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米大統領選挙の結果を受け、私たちにできること

僕ら流・社会の変え方(21)

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NIKKEI STYLE

先日の米大統領選挙では、マスメディアなどによる事前の予想とは異なり、ドナルド・トランプ氏が勝利しました。直前の世論調査でもヒラリー・クリントン氏が優勢だっただけに、多くの学生の皆さんも驚いただろうと思います。日本の有識者と言われる人々も、多くの人がこうした事態を予測できませんでした。そして、これから世界や日本に大きな影響が生じるだろうと危惧しています。

私も複数のアメリカに住む友人から、「クリントン氏の圧勝だろう」と聞いていたため、正直驚きました。しかし、次にあげる異なる2つのデータは、事前にこのような結果になることを的中させていました。

2つの統計データはトランプ氏の勝利を的中!

1つ目は経済指標をもとにした予測モデルです。イエール大学の教授であるレイ・フェアー氏は、GDPの伸び率や物価指数等といった経済指標を用いて大統領選挙の結果を予測、公表していました。GDP成長率の値が大きく物価指数の値が小さいほど与党の得票率は高くなると推測し、前回の選挙から今回までの間の経済状況を比べるものです。彼は2年前に発表した論文で、すでにこの大統領選挙での与党の敗北を予測していましたが、その予測モデルに最新のデータを入れたところ、やはり共和党が勝利するという結果となったそうです。

先日、アメリカに住む事業家にお話を伺うことがあったのですが、彼曰く、「アメリカの70%の世帯がこの十数年間で確実に所得が下がっている。彼らにとって、権力の中枢にいたクリントン氏を積極的に支援する理由は何もない」ということでした。実際、11月10日の日本経済新聞に掲っていたデータを見てみると、1980年から2016年にかけて、実質経済成長率は3.2%から1.5%に鈍化する一方、上位1%の所得層が占める所得の比率は8.2%から17.9%と大幅に上昇し、経済格差は広がっていました。

的中させたもう1つは、インターネットにおけるビックデータ分析です。インドで開発された「MoglA」と呼ばれるAIは、グーグル、フェイスブック、ツイッター、ユーチューブなどのサイトを分析した結果、トランプ氏が勝利すると予測していました。MoglAはインターネット上のたくさんの情報の中から「一般大衆がどれだけネット上で候補者のサイトにアクセスしたりその言動を引用したりしたか」を割り出し、その数値が高い方を評価するプログラムを使っています。ジャーナリストの土方細秩子さんによると、「ヒラリーとトランプのツイッターのフォロワーの数を比べると、ヒラリー約1000万人に対し、トランプは1280万人。過去のツイート数もヒラリー9500弱に対しトランプ3万3800強、と圧倒的にトランプが多い」ということです(『WEDGE REPORT』、2016年11月7日)。

「フィルターバブル」が断絶する社会

ではなぜ有識者や私の友人の多くは、クリントン氏の勝利を疑わなかったのでしょうか。拙著『18歳からの選択』の「SNS」の項にも詳しく書きましたが、SNSなどによってもたらされた「フィルターバブル」が社会には根強くあり、マスメディア・有識者・エスタブリッシュメントと呼ばれる人々(大卒の、教養のあるとされる人々)と一般大衆との間に深い溝が生まれてしまっていたことが影響しているのだと思います。

FacebookのタイムラインやGoogleの検索結果など、私たちが普段接している情報は、私たちの属性やインターネット上でとった行動を考慮して一人ひとりに最適化されたものです。「友達」はたくさんいるのに、タイムラインに出てくる人はいつも同じ、あるいは、スマホで隣の人と同じ検索をしたのに、自分と異なる結果が表示された......ということは誰もが経験したことがあると思います。インターネット上の情報空間は、個人にとって「居心地が良い」ように設計されていて、みんなが不快な気持ちならないようになっているのです。しかしそれはすなわち、「自分と異なる価値観と出会いにいくい」ことでもあります。

格差が急拡大し、少数の富を持つものと多数の持たない者に別れてしまったアメリカにおいて、今回、トランプ氏は中間層と呼ばれる状態から落ちてしまった多くの人たちよりもさらに下層の人たち(移民やマイノリティの人々)をやり玉にあげることによって、多くの人の心を惹きつけたと言われています。「フィルターバブル」によって、大衆と、マスメディア・有識者・エスタブリッシュメントの間に明確なギャップが生じた結果、有識者や私の友人たちの判断を狂わせることにつながっていったのかもしれません。

「分断された」社会から脱するには?

トランプ大統領の登場に際して多くの有識者が危惧するのは、「分断の」政治がより進み、経済がさらに混乱することです。これは、未来を生きる私たちにとっても不安な材料かもしれません。先日、テレビのインタビューで、トランプ氏の当選に対して、ある大学生は「アジアで戦争が起きるのではないか」と不安に思うとのことでした。日経平均株価はトランプ氏の当選後、乱高下を繰り返しました。そんな状況下で、私たちには何ができるのでしょうか。

外交官になって世界平和に貢献する、政治家になって国と国の摩擦を回避する、日本で行われる次の選挙で政治家を慎重に見極めて投票する、世界の平和のために、国際協力のために、貧困の連鎖を断ち切るために日々活動するNPOに参加する、あるいはSNSでそうした活動をしている人に「いいね!」を送る、テクノロジーを使って格差社会を解決する、署名やデモに参加してみる......など。社会をよくする」ための方法はいろいろあります。中でも、一番のオススメは、「SNSから離れてまちに出る」ことです。

まちに出てみると、そこには泥まみれになって遊ぶ小学生から放課後仲間とたむろする中学生、デート中の学生、小さい子どもを連れた母親、休憩中のサラリーマン、仲の良いお年寄りの夫婦など、多種多様な人たちに出会います。そうした人たちと話してみると、今までと違った考えに触れることができます。

学生なら、なるべくいろいろな企業やNPOにインターンしてみればいい。思い切って知らない国に出かけてみるのもいい。久しぶりに祖父母の家に訪れてみるだけで、新しい発見があるでしょう。あるいは、僕のやっている「グリーンバード」というごみ拾い団体に参加すれば、まちに住んでいる人、働いている人、学んでいる人など、いろいろな人に出会えます。それらの経験が、自分の中の生きたデータとして蓄積されていきます。

そうして「フィルターバブル」から抜け出し、多様な価値観に触れることができれば、またそういう人が増えれば、人々はもっと異なる他者に対して理解し、寛容な態度をとれるようになります。そしてその積み重ねが平和につながる......とまでは言い過ぎかもしれませんが、少なくとも多くの友人を持つことができるでしょう。そして、「社会のために」と、何かことを起こそうとする時には、その対象や仲間集め、また動かすべき人たちを見誤らなくなるとは思います。

横尾俊成(よこお・としなり)
 NPO法人グリーンバード代表/NPO法人マチノコト代表/港区議会議員(無所属)/慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科 後期博士課程に在籍中。早稲田大学大学院修了、広告会社の博報堂を経て現職。まちの課題を若者や「社会のために役立ちたい」人の力で解消する仕組みづくりがテーマ。第6回、第10回マニフェスト大賞受賞。月刊『ソトコト』で「まちのプロデューサー論」を連載中。著書に『「社会を変える」のはじめかた』(産学社)、『18歳からの選択 社会に出る前に考えておきたい20のこと』(フィルムアート社)。
HP:http://www.ecotoshi.jp
Twitter: @ecotoshi

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