し遂げてきたわけではなく、流暢な英語が話せるわけでもありません。ただ、興味を持ったことにはまずチャレンジ、そして全力で取り組んできたつもりです。
日本代表団選考への応募も、私にとって1つの挑戦でした。チャンスの神様に後ろ髪はないので、過ぎ去ったら後ろからチャンスを掴むことはできません。チャンスの神様を見つけたら、一目散に駆け寄って前髪をつかもう! 何が言いたいのかと言うと、もっともっと多くの人にOYWを知ってもらい、この素晴らしい体験をしてもらいたい、自分自身もまた参加したい、と強く思っていること! それなら自分から動かなくては! 待っていてもやってくるのは最高のチャンスではなく課題とテストだけです!!
ランパリ カールティック(RK)さん(東京工業大学1年)
(1)「いったい この世界はどこ向かって発展しているのか」という疑問が生じ、世界の様々な問題を解決するために、ネットワークが必要だと感じたことです。
(2)いろいろな方の講演を聴いて「この人たちマジですごいですね~」と感じました。自分の人生を世界の改善のために捧げることは、みんなの責任であると思います。特に環境問題はあらゆる国に影響を与えています。今すぐ、対策を立てないと世界が絶滅しかねないと思います。
(3)これからは、技術とマーケティングの専門家として、今より良い世界を作るために頑張りたいと思います。企業からのサポートが欠かせないものですので、できるだけ多くの企業と協力しつつ、改善していくためのアイデアを提案したいです。
(4)現代社会の若者である大学生が何かを実現しようと考えたら、「無理」という言葉は存在しません。その上、この世界は私たちのものです。どんなに小さな貢献でも大丈夫です。みんなが貢献を重ねていけば、結果は非常に大きくなります。
廣田元さん(名古屋外国語大学国際教養学科)
(1)大学1年生の時から大学による派遣について知っていました。当初は世界中の指導者や若者が集まるイベントという印象でした。大学生としての生活・研究を通して、より広い視野で物事を見たいと思い、今回参加を決意しました。
(2)夢や目標を持つ若者との交流を通して、自分の目標を達成するために何ができるのかを現実的に考えることができました。また、世界トップレベルの指導者(特に、コフィ・アナン前国連事務総長)のスピーチで、今後の世界を牽引していく上でどのような資質が必要であるかを学ぶ機会に恵まれたことも印象に残りました。自分の研究テーマが難民であることから、リオオリンピック出場の難民選手団代表選手との交流も貴重な経験でした。
(3)現在、中東問題を日本でより身近に感じてもらう企画を実施中です。大学でのイラク人医師の講演会企画や、国連UNHCR協会でのファンドレイジング活動などがその例です。先日、国連UNHCR協会でUNHCR日本事務所代表の方とお話しさせていただくこともでき、非常に充実しています。今後の研究、そしてUNHCRで働くという夢に着実に近づいていると感じています。
(4)何事にも挑戦できる人や何か一つでも熱心になれることがある人であれば、ぜひ参加していただきたいです。世界中から一度に多くの若者が集まる機会はなかなかないので、貴重な経験になると思います。
ポジティブ・チェンジを起こしてくれる若者に期待
生涯の思い出と、多くのOYW友達との「同窓生」ネットワークによる国際人脈は、その後の人生をグローバルへと広げることに直結します。マインドセットを国際人に切り替えた若い人々が増えることは、これからの日本にとってますます重要になるのではないでしょうか。参加費を含めた全ての費用は支援企業による寄附金及び助成金でまかなわれていますが、スポンサーは欧米のグローバル企業ばかりで日本企業はまだ少ないようです。スポンサーは企業ブランディングや有能な人材確保など今後のメリットは大きいでしょう。日本企業にはもっともっと積極的な支援が期待されます。
日本委員会の大久保委員長は、「参加者は皆、4日間を通じて、他では得られることのない世界人脈とのネットワーキング、グローバルレベルでの問題意識が芽生え、目を輝かせ人間力を高めて帰ってくる。今後も単なる学力エリート集団でなく、世界と交流しながら自らのビジョンや可能性を追求し、日本や世界でポジティブ・チェンジを起こしてくれる若者に多く集まってほしい」と話します。
次回は来年2017年10月4-7日、南米コロンビアの首都ボゴタで第8回サミットが開かれます。グローバル人材育成の絶好の場として、チャレンジ精神旺盛にあなたもOYWにしてみてはいかがですか?!
ブームプランニング社長。山口県出身。1986年に企画集団「スキャットクラブ・オブ・ジャパン」を発足、女子高生ビジネスを立ち上げる。88年、株式会社ブームプランニングを設立し、女子高生を中心としたマーケティングやセールスプロモーションを展開。現在、未就学児から小・中・高生、大学生、OL、主婦、シニア層まで全国1万人以上ネットワークを広げ、様々な業種で企業の商品開発にかかわる。活動に関係した女子高生は10万人。著書に『「ウチら」と「オソロ」の世代 東京・女子高生の素顔と行動』など。
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