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[ liberal arts-大学生の常識 ]

キューバってどんな国?

キューバってどんな国?

 9月に安倍首相が訪問したキューバ。社会主義国で長らく米国と国交を断絶していたキューバが、最近なぜ注目されているのでしょうか。イチ子お姉さんとからすけが話しています。

 イチ子お姉さん キューバっていう国、知ってる? 日本の安倍首相が9月下旬に訪れたの。ラウル・カストロ議長と会って、日本からの投資拡大を提案したわ。

 からすけ カリブ海にある小さな国だよね。日本からずっと遠くにあるのに、どうしてこの時期にわざわざ訪問したんだろう。

54年ぶり アメリカと仲直り

 イチ子 日本の現職の首相がキューバを訪問するのは今回が初めてだったのよ。安倍首相は「キューバは魅(み)力的な投資先として可能性を持つ。官民を挙げて支援(えん)したい」と話したの。具体的には日本が12億円分の医療(りょう)機材を提供したり、日本への返済が遅(おく)れているキューバの債(さい)務のうち1200億円を返さなくていいようにしたりという提案をしたの。キューバにとっては大きな支援になるわ。

 からすけ 米国のオバマ大統領もキューバに行ったと聞いたけど。

 イチ子 よく知ってるね。安倍首相が訪問したのは、米国とキューバの関係が改善したから。2014年にオバマ大統領が「国交が断絶していたキューバとの関係改善に乗り出す」と発表した時は、世界が驚(おどろ)いたわ。そして、昨年には本当に国交を回復したの。実に54年ぶりのことよ。

 からすけ ということは、それまではあまり仲がよくなかったんだ。

 イチ子 そうね。キューバは20世紀初めに米国の支援を受けてスペインから独立したんだけど、その後は米国の支配が強まって半植民地のようになったの。それに反発する人たちが、第2次世界大戦後の59年にクーデターを起こしたの。そのときに政権を取ったのが、現国家評議会議長のラウル・カストロさんのお兄さん、フィデル・カストロさんなのよ。

 からすけ そんなことがあったんだ。お父さんが生まれる前の話だね。

 イチ子 当時は今のロシアと周辺国を合わせた社会主義の大国、ソ連があったの。米国と対立して冷戦時代と言われたわ。反米のキューバはソ連に近づいて、社会主義体制に転換(かん)したの。62年にはソ連のミサイルのキューバへの搬(はん)入を巡って米ソが戦争かというところまできたの。これがキューバ危機(キーワード)よ。米国とキューバは約150キロ、東京から直線距離(きょり)で静岡市ほどの距離しか離(はな)れていないの。だから「米国のわき腹に突き付けられたジャックナイフ」と呼ぶ人もいたわ。

 からすけ 危ないところだったね。

<キーワード>
キューバ危機 1962年、ソ連のミサイルのキューバへの搬入を巡って米ソが対立し、核戦争寸前の事態になった。
葉巻 たばこの葉を筒状に巻いた葉巻は、コロンブスがキューバから欧州に持ち帰ったとされる。

 イチ子 その後も両国は対立していたけど、1991年にソ連が崩壊(ほうかい)したのが転機になったのね。頼っていたソ連からの支援物資が途(と)絶えて経済が低迷し、国民の生活が苦しくなったの。政権は国民の不安を抑(おさ)えようと、市場経済を取り入れた改革へと路線を切り替(か)えたの。米国との国交正常化も、外国からの投資を呼び込んで改革を進めたいという思惑(わく)があるのよ。

 からすけ じゃあ交流が始まってるんだね。

古い町並み魅力 観光盛ん

 イチ子 米国の経済制裁が完全になくなったわけではないけど、国外からの投資は徐々に増えているわ。特に観光分野で活発よ。米国のホテルが相次いで進出し、観光客も急増しているの。キューバは西側との交流を絶ってきたので、昔の面影(かげ)の町並みが残っていたり、1950年代の米国の自動車がいまだに走っていたり、懐(なつ)かしい光景を見られるのが魅力よ。

 からすけ 日本とは?

 イチ子 これから活発になるだろうと見て大手商社や国際協力機構、日本貿易振(しん)興機構などが現地に拠(きょ)点を開こうと準備しているわ。実際に日本からの視察団が相次いで訪問しているし、観光客も増えているので、人やモノの交流が活発になりそうね。

 からすけ プロ野球でキューバから来た選手が出ていたよ。

 イチ子 キューバは「野球王国」ね。米国の大リーグはもちろんだけど、日本では千葉ロッテのデスパイネ選手らが活躍しているよね。もともとキューバは幼年期からスポーツ選手を育成する仕組みを導入していたので、スポーツが強いの。今年のリオオリンピックではボクシングやレスリングで金メダルを取ったわ。また、葉巻(キーワード)発祥(しょう)の地と言われていて、今でも世界最大の葉巻生産国なのよ。

かつて米国籍は入国禁止

東京都立桜修館中等教育学校の荒川美奈子先生の話 コロンブスに見いだされ、黄金の国ジパングと勘違(かんちが)いされたキューバ。この国への旅の目的は何でしょう。カリブ海の砂浜、乗り続けられマニア垂ぜんのレトロカー、小説家ヘミングウェイゆかりのカクテル、特産の葉巻、音楽。魅(み)力あふれるキューバと米国の距離(きょり)は150キロ。しかし米国籍(せき)の人はキューバへの入国は禁止され、違(い)反すると最高何十万ドルもの罰金(ばっきん)などが科せられていました。
 それでもキューバに行きたい米国人は、こんな方法を使いました。カナダやメキシコなど周辺国に行きツーリストカードと呼ばれる紙を買い、キューバ入国時にホチキスで留めたカードに入国スタンプを押してもらい、出国したらカードを捨てる。パスポートに証拠(こ)は残りません。今後、多くの観光客が訪れるでしょう。その時にこの国はどう変わるのでしょうか。

[日経プラスワン2016年10月8日付、日経電子版から転載]

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