外資系採用のギモン(1)アウディジャパン「英語力必須、ただしTOEICは不要」

例年多くの企業に先行して採用が始まる外資系企業。グローバル企業で働きたい、英語力を生かしたい、いちはやく選考を受けて自分の力を試してみたい...など、外資系企業に関心のある人は多いのではないでしょうか。この連載では、日本企業に比べて情報の少ない外資系企業の採用について、各社の人事部に聞いていきます。
第1回は、ドイツの自動車メーカーであるアウディの日本法人、アウディジャパン・グループ人事部部長のマーティン・フォルクルさんにお話しいただきました。
ドイツ本社での研修も
――アウディジャパンの新卒採用について教えてください。
「アウディジャパンとしての日本での新卒採用は2年目で、まだ3人しか採用実績がありません。アウディはアジア・太平洋地域で共通の採用基準を設定しており、海外の大学卒業時期に合わせて10月入社となります。新卒採用では、自動車業界についての知識、インターンなどの就業経験、留学や国際交流などの国際経験、日本語とビジネスレベルの英語などが求められます」
――インターンシップも募集していますね。
「インターンの期間は3カ月から6カ月、最長で1年です。マーケティングや販売、広報など、さまざまな職種があります。本採用ほどの専門性は求めませんが、英語でコミュニケーションできること、文書やプレゼンをまとめられることなどが必要条件です」
――採用はどのように行われますか。
「インターンも新卒採用も、ウェブサイトからエントリーして、書類選考を経て英語・日本語の数回の面接で決定します。当社でインターンとして働いてから本採用に応募する場合も多いのですが、選考はかなり狭き門で、採用に至らないケースもあります」
――採用後の研修などはありますか。
「新卒採用は正式には『トレーニープログラム』と呼ばれ、採用後は1年半に及ぶ研修があります。1人ずつに、マネジャークラスの社員がメンターとして指導にあたります。まず最初の6カ月間、アウディジャパンの2つの部署で研修します。アウディジャパン販売で働くこともあります。それから6カ月間は、ドイツの本社での研修に参加します。最後の6カ月間は国内でさらに異なる部署で研修するか、アジア・太平洋地域のアウディ各社で研修することもできます」
TOEICは不要、英語面接で判断
――アウディジャパンで採用された場合、海外で働くこともあるのでしょうか。
「基本的には日本国内での勤務ですが、マレーシアや韓国などアジア・太平洋地域のアウディ、あるいはドイツ本社での勤務もあります。海外とのやりとりが多く、アウディジャパンも社内での共通語は英語なので、国内勤務でも英語は必須です」
――どの程度の英語力が求められますか? 目安となるTOEICの点数などはありますか。
「TOEICは読み書きが中心で、会話の力は計れないので不要です。英語の面接で、仕事に必要なコミュニケーションができるかどうかを見ます」
――やはり留学経験のある学生が中心ですか。
「そうですね。すぐ仕事ができる英語力が必要ですので、留学生が多くなっています。英語での授業を行う一部の大学の出身者を除くと、海外在住などの経験のある人がほとんどです」
――どんな人材に来てほしいですか。
「日本という重要な市場で、アウディはまだ成長の余地があると感じています。その成長をともに実現してくれる、オープンマインドで実行力のある人材を求めています。日本の学生は勤勉で真面目ですが、海外の学生に比べてまだ不十分だと感じる点があります。それは企画や計画を提案し、プレゼンして議論しながらまとめていく能力です」
「アウディジャパンは立命館アジア太平洋大学(大分県別府市)で『グローバル ビジネス ケース コンペティション』というイベントを支援しています。これは企業の経営課題に対する解決案を24時間以内にまとめて英語で発表するコンテストです。残念ながら、参加した12大学のうち、日本の大学は2校だけでした。日本の学生の潜在能力は高いはずなので、ビジネスコンテストなどを通じて、企画立案から議論、プレゼンまでを学ぶ経験を重ねていけば、より実際のビジネスに必要な能力が身につけられるのではないかと思います」
◇ ◇
長期インターンはやりがいあり
8月からフルタイムのインターンとして広報部で働いている、青山学院大学法学部4年生の鈴木かんなさんにもお話を聞きました。
――なぜアウディジャパンでインターンとして働こうと思ったのですか。
「ドイツに1年留学していたので、ドイツ系の企業への就職を考えていました。特に車好きだったわけではないのですが、インターンに参加して初めてアウディの車を運転して、自分の手足のようになめらかに動く感覚に魅せられました」
「試乗会の仕事をしたとき、会場のお客さんが『アウディは高いけど、値段以上の価値がある』と話してくださいました。これほどのファンに支えられているアウディのブランド力を実感し、この世界的なブランドで働きたいと思うようになりました」
――選考はどのように行われましたか。
「私のときはエントリーしてから、人事部長との英語面接と、広報部長との日本語面接の2回の面接がありました」
――インターン期間はどのくらいですか。
「インターンは3カ月から6カ月、最長で1年です。私は来年8月まで1年間働く予定です」
――インターンとしての仕事はいかがですか。
「長期のインターンで、マネジャークラスの社員がメンターとしてついてくれますが、社員同様に案件を任されるので、責任とやりがいを感じています。外資系企業でのインターン経験は、就活でも仕事でも役立つと思います」
◇ ◇
日本人新卒を多数採用している外資系企業とは異なり、アウディジャパンは新卒採用を始めたばかりで、募集は若干名。採用基準はアジア・太平洋地域共通で、すぐ外国人スタッフや海外との仕事がこなせる英語力が前提です。マーケティングや会計といった業務に直結した専門能力も必要とされるなど、即戦力を求める外資系ならではの採用スタイルです。
日本人の採用数が少ない外資系企業は、大学のキャリアセンターや就活サイトなどではあまり情報が得られない場合があります。関心のある人は、直接企業のウェブサイトなどで採用情報を調べてみるとよいでしょう。
(糸屋和恵)
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