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[ career-働き方 ]

理系学生のための企業研究(1)時間とエネルギーをかけないで進める方法とは?

増沢隆太 authored by 増沢隆太戦略人事コンサルタント
理系学生のための企業研究(1) 時間とエネルギーをかけないで進める方法とは?

 就活をする上で企業研究は欠かせません。とはいっても何をどう研究すれば良いのか、わからないのが実情です。特に理系学生の場合、日ごろ企業のことを考える機会はほとんどないでしょうから、意図して準備しないと企業研究はできません。

 私は10年以上理系学生にキャリアの指導をしてきました。今回、主に理系の学生を想定して、どうやって企業研究を進めるべきかを解説したいと思います。企業を知る機会が少なく、また日々の勉強や研究に時間を拘束されるため、限られた時間で企業研究をしなければならない理系学生向けの参考になれば幸いです。

企業分析には、「終わり」も「答え」もない

 企業の分析は、アナリストや投資家といったプロの人たちにとっても簡単なものではありません。企業経営に関する情報は、財務数値だけでなく、調査レポートや製品に関するものまで含めれば、きりがないほどさまざまにあふれています。そうした企業分析の結果というものは、偏差値のようなわかりやすい数値や序列で示されるものではありません。企業は生きています。生きた企業の姿を一律な数値で表せる偏差値のような尺度や「答」が無いということをまず理解して下さい。

 企業の価値の一つである株価は、秒単位のリアルタイムで常に変動し続けるように、固定された企業評価というものは存在しません。企業分析によって、一発でその企業の価値や将来性が見抜けるようなことはないと理解するのが、現実的な理系学生のための企業研究がスタートです。

 減価償却前営業利益やら自己資本比率やら、難しそうな財務用語を駆使すれば、いかにも企業を分析しているように見えるかも知れません。財務分析自体は非常に重要なものでまた奥が深く、終わりはありません。逆に付け焼刃で身に着けるのは難しいものです。就活に向けての会社選びをしようという理系学生が、今からこれらの勉強を始めるのは少々現実的とは思えません。本稿の主眼は、新たに企業分析の理論を学んで最高の会社選びをすることではなく、見るべきポイントを絞って現実的な理系学生の会社選びができるようになることです。

企業研究の進め方

 検討すべき企業を探し出す前に、まずは「仕事とは何か」を理解することが第一優先です。仕事の意味を理解することは、自分が長く将来にわたって携わることができるかどうかの判断にもなります。そしてその会社と似たような仕事をする企業群が業界であり、業界研究にもつながっていきます。つまり「仕事理解」「企業分析」「業界研究」は独立したものではなく、すべて連動しているのです。以下のように理解と行動が進むと考えられます。

 会社とは仕事をするところですが、その仕事とは何かを理解する必要があります。電機メーカー、素材産業、製薬会社、ゼネコン・・・・とさまざまな企業がありますが、雰囲気ではなく正確にその会社の仕事が何かを理解する必要があります。

 メーカーであれば原材料を加工して食品を製造し、それを販売することが仕事です。ビジネスモデルと呼びますが、会社が会社として成り立つ商売の仕組みのことです。ご自分が就くであろう仕事で役割が果たせるならその仕事は適性が高く、そうでなければ向いていない仕事と考えられます。メーカーも、ご自分の専門性や興味のある分野でさらに細分化され「業界」を形成します。ITは?商社は?金融とは??と、そこで行われる仕事が何であるかをまず第一に理解するところがスタートです。

そしてなるべく簡素に

 忙しい理系学生のため、アレもコレも詳しく調べつくすのではなく、必要最低限な作業を目指したいと思います。プロのアナリストですら完璧などない世界ですから、専門外の理系学生ができる企業研究にはおのずと限度があります。

 一方、どれだけ研究しても、ビジネスの世界では何が起こるかわかりません。100年以上続いた名門企業が突如消えたり、巨大なグループ企業でも様々な要因で存続ができなくなったりすることもあります。また今は全く知られていない企業がアップルやグーグルのように世界の市場を席巻することもあります。

 完璧な判断や絶対的正解などないのが企業研究です。そうであるなら必要最小限で情報活用を図るのが現実的です。研究したり調査したりするエネルギーに比して、その成果は逓減します。

 理系学生にとっての企業研究は、あまり時間とエネルギーをかけないで、自分が将来を選ぶ上で大切な要素を絞ることです。そして同時にその企業の求める成果や価値観を理解することができれば、企業選び・企業研究の目的はほぼ満たすことができます。それらは実際の志望動機や自己アピールにも利用でき、効率的な就活につながるでしょう。